次亜塩素酸を通して
安全・安心な社会をつくりたい
小野 朋子さん生物工学部門衛生工学部門総合技術監理部門株式会社エイチ・エス・ピー 勤務

推薦者から一言

小野氏は、女性で企業の研究開発部長を務め、新型コロナウイルス感染対策として有効なスーパー次亜水生成装置や噴霧器の用途開発を行い、その成果を防菌防黴学会や次亜塩素酸水溶液学会等で積極的に発表されています。また、中国本部の活動では、男女共同参画推進委員や岡山支部幹事(事業委員)として、理科教室や女性技術者交流会、女子学生との交流会の企画参加を通して、技術士の知名度向上や仲間づくりにも貢献されています。

大田一夫 中国本部 本部長

1.私の仕事について

大学卒業後、現在の会社に新卒入社してから19年が経ちました。今ではもう社内ですっかり古株です。
(株)エイチ・エス・ピーはHACCP(ハサップ)System Planningの略で、もともとは食品衛生の分野からスタートした会社です。「次亜塩素酸」という除菌・消臭用の衛生管理用水を生成する装置およびその配管システムを提供する業務を行っており、私は研究開発部で次亜塩素酸の用途開発・研究を主に行っています。例えば、食中毒防止のため野菜を洗浄殺菌する場合に、どのような液性の次亜塩素酸でどのように洗浄すればよいかなどの条件を細菌検査等行って明らかにしています。また、それらの結果を学会や研究会などでの発表や論文執筆を通して、世に問い共有化することも心がけています。

次亜塩素酸はコロナ禍の第一波の際、消毒剤や衛生資材の不足の際に大きく注目されました。しかし、マスコミの誤報や公的発表の内容から、「次亜塩素酸は効かない、危険だ」というイメージに一変しました。マスコミや政府が悪いと嘆くだけではなく、メーカーとしてするべきことを1つ1つ整理し実行していくこと、ベネフィットだけでなくリスクも合わせて伝えていくことの重要性を改めて感じています。なお、その後公的機関において新型コロナウイルスに有効であることが発表されています。
また、2年前から管理職になったため、人材育成やマネジメントも仕事に加わりました。良きプレイングマネージャーであることが求められますが、まだまだ課題が多く試行錯誤の日々です。

微生物殺菌試験

2.技術士資格について

私が技術士という資格を知ったのは、入社後2年ほどした頃でした。当初は会社の業務全体として部門が近いと感じた衛生工学部門を目指していましたが、当時は周りに技術士の方もおられず手探りで勉強しており、二次試験は3回連続不合格でした。そのため、技術士には到底なれそうにないと、しばらくは取得をあきらめていました。
転機になったのは2016年、所属する学会でお会いした研究者の方が偶然技術士資格を持たれており、部門を変えての受験を勧めてくれました。その年、一念発起して生物工学部門で再チャレンジし、2017年に念願の技術士となることができ、その後、衛生工学部門と総合技術監理部門(生物工学)も取得しました。2部門目以降の取得の際には、岡山県内の「若手技術士の会」という有志の会で二次試験の勉強を一緒にさせていただいたことが大きかったと思っています。
技術士の立場で仕事をすることで、私が行う仕事に安心感を持ってもらいたいと思うと同時に、それだけの責任を持って業務を行わないといけないなと日々肝に銘じています。

3.プライベートでは

プライベートでは夫と中学生、小学生の2人の娘の4人家族です。最近では娘たちも自分自身で好きなことに打ち込む時間が増え、各々の予定などもあるため、常に一緒に過ごすというフェーズは超えたように思います。長期の休みには家族で旅行やキャンプに出掛けています。キャンプでは雨に降られたり、料理がうまくいかなかったりとハプニングもたくさんありますが、それぞれがよい思い出になっています。

家族でキャンプ

4.技術士になって変わったこととこれから

技術士になったことで、多くの人と出会いがあり、私自身の興味の幅も広がりました。私の場合、興味が広がるところにはまず「人」がいます。ただの風景が、技術士の方との出会いによって「〇〇さん」が作った道路、橋、工業製品、水道水、食品になり、愛着のある風景に変わっていきます。私自身の仕事も、安心安全な社会を構築する中の有益な一部になれるよう、これからも丁寧に仕事をしていけたらと思っています。
また、日本技術士会や若手の会の活動を通して、科学の大切さ、面白さを次世代に伝えていけたらと思っています。小学生を対象とした理科教室を行っているのですが、この中から未来の技術士が出てこないかなと密かに期待をしています。

若手の会主催の理科教室
プロフィール
  • 2003年 島根大学生物資源科学研究科修了
    (株)エイチ・エス・ピー入社 研究開発部配属
  • 2008年 長女出産(社内で初めての産休・育休を取る)
  • 2012年 次女出産
  • 2018年 技術士(生物工学)取得
  • 2021年 技術士(衛生工学)取得
  • 2022年 技術士(総合技術監理部門(生物工学))取得
学協会活動
  • 日本技術士会、日本防菌防黴学会、次亜塩素酸水溶液普及促進会議
勤務先
  • (株)エイチ・エス・ピー研究開発部, 博士(農学)
現在の業務
  • 次亜塩素酸水溶液の用途開発
趣味
  • ファミリーキャンプ、旅行

(本記事は、月刊「技術士」2022年8月号掲載の『活躍する技術士』を基にしました。活躍する技術士の現在の業務や推薦者の肩書は、掲載号当時のものです。)

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