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原子力・放射線部会

住民目線のリスクコミュニケーションを考える(平成28年度活動)

住民目線のリスクコミュニケーションを考える(3)−福島の現状と技術士の具体的役割

 当部会では活動の柱の一つに、「3.11事故の反省・教訓を風化させない働きかけ、安全文化醸成に資する活動」をあげております。
東電福島第一原発事故以降、被災された方々への思いを振り返りつつ、その時々の技術士としての役割を問い直すために、『住民目線のリスクコミュニケーションを考える』と称して、講演聴講や意見交換を含む勉強会を毎年3月に討論型の企画しており、本年で3回目となります。

 これまでの2年間では、第1回目は、専門家が事故直後に県内の被災地で行った支援経験を学び、技術士として自らの行動に反映すべき点を考えました(部会員の福島支援活動の経験から、住民目線のリスクコミュニケーションを考える)。しかし、経験値の共有化はハードルが高く、状況に一定の理解はするものの、そのまま経験者と同様の対応ができるかというと、この方法では困難な状況でした。
 第2回目は、経験者と同様の体験をすることを念頭に、具体的事例で相談を受けた場合のロールプレイ(疑似体験)を主とした内容としました住民目線のリスク・コミュニケーションを考える(2)事例研究。本企画では大きな気づきはあったものの、コミュニケーションに偏っていたため、技術士(専門家)としての役割について、もう一度深堀りが必要ではないかとの問題提起がなされ、今回の企画につなげました。

 今回は、事故からまる5年が経過した福島の抱える課題を以下の2点に絞り込みました。

(1) 福島県内の状況や課題は、時間とともに変容してきており、実際は放射線影響の問題よりも社会的要因を背景とした課題が山積していること、
(2) 福島県外では事故直後の福島に対する認識が変化しておらず、それが福島復興に支障を来していること

さらに、我々が今できる支援に特化し、

(1) 課題については、福島県内の課題と県外の課題、
(2) 支援のあり方については、県内の住人への直接支援と県外の住人への間接支援

のマトリックスで捉えなおして検討致しました。その結果、最大の課題は県外の人々の福島のイメージが固定化されていることにあり、我々技術士の多くが実際に貢献できる場は県外であろうとして、「福島支援のために技術士が福島県外の人々に対してどのような行動をとるべきか」をメインのテーマとすることとしました。

 前半では、「本取り組みの経緯と問題意識」を部会側から提起したうえで、原発事故により福島に生じた多様な健康被害を俯瞰し、医療現場の経験と公衆衛生的視点で情報発信を行っている越智小枝氏(相馬中央病院内科医長)を講師に迎え、「福島からみたリスクコミュニケーションの課題」と題して福島の被災地で求められるリスクコミュニケーションのあり方についてご講演を頂きました。

 後半では、参加者を原子力・放射線部門を専門とする3つのグループと、2つの非専門家グループに分け、以下の4つのサブテーマ

(1) 福島県内の住民に密着した情報を入手するにはどのような方法があるのか
(2) 福島県外の対象者(一般の人々、技術に見識のある人々、行政等)別に、情報を発信するにはどのような方法があるのか
(3) 福島県外の人々に、技術士として、放射線・原子力・除染等の技術的知識、福島の社会経済的な実情・生活関連情報等を伝えるにはどのような方法があるのか
(4) 技術士会等のネットワークの活用策にはどのようなものがあるのか

から選択して福島復興へのヒントを得るための自由討論をして頂きました。(議事録はこちら
討論の結果、情報入手や発信、間接伝達の仕方、連携の在り方等への提案と現状分析等について様々な意見が出ましたが、越智先生からは、外部の組織との連携のためにも、もっと技術士を外部に向かってアピールすべきとの講評も頂きました。

本企画は、1年に1回の取り組みではありますが、常に福島の出来事や住民の関心に注意を払い、技術士としての貢献の在り方を考え続けることこそが大切と思われます。
今後も、定期的に本取り組みを継続するとともに、常にその時々の課題を見出しながら、密度の濃い意見交換ができるよう企画を継続していきたいと考えています。

このページのお問い合わせ:原子力・放射線部会

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