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原子力・放射線部会

住民目線のリスクコミュニケーションを考える(平成29年度活動)

住民目線のリスクコミュニケーションを考える(4)−第三者として信頼される科学技術の専門家とはどういうものか

 当部会では活動の柱の一つに、「3.11事故の反省・教訓を風化させない働きかけ、安全文化醸成に資する活動」をあげております。
東電福島第一原発事故以降、被災された方々への思いを振り返りつつ、その時々の技術士としての役割を問い直すために、『住民目線のリスクコミュニケーションを考える』と称して、講演聴講や意見交換を含む勉強会を毎年3月に討論型の企画しており、本年で4回目となります。

 これまでの3年間では、第1回目は、専門家が事故直後に県内の被災地で行った支援経験を学び、技術士として自らの行動に反映すべき点を考えました(部会員の福島支援活動の経験から、住民目線のリスクコミュニケーションを考える)。しかし、経験値の共有化はハードルが高く、状況に一定の理解はするものの、そのまま経験者と同様の対応ができるかというと、この方法では困難な状況でした。
 第2回目は、経験者と同様の体験をすることを念頭に、具体的事例で相談を受けた場合のロールプレイ(疑似体験)を主とした内容としました住民目線のリスク・コミュニケーションを考える(2)事例研究。本企画では大きな気づきはあったものの、コミュニケーションに偏っていたため、技術士(専門家)としての役割について、もう一度深堀りが必要ではないかとの問題提起がなされ、今回の企画につなげました。
 第3回目は、5年が経過した福島の抱える課題を、放射線影響に隠れた社会的要因を背景とした福島県内の課題と認識の更新がされない県外の問題の2点に絞り、部会長からの問題提起と、越智 小枝氏の講演を踏まえた上で、技術士が今できる具体的な支援について、参加者を原子力・放射線部門を専門とするグループと、非専門家のグループに分け、小グループで提案をまとめ、その違いを議論しました 住民目線のリスク・コミュニケーションを考える(3)−福島の現状と技術士の具体的役割

 今回は、今回は、第三者として信頼される科学技術の専門家とはどういうものかを議論することを大目標に、鈴木努氏による講演「福島第一原発事故後の放射線をめぐる市民のコミュニケーションと不安の要因 -事例研究と要因分析」を踏まえた上で、和田幹事がパネル討論に向けたkey wordの摘出を行い、最後に幹事三人を加えてのパネルディスカッションという3部構成で行いました。
 第一部では、講演者より「福島第一原発事故後の放射線をめぐる市民のコミュニケーションと不安の要因 -事例研究と要因分析」とのタイトルで、東京・福島のwebアンケート調査を分析し、関心・知識と不安の相関、知識の多さの相関因子(情報収集方法、リスク認知)や、年齢・性別・子供の有無等の属性による違いについて講演頂いた。ここでは放射線に対する不安感や忌避感は、科学者への信頼はどの調査結果へもあまり相関がなく、単に個人の知識やリスク認知のみで説明できるものではないこと、私たちの日常的な感覚は周囲の人々の影響を受けていることが示された。
 第二部では、当部会・和田幹事から第一部の講演内容を踏まえ、文献の引用を加えて第三部(意見交換)の着目点をkey wordとして摘出して情報提供した。
 第三部では、「第三者として信頼される科学技術の専門家とはどういうものか」をテーマとして、鈴木先生と技術士有志3名(中田氏、勝田氏、和田氏)のパネルディスカッションを行いました。パネルでは各パネラーが数枚のスライドを説明した後に、ファシリテータ―(山田(基)氏)の司会により討論が行われた。
 会場の聴講者からの「ピアレビューで良く言われる第三者とはどういうものになるのか?」との質問に対して、各氏は「ピアレビューの場に行った段階で第三者ではなくなる」、「勤務先・専門分野等の自分の属性が分かってしまうと公衆がバイアスを持ってしまう」、「第三者が成立するかどうかはそれを求める側が決めること」、「専門知識を持った段階で何らかの色が付いてしまうので厳密な意味で第三者にはならない」との意見であった。4氏に共通したのは「ピアレビューで良く言われる第三者の専門家は、そもそもあり得ないのではないか」との意見であった。

 本企画は、1年に1回の取り組みではありますが、常に福島の出来事や住民の関心に注意を払い、技術士としての貢献の在り方を考え続けることこそが大切と思われます。
今後も、定期的に本取り組みを継続するとともに、常にその時々の課題を見出しながら、密度の濃い意見交換ができるよう企画を継続していきたいと考えています。

このページのお問い合わせ:原子力・放射線部会

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