ホームお知らせ事務局から東日本大震災から10年に寄せて(会長メッセージ)
公益社団法人 日本技術士会 会員各位
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震から10年の月日が流れました。
この10年間、私たちが拠り所としている「技術」により復興に貢献してきたことはまぎれもない事実ですが、防災という視点から「技術」はどうあるべきなのかを今一度考えてみたいと思います。
東日本大震災を契機に近年の大災害に対して、「想定を超える外力」あるいは「未曾有の災害」といった言葉で表現されるようになっています。そして、災害に対する備えが「脆弱」であることが課題であると言われています。また、「脆弱」という用語に対比されるものとして、「強靭」という用語が使われています。たしかに「強靭」という言葉からは、硬くて強固なだけではなく、外力に対するしなやかさを備えているイメージがあります。それでは、「脆弱」ではない概念として「強靭」を位置づけ、強靭な国土を目指すという方向でいいのでしょうか?
例えば津波の外力に対して、強くて壊れにくい防波堤を計画することを考えてみましょう。この場合でも「想定を超える外力」の設定が必要となりますが、堤防の構造や素材を工夫することにより、ある程度壊れにくい構造物の設計は可能でしょう。すなわち「強靭な堤防」をつくることはできますが、「想定を超える外力」の想定を超えた津波が来ないという保証はないわけですから、このアプローチでは限界があります。
これに対して「反脆弱」という概念があります。「強靭」なものはある程度外力に耐えますが、「反脆弱」なものは外力を糧にする、言い換えれば外力の高まりによって、かえってパフォーマンスが向上するという概念です。
災害の規模や発生頻度を予測するだけでなく、災害に対する防災の仕組みが、システムとしてどれくらい脆弱なのかを評価することを優先すべきであり、防災システムの「反脆弱性」を強化することに力点を移していくことの方が大事なのではないでしょうか。
さらに一般化すれば、社会のあらゆる側面に求められる「反脆弱性」を強くするものが「技術」だと言えるでしょう。
技術士が反脆弱な社会システムの構築に貢献するためには、その多様な専門領域の技術力を統合的に発揮するためのプラットホーム機能が必要であり、日本技術士会に求められる社会的役割がそこにあります。
私たち技術士は、国家資格を有するプロフェッションです。「技術」に課せられた役割を今一度再認識し、防災の視点から公益に貢献していきましょう。
2021年3月11日
公益社団法人 日本技術士会
会 長 寺 井 和 弘
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