推薦者から一言
小美野氏は、大手建設コンサルタントに入社され、担当した農業用パイプラインの機能診断業務経験を踏まえ、説得力のある技術提案や成果説明を目指し、技術士資格を取得されました。資格取得後は、農業部会幹事として部会活動にも積極的に参加していただいています。若手女性技術士として、さらなる活躍が期待される方です。
理事、農業部会幹事 圓山満久
1.農業農村工学との出会い
私が農業農村工学と出会ったのは高校時代、進路を決める時期まで遡ります。昔から海外のTV番組で動物関連を扱うAnimal Planet や環境問題等を扱うDiscovery Channel が好きでよく見ていました。中でも、オーストラリア人のクロコダイルハンターが民家等に出没したワニを捕獲する番組が、スリルがあり好きでした。このような状況から、自然と生態系や食糧環境問題に興味を持ち、大学は農学部に進むことに決めました。
私の入学した学科は、1・2年次は幅広く学習し後から生態系、森林系、農業経済系、そして今の仕事にも繋がる農業工学系のプログラムを選択できる制度がありました。農業工学は工学の知識も必要であったため、物理を苦手としていた私は、最初は選択の優先度が低い分野でした。しかし、生態系や森林系は私より遥かに博士並みに詳しい学生が沢山おり敵わない、そしてそれを超えようという情熱が自分にはなかったこと、農業工学は食糧生産の基盤であり環境と密接に関係していることから食糧環境問題の解決にはかかせない分野であることを知り、半ば消去法と新しい分野への興味から農業工学プログラムを選択しました。研究室では水田の水収支や窒素・リンの物質収支の解析を行っていました。
2.会社との出会いと悩む日々を経て
現在の会社は建設コンサルタントであり、学生時代頼りにしていた先輩が入社されたことをきっかけに知りました。そこからインターンシップを経て、会社の雰囲気が良いなと思ったこと、自分が学んできたことを活かして農業分野に貢献できると思ったことから入社を決めました。
しかし、ここから紆余曲折がありました。
入社して1〜3年目までは農業用パイプラインの機能診断調査、保全計画や農業農村整備事業の事業効果算定業務等、幅広い業務に関わりました。若手でも、主となる資料を作成し発注者の方とやり取りを行うなど、主体的な対応が求められ成長の日々でした。しかし、当時は自分自身にあまり自信がなかったこともあり、成長できている自分を認めることができず、自分に厳しい反省会ばかりしていました。加えて、自信のありそうな同期と比べて、本当にこの仕事は向いているのだろうか、と自問自答を繰り返していました。
悩んだ結果、別の形で農業や環境分野に貢献した方が良いと思い1度転職し別業界(出版社)を経験しています。全く別の環境に身を置いたことで自分は改めて、技術者として農業分野に貢献したかったのだ、と気付きました。自問自答を繰り返した結果、もう1度チャレンジしようと決め、再度入社試験を受けて現在の会社に戻っています。戻ってからは迷いが晴れたこともあり、前向きに仕事に取り組むことができました。
(3年目、仕事について悩んでいた時期)
3.技術士の取得と今思うこと
このような背景もあり、技術士の勉強も自分のためならず、再度受け入れてくれた会社のためという思いもあり、2回目の受験で合格することができました。このような経験がなければ今現在、技術士として業務に携わることはできなかったでしょう。当時、再び受け入れてくれた上司や同僚に感謝しています。また、転職先には申し訳ないという思いがあり、本を買う際はなるべく転職した出版社の本を買うようにしています。
現在は技術士も取得し、若手を指導することも多くなりました。自分自身が若手だった頃のように一人で我武者羅に業務を行うのではなく、後輩とも仕事を分担し、若手の成長を促すチーム型の仕事スタイルに変わりました。このため、何か気づいた時の伝え方や仕事の分担など、コミュニケーションについて気を回すことが多くなった気がします。人との関わりについても考えることが多くなり自身も成長しなくてはと思う日々が続いています。現在、第2の成長時期と捉えて日々過ごしています。
4.趣味と知識の取得
休みの日は出かける日以外は近所の図書館によく足を運んでいます。本屋に行くこともありますが、新刊でなければ大抵の本は図書館に置いてあり、節約にもなります。本屋や図書館に行くと現在のトレンドを知ることができます。例えばChatGPTやRPA等の自動化の本、資産形成の本が並んでおり、仕事に還元できるものや人生について考えさせられるものに出会うことができます。
また疲れた時は宇宙や深海の図鑑を読んだりして、世界は広いな、と悩んでいたことがちっぽけに感じることができたり、私にとって図書館や本屋は知識の取得、かつ回復の場所でもあります。将来の夢は大きな書棚を買って、棚から本が溢れてしまう心配をなくすことです。
もう1つの趣味はドラムです。通っている教室のピアノの先生と仲良くさせていただくなど、仕事以外にも居場所を作って楽しく過ごしています。
(益田ミリさんがお気に入り)
5.現在の業務と技術士活動について
活躍する技術士、という見出しほどまだまだ活動はできていないという恐縮な思いを抱きつつ、自分が現在の仕事にようやく向き合えるまでを振り返りながら執筆させていただきました。
過去の活躍する技術士に掲載されている先輩方のようになれるよう、自分の良さを見出しながら一技術者としてこれからも精進していきたいと思います。
- 2011年3月 東京純心女子高等学校卒業
- 2017年3月 東京農工大学大学院 国際環境農学専攻修了
- 2017年4月 日本工営(株)入社
- 2020年5月 出版社入社
- 2020年10月 日本工営(株)再入社
- 2022年 技術士(農業-農業農村工学)取得
- 日本技術士会 農業部会 幹事
- 技術士(農業・農業農村工学)
- 農業水利施設機能総合診断士
- 日本工営(株)流域水管理事業本部 農村整備部
- 農業水利施設の調査・設計・計画
(本記事は、月刊「技術士」2024年12月号掲載の『活躍する技術士』を基にしました。活躍する技術士の現在の業務や推薦者の肩書は、掲載号当時のものです。)

