防災特別委員会

     



 
第6回 2006年3月20日
内藤 重信
 石油精製工場で学んだリスクマネジメント
 機械屋は潰しが利く、との風説を信じ、所謂"機械屋"としての専門性に魅力を感じていなかったこともあって、就職先として多様な技術分野を有する石油精製業を選びました。機械屋の出であるので、先ずは工務・保全部門からスタ−トし、プラントの設計・建設まで、専門性の深さは別として、全ての職種・業種を直接・間接に体感し、見識を広めることが出来ました。極端な言い方になりますが、埋設配管敷設に伴う土方から、未だパソコンの無い時代で、大型コンピ−タ−のソフト(ベイシック、フォ−トラン・・・・・・・・・)のプログラマ−までとなります。

 さて、こうした職種を抱えた石油精製業では、買ってきた原油を如何に安く精製・加工し、効率的な販路と販売店を通して売り、利益を上げることを目指します。そうした中にあって、大量の高圧ガスや危険物を取扱っている設備等で、発災事故を起し、復旧に時間を要しようものなら、設備の復旧工事費はもとより、行政・周辺住民への対応(発災原因・対策・再発防止等の釈明、操業再開のお願い等)を含む操業停止に伴う機会損失と労力は計り知れなく大きくなります。事故を未然に防ぐ為の、監視機器や、従業員教育を含む監視体制、災害に強い設備への増強投資など、リスクに対して何処まで投資をして、損失を少なくし、利益を生み出してゆくか、が主たる経営課題となります。

 一般的に言われる"リスクマネジメント"には、経営そのものである@ダイナミックリスク(損失もある代わりに利益も期待できる投機・研究開発等と次のAを含む)と、常に損失のみを伴うAスタティックリスクが有と習いましたが、昨今のIT化社会では、IT化による計り知れないメリットと同時に、IT化よるリスクは未経験分野ばかりか、想像の至らぬ分野を含むため、こうした@Aの区分の無い状況が発生しつつあります。
企業は全てのリスクを洗い出し、何に・どう・どの程度まで対処したら良いか、について検討し、企業の生き残り、継続を賭けて日頃から対処しておく必要があります。
(この原稿の終盤に差し掛かった時点で、減災WG-Cの浅岡さんから、内閣府からの「事業継続計画ガイドライン」が送られて来ましたので、ご参照下さい)ここでは、我々の活動分野である地震が発災原因という想定で、石油精製工場で行なったリスクマネジメント手法の一部を記述してみます。ご意見ご批判を頂ければ幸いです。

<リスクをマネジメントする手順>
 @リスク発掘→Aリスクの評価→Bリスクの制御→Cリスクの保有・移転→Dリスクの管理
*1.上記手順の概要
@リスク発掘;どういうリスクがあるか洗い出す。
Aリスクの評価;各々のリスクの大きさは?;リスク = 損害の大きさ X リスクの発生確率
Bリスクの制御;そのリスクを如何に小さくするか。
Cリスクの保有・移転;小さい状態にして保有するか、又は他に転嫁するか。
Dリスクの管理;これらを総合的に管理する→企業経営。

*2.A作業例;当時使用したワークシート記入例(添付)

*3.Bの概念図(添付)

   

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