防災特別委員会

     



 
第8回 2006年8月15日
小澤 明夫
 不意の地震に不断の用意
1.安政大地震後の鯰絵
国立歴史民族博物館で企画展示「ドキュメント災害史1703-2003〜地震・噴火・津波、そして復興〜」があり、展示を見る機会はなかったが展示解説書、副読本を入手し、鯰絵という版画の存在を知った。その後「鯰絵」(宮田登・高田衛監修:里文出版)に出会った。安政大地震直後、大量に鯰絵が発行されたということです。鯰があばれたことによって地震が起きたという言い伝えは今でも多くの方が聞いたことがあると思います。鯰が地震を起こしたことを詫びたり、懲らしめられたりということで自然災害に対するやり場のない気持ちを勧善懲罰としてあらわしていると言えます。また、金持ちがその資産を地震でゆすりとられるという風刺もみられ、ここでは義人として描かれている。ここまでくると地震というのは災難というよりは、「めぐり」を良くして社会に活気をもたらすものとも言えます。


2.災難と信仰
災難を避けようとする「厄除け」という考え方が一般的で、お札、お守りや安全祈願などもこれにあたると思います。ノアの箱船では、洪水にあっても選ばれた民が救われたという話です。一方で、「禊、祓い」で苦難を積極的に受け止めようとする考え方もある。誰でもこのような災難に出くわすことを好みませんが、禊、祓いによって修行したり、徳を積むということです。このような考え方では、修行や徳を積むと大難が小難になり、小難が無難になる、または来世での位があがるということです。

3.予知はできても予防できない地震への対応
関東大震災も悲惨な天災でしたが、その後の帝都復興事業は今日まで多くの遺産を受け継ぐ立派な事業でした。災害のなかでも地震について予知はできても予防できない天災です。しかし、人知をもってすれば神頼みしなくても大難を小難に、小難を無難にする"減災"は可能です。この減災のために人事を尽くした上で、関東であれば鹿島大明神にも神頼みするという心構えが必要ではないでしょうか。
最後に東京有楽町駅前に昭和8年9月1日建立の震災記念塔台座に刻まれた「不意の地震に不断の用意」を紹介して話を次の方にバトンタッチします。
   

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