原子力・放射線部会のホーム部会活動状況福島復興支援活動事例(学び直し)
震災以降、何年、何十年と渡り、福島第一原子力発電所事故のこと、そして福島で生活している(していた)方々のことに関心を持ち続けると共に、後継者へ伝承し続けていくことは、原子力・放射線に携わる技術者にとって、生涯に渡って取り組まなければならない重い課題の一つではないでしょうか。社会的役割を背景にそれに積極的に応えていくことが期待される一方、個々人で全てを掌握することは多くの場合困難であり、当部会がその一助を担うことは部会員への活動支援につながると考えます。
<リスクコミュニケーション力の向上を中心に>
福島第一原子力発電所の事故や原子力・放射線分野で公衆が関心を寄せるテーマに着目し、公衆目線での情報発信及び説明責任を果たせる(直接的または他の部門の技術士や技術者などを介した間接的なリスクコミュニケーションができる)技術士をあるべき姿としてイメージしています。
その背景には過去、部会が発信した“福島第一原子力発電所の事故とその後の社会的混乱を未然に防ぐことができなかったこと”(部会報第10号「Opinion」より)が部会活動の反省の太い軸となっています。その後も「1F事故への反省を忘れない」をテーマに掲げていますが、では反省すべきことは何か、何故できなかったのか、今ならできるのか、今はできなくともできる方向に進んでいるのかを考え続け、ギャップを常に感じ、それをしっかり肝に持って日々の業務に当たっていきたいと考えています。部門設立時(答申)に期待された技術士の姿を投影した時、我々技術士は公衆からの問いにどのように応えていけばよいかを考え続けます。
原子力・放射線部門の技術士としてリスクコミュニケーションを中心に、福島(オンサイト/オフサイト)の状況について学び直した主な事例を、以下に整理しました。
継続中〜2015年 住民目線のリスク・コミュニケーション
本企画は、1年に1回の取り組みではありますが、常に福島の出来事や住民の関心に注意を払い、技術士としての貢献の在り方を考え続けることこそが大切と思っている。
今後も、定期的に本取り組みを継続するとともに、常にその時々の課題を見出しながら、密度の濃い意見交換ができるよう企画を継続していきたい。(詳細⇒こちら)
2018年 VR技術を応用した福島第一原子力発電所の廃止措置
福島第一原子力発電所の廃止措置では,事前検証や操作訓練が他の原子力発電所の廃止措置に比べ,重要である。日本原子力研究開発機構 楢葉遠隔技術開発センターでは,実測データを基に事故後の建屋内部状況を模擬したVR システムや各種実規模大のモックアップ設備を応用して廃止措置に適用するための技術開発が行われている。これらを活用することにより確実かつ効率的な現地での作業への貢献が期待できる。(詳細⇒こちら)
2017年 福島高等学校スーパーサイエンス部放射線班の東日本大震災後の取り組みからの学び
福島県立福島高等学校スーパーサイエンス部放射線班所属の3 年生2 名,同校教諭 原尚志氏を招き,その活動報告および放射線教育についての講演後,意見交換を行った。講演では,放射線被ばくの現状を比較した結果,福島高校生の個人被ばくについては減少している傾向を確認できた。また,放射線防護に関する関心が薄れてきているように感じること,知識だけでは安心につながらない,情報を共有し判断を練習することが必要と説明された。意見交換では,議論を通じ技術者とは何か,何ができるのかを再考するきっかけとなった。(詳細⇒こちら)
2016年 福島第一原子力発電所 現状視察
福島第一原子力発電所の事故から5年が経過し,原子力・放射線部会では発電所の現状を自ら確認し,技術士として情報発信すべく見学会を主催した。集合地点から発電所間の移動の際の風景,発電所での各原子炉,汚染水処理,構内,労働環境の改善等の状況について報告する。廃止措置に向けて現場は変化し続け,必ずしも順調とはいえないが粘り強く地道に進展している。関係者の真摯な努力と使命感に感銘を受けた。(詳細⇒こちら)
2015年 福島の放射線リスク/一般人のリスク認知と専門家のリスク評価の齟齬
長年にわたる化学物質リスク評価の経験をもととした福島の放射線リスクに対し、社会問題の多くはリスクトレードオフの関係にあること、また社会を混乱させないためのリスクを扱う専門家の留意点について。(詳細⇒こちら)
同様にして、科学技術の専門家がリスク評価を一般の人びとに伝えても、“理屈をわかってもらえたはずなのに納得されない”、“理解されたはずなのに行動は変わらない” と感じることがある。一般人のリスク認知と専門家のリスク評価の齟齬についての知見を得た。(詳細⇒こちら)
2014年 放射線出前授業から考えるリスクコミュニケーション
児童、生徒並びに教職員を対象としたリスクマネジメント、リスクコミュニケーションの実践例と文科省放射線出前授業プロジェクトに参画した経験から考えるリスクコミュニケーション。前者は「理解させる」ではなく、気付きや関心を持たれることが狙いであり、後者はいざという時のコミュニケーションは日ごろの信頼関係の積み重ねであることを学んだ。(詳細⇒こちら)
2013年 放射線による被ばくリスクと放射線防護をどう考えたらよいか
被災地の復興支援に携わった技術士からの要望に沿い、福島の現存被ばく状況を理解するために必要な、[1]放射線による身体影響、[2]従来の放射線防護の考え方と基準値の意味、[3]福島の汚染状況や住民への健康影響の3つの情報に絞り込んだ。また、福島における復旧支援活動を紹介し、事故後2年半を経て、解ってきた事実と説明が放置されてきた誤解の整理、さらに、福島の反省を踏まえた今後の放射線防護の考え方に議論を深化する。これらを通じて、福島復興の障害は何か?復旧・復興のあり方はどう考えるべきか?そして、『福島』の尊厳を守るために、我々は何をすべきか?を共に考えた。(詳細⇒こちら)
2012年 放射線の農林水産物への影響
被災地支援研究における、[1]作物、[2]土壌、[3]畜産、[4]水産、[5]フィールド(環境)、[6]測定法、[7]コミュニケーションの観点から、放射性セシウムから放出される放射線の可視化も含め、汚染状況や汚染経路等についての知見を得た。
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