更新日:2005.12.20
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平成17年12月 講演会報告  
  日 時:  平成17年12月 8日(木)16時30分〜18時00分
 場 所:
 日本工営鰍`会議室
 演 題:  世界の水問題
 講 師:  高橋 裕氏(国際連合大学 上席学術顧問,東京大学名誉教授)
 参加者  46名
 報 告:  高橋先生は昭和30年に東京大学大学院(旧制)研究奨学生課程を終了後、昭和62年まで同大学にて教壇に立たれ、さらに、芝浦工業大学で11年間教鞭をとり、現在、国際連合大学上席学術顧問として活躍されています工学博士です。この間、水資源開発審議会会長をはじめとする政府委員を歴任し、また、国際水資源開発副会長など国際的にも重責につかれ活躍されております。
  講演は主な著書のひとつである「地球の水が危ない」(岩波書店2003年)の内容に基づき「世界の水問題」との演題でご講演いただきました。講演の内容は、以下のとおりです。
  冒頭、「20世紀は領土紛争の時代だったが、21世紀は水紛争の時代になる」との世界銀行副総裁セラゲルディン氏の言葉を紹介されて、人口増加と水不足、地球の水危機というセンセーショナルな話題で幕を開けました。
  ここ約30年間の水をめぐる国際的な動向をその時々のエピソードを交えながら興味深く紹介していただきました。20世紀は人口が爆発的に増えた時代であり、その結果、水の貧困国が発生し世界的に見た場合、アンバランスな状況に置かれています。また、急激な水質悪化の状況、地下水の汲み上げによる水位低下で河川が断流する現象も生じています。
  その他に「河川の紛争」、「間接水」、「ダムと開発」などの話題にも触れられ、最後に近年の地球温暖化にともなう異常気象による問題、過疎化・少子高齢化の進行による治水・水資源対策についても言及いただきました。講演後、活発に質疑応答が交わされ予定時間を20分ほど超過しました。
  「水」と言う生活の根幹を成す、その影響の大きさについて、あらためて考えさせられました。高橋先生は翌日、調査のためカンボジアの奥地に赴かれました。
                                                                                                        (伊藤康裕 記)


平成17年11月 見学会報告  
  日 時:  平成17年11月10日(木)13時30分〜16時00分
 見学先:
 地下鉄13号線新宿3丁目駅部開削工事及び駅間シルードトンネル工事(東京都新宿区新宿3丁目明治通り路下他)
 説明者  東京メトロ新宿工事事務所 
  西村所長,船水総務課長,藤本工事主任
 参加者  33名
 報 告:

 地下鉄13号線新設工事は、池袋〜渋谷間8.9 Kmを、明治通りの路下を主要路線とし、その間に7駅を新設するものである。平成19年度の完成をめざして日夜工事が行なわれており、現在がピークといった状況である。将来は、池袋で有楽町線、東武東上線、西武池袋線、渋谷では東急東横線と相互直通運転を行う予定とのことであり、埼玉南西部、都心、横浜とつながる首都圏南北の広域的な主要鉄道軸が完成する。このことにより、これ等の路線の利便性はもちろん、既存の鉄道ネット網も更に有効に機能すると考え計画された山手内最後の地下鉄路線とのことである。
 見学会は、まず新宿花園神社に集合し、隣接の東京メトロ工事事務所に移動、同会議室で久多羅木幹事の司会で始まり、所長より13号線工事全体概要と見学現場の詳細な説明を受けた。その後、全員ヘルメットとイヤホンを装備し一列となり地下構内を移動、各所で具体的な説明を受けた。花園神社前から高島屋前までの700m間を1時間30分に亘り見学した。その後、高島屋横にあるJV事務所会議室において活発なる質疑応答を行い、最後に高浜研修委員長からお礼の挨拶を述べ、無事に終了した。
 13号線の工事は、都心の主要幹線道路である明治通り、それを横断する新宿をはじめとした繁華街における工事であり車輌、歩行者等の路面交通、各種地下埋設物、既存の多くの地下鉄路線、近接ビル等、都市土木工事にとっては、多くの難題を抱え工事である。.世界的にも比類のない緻密な計画を要する工事ではないかと考える。
特に、地下で輻輳した大型埋設物や複雑な系統のライフラインを吊り防護している様子は圧巻であった。
これ等に対し、楕円型大断面シールド工法をはじめとした最新技術と既成の熟練された技術がうまく組み合わされて、この難工事がクリーアされている状況が良く理解できた。
 世界に冠たる技術のデパートとも言える当現場には諸外国からの見学者も絶えないとのことであるが、今後この様な技術の移転、伝授等により日本として国際社会の安定化に大いに貢献できるのではないかとも考える。
                                              (吉田 圭佑 記)

写真1             写真2
東京メトロ所長による地下鉄工事説明  池袋から渋谷方面へと進む地下構内

平成17年10月 見学会報告  
  日 時:  平成17年10月20日(木)14時〜16時30分
 見学先:
 東京都下水道局森ヶ崎水再生センター
 説明者  永井 誠(森ヶ崎水再生センター運転調整担当係長) 
 鈴木 宏(同運転調整担当)
 参加者  24名
 報 告:

 東京都下水道局森ヶ崎水再生センターは東西二つの施設と、汚泥処理を行う南部スラッジプラントからなっており、我が国では最大規模の水再生センターです。 処理区域は、大田区の全部、品川・目黒・世田谷区の大部分、渋谷・杉並区の一部で、面積は14,675haと区部全体の面積の約4分の1にあたります。 処理した水は東京湾に放流しています。また、その一部を砂ろ過してセンター内の機械の洗浄などに使用するほか、太田清掃工場、東京港埠頭公社にも供給しています。 発生した汚泥はセンター内で脱水したあと、南部スラッジプラントに運び、処理しています。
 当施設は東と西に分かれていてその敷地面積は415,309m2と、実に東京ドームの約9個分、一日の処理量は約120万t(東京ドーム一杯分)です。 とにかく広い!我々見学者は東京都下水道局の永井様と鈴木様を先頭に2班に分かれて見学させて頂きましたが、見学終了近くには脚も棒のようになり、お陰様で相当な運動量となりました。 この施設のもう一つの特徴は汚泥消化槽で発生するバイオマスエネルギーであるメタンガスを発電に利用したバイオマス発電をPFIを導入して事業化している点です。このセンターで年間12億円の電力を使用している中で、バイオマス発電により3億円削減できているそうです。さらに驚くことにこのセンターを実際に動かしているオペレーターの方々はたった6名(4班に分けて24時間体制)とお聞きしたのには驚きでした。
 最後に、本センターを見学される人数は昨年で4000名だったそうです。丁寧な説明に加えて質問時間まで儲けて頂いたセンターの永井様と鈴木様に深く感謝して見学会の報告とします。
                                                                                                       (鈴木眞之 記)


平成17年9月 講演会報告  
  日 時:  平成17年9月 6日(火)17時〜18時30分
 場 所:
 日本工営鰍`会議室
 演 題:  自然災害と危機管理
 講 師:  福岡捷二氏(中央大学研究開発機構教授)
 参加者  39名
 報 告:  近年の豪雨の特徴として、過去の降雨記録を超える局所的な集中豪雨が多発しており、「総合的な豪雨災害防災対策の推進について」との副題で施設等のあり方と地域の防災力の向上に関してご講演いただいた。近年の災害の特長からハード対策とソフト対策が一体となった「減災」までパワーポイントを用いた分かりやすい説明であった。折しも、前夜、台風14号の影響により、都内の一部で水害が発生しており、タイムリーな話題で、具体的な方策も含めた迫力ある講演となった。
 最後に技術士への期待と激励の言葉も頂戴した。質疑応答では、国内の河川事情のみならず世界的な状況まで言及いただき、予定時間を超える白熱した意見交換を最後に大盛況のうちに講演会を終了した。
                                                                                                        (伊藤康裕 記)
平成17年8月 見学会報告  
  日 時:  平成17年8月23日(火)13時30分〜15時00分
 見学先:
 東京港臨海部船上視察
 説明者  (社)東京都港湾振興協会職員の方
 参加者  34名
 報 告:

 視察船「新東京丸」は、絶えず発展し続ける東京港臨海部を、生きた姿で調査・研究しようとする都民団体のために、東京都がサービスしている視察船である。当日は、風が強かったため、中央防波堤外側廃棄物処理場周辺の視察を中止することとなった。
見学コースは、竹芝ふ頭南端の新東京丸乗船場を起点に、日の出ふ頭、芝浦ふ頭、品川ふ頭、大井コンテナふ頭を通り、臨海トンネルを越えたあたりでUターンし、お台場ライナーふ頭、青海コンテナふ頭、船の科学館,お台場海浜公、豊洲ふ頭、そして晴海ふ頭を見学して帰港するというものであった。途中、レインボーブリッジのほか、東京港トンネル、臨海トンネル、第二航路海底トンネルなどの坑口も見学した。
 見学会は、東京都港湾振興協会職員の方の説明を基に、各ふ頭の機能や構造、歴史、取り扱い貨物、利用国などの要点を学習する形態で進められた。日の出ふ頭は東京港で最も古いふ頭であること、芝浦ふ頭は大震災時の緊急物資の陸揚げ場になること,大井コンテナふ頭は最近バース再整備を完了したことなどの説明を受けた。急速に変貌を遂げる都民生活を間接的に理解できたうえ、停泊貨物船、ふ頭利用国、コンテナ貨物などでアジア諸港との厳しい国際競争を実感した。また、海浜公園、野鳥公園なども整備され、レジャー、スポーツ、学習のための空間を多様に提供している国土行政の知恵も垣間見た。下船間近で雨に降られはしたが、船内は快適で満足感を持って視察を終了した。
このような貴重な機会を提供して頂いた東京都港湾局、(社)東京都振興協会の方々に感謝申し上げます。
                                                                                                     (大野博久 記)

平成17年6月 見学会報告  
  日 時:  平成17年6月23日(木)13時〜16時30分
 見学先:
 首都高速道路公団MMST工事(大成・鹿島・戸田JV)
 説明者  山田淳(首都高川崎工事事務所長) 立石洋二(大成・鹿島・戸田JV所長) 阿部吉生(同所長)
 参加者  23名
 報 告:

 見学会は、首都高の山田川崎工事事務所長より挨拶、高速川崎縦貫線等の説明をまず受けた。続いてMMST(マルチマイクロシールドトンネル)工法についての試験施工のビデオにより、その概略の理解をした後、JVの立石所長より現在施工中の工事についての詳細な説明を受けた。その後、JV阿部所長の案内で坑内を見学、途中で、その都度説明を受けた。最後にJVの会議室に戻り、活発な質疑応答を行った。
   この工事は、東京湾アクワラインから西側に延びる高速川崎縦貫線のうち、首都高横羽線とその下を走る産業道路の横断部を延長540mに亘りトンネル方式により地下道路(共同溝併設)を建設するものである。完成断面は、SRC構造の大断面ボックスラーメン構造物となる。この地下道路の西端が大師ジャンクションと結びつき、横羽線を始めとした既設道路と接続する計画である。
   工事現場は、ビル化した市街地、横羽線高架橋、タンクローリー銀座と言われている産業道路、東電洞道を始めとした各種地下埋設、浅い土被り、高い地下水位、軟弱沖積層、等々の工事に対し極めて悪い条件下と言える。これ等の条件を加味して各種の構造、工法が検討された結果、MMST工法の採用となったとのことである。
 今回のMMST工法は、泥土圧式ボックスシールド工法により、上床版部及び下床版部をそれぞれ3分割施工、左右の側壁部それぞれを2分割施工、従がって8本のシールドを先行施工し、このシールド内部を利用して隣接しているシールドとを剛結、かつ補強し、全体が一体となった剛体とする。その後、内部掘削、構築等を行い完成させるものである。現在は、最後の2本のシールドと貫通したシールドどうしの剛結、補強工事が行われていた。
   世界では類のない工法であり、ハイレベルな我が国の各種技術を集積、駆使したものでもであることが良く見学でき、そして、この厳しい工事環境条件において、社会の二―ズに対してのチャレンジ、使命感を前面に出して対処されている状況についても肌で感じることができた。極めて有意義な見学会であったと考える。
  最後までお付き合い頂いた首都高の山田所長、JVの立石、阿部両所長に深く感謝すると共にトンネルが無事完成されることを心より願い、見学会を終了した。
                                             (記 吉田圭佑)

平成17年5月 講演会報告  
  日 時:  平成17年5月19日(木)17時〜18時30分
 場 所:
 日本技術士会 葺手ビル5階D会議室
 演 題:  鉄道モニュメントを訪ねて
 講 師:  小野田 滋((財)鉄道総合研究所情報管理部主査)
参加者  18名
 報 告:  小野田講師は、昭和54年に大学を卒業後、日本国有鉄道に入社され現在は、財団法人鉄道総合研究所情報管理部主査として活躍されている工学博士です。
 主要著書には、「鉄道構造物探見」JTB(2003)、「鉄道と煉瓦」鹿島出版会(2004)があります。
 講演は、全国にある鉄道モニュメント(鉄道碑)と言う鉄道に因んだ事績を金石文(金属プレートや石に文字等を刻んだもの)として残したものを慰霊碑、顕彰碑等に種別し個々の持つ歴史的意味合いについて話され、パワーポイントで写真を多く使われ判りやすいご講演でした。ご講演の要点は以下のとおりです。
 一般に鉄道モニュメントと総称しているものには、車両や構造物の銘板、トンネルの扁額、著名人の墓石、駅前広場にある鉄道以外のモニュメントを含めているが、際限がないため、講演者の場合は鉄道に関わる慰霊碑、記念碑、顕彰碑などに限定して調査している。これらの鉄道モニュメントは、先人達が思いをこめて建立したものであり、それぞれの事績をメッセージとして後世に伝える役割を果たしている。
 鉄道モニュメントの種類としては、「慰霊碑」、「顕彰碑」、「開通・開駅碑」、「達成碑」、「発祥碑」、「周年碑」、「跡地碑」、「災害碑」、「歌碑・文学碑」、「地点碑」、「事件碑」当に分類した。
 鉄道碑の紹介は、「日本鉄道施設協会誌」に1997.01〜2005.04まで100回行っているが、全国の内、山形、愛媛、熊本、沖縄の4県が紹介されておらず連載最終の200回までには全国制覇を達成させたいと思っている。
 本公演を聴講し種々のモニュメントには、先人の思い入れと歴史があり、鉄道、道路、建物等の歴史や努力を知る足がかりとなる物であり大切に保存し後世に伝えなければならないと言うことを再認識させられました。
                                      (中尾政徳 記)
平成17年4月 見学会報告  
  日 時:  平成17年4月21日(木)14時〜17時
 見学先:
 首都高速中央環状新宿線中落合シールドトンネル工事
 参加者  26名
 報 告:

 4月の見学会は首都圏の交通混雑緩和を目的として工事が進められている、首都高速中央環状新宿線の中落合シールド(内回り)トンネル工事の状況を視察した。本工事は豊島区千早の立教通発進立坑から新宿区上落合の地下鉄大江戸線中井駅までの約2kmの工区で、現在約1.7kmまで進捗している。本工事の特色は泥土圧式シールド機(φ12.02m)を採用し、切刃の安定のため高分子系の加泥材を使用していること、セグメントにコンクリート製のハニカムセグメントを使用していることなどである。
 見学は坑内を約3.4km歩く強行軍であったが、奥村組JVの皆様には半日対応していただき、有意義な見学ができた。見学を許可していただいた首都高速道路公団東京建設局とともに、紙面を借りて感謝の意を表したい。        
                                                    (記 櫻井重英)

平成17年3月 見学会報告  
  日 時:  平成17年3月4日(金)15時〜17時
 見学先:
 今井川地下調整池(説明者:横浜市下水道局河川部)
 参加者  16名
 報 告:

 34日(金)は早朝から生憎の雪で、午後からの見学会の参加者の欠席が懸念されたが、20名申し込みの内、16名が予定通り参加した。横浜市河川部河川設計課の新田氏、兼堀氏、清水氏のご案内で見学会が始まった。先ず、関連資料を頂いた後、新田係長の映像による概要説明から始まった。
 この今井川調整池は横浜市のほぼ中央にあり地下60mに国道一号線に沿って、内径108m、延長2000mのシールドトンネルで、貯留量は最大約18万立方m、1時間あたり50mmの降雨に対応するように建設されている。この調整池の完成によって、常に浸水の危険にさらされていた保土ヶ谷地区の安全が保たれるようになった。
 説明後、約200mはなれた位置にある取水口を見学し、さらに地下45mにある排水ポンプ施設などを見学した。
 いろいろな質問にも答えていただき、約2時間後に解散となった。参加者の皆さんは施設の規模に感心しきりであった。
 本当に下水道部の皆様、有難うございました。     (長谷川幸也 記)

 終了後,講師の横浜市河川部の新田係長(前列右から3人目)とともに正門前での記念撮影

平成17年2月 講演会報告  
  日 時:  平成17年2月24日(木)17時〜18時30分
 場 所:
 日本工営鰍R階会議室
 演 題:  歴史的鋼橋の保全
 講 師:  五十畑 弘〔日本大学教授〕
参加者  31名
 報 告:

 五十畑教授は、昭和46年に大学を卒業され、日本鋼管に勤められ、長年鋼橋の技術者として活躍された。専門は橋梁史、土木史で、技術士かつ工学博士でもあります。昨年から日本大学の教授に就任された。講演は、鋼橋のストック、歴史的価値の定量化、補修・補強の事例、補修・補強マニュアルについて話された。パワーポイントで大変写真が多くてわかりやすいご講演で、ポイントをここに整理しました。
 世界遺産のIron Bridge(イギリス)は、世界初の全部鉄製の橋で、従来の石造りアーチダムに鉄をあてはめて建設されたきわめてめずらしい橋である。これまで多大なメンテナンスが行われてきた。
 日本でも鋼橋は多く、八幡橋(1878年 重要文化財)、中橋(1936年 ブレースドリプタイドアーチ)、清洲橋(1928年、代表的復興橋梁)などがある。
 土木構造物の歴史・文化機能は、「文化財保護法改正」「美しい国づくり大綱」「景観法制定」などの法律・行政施策によって、「土木構造物の新たな機能=公益」となってきている。要は社会の要請である。
 道路橋の建設は1971−775年にピークに達し、架け替え橋梁は年平均200橋で、うち鋼橋は約50橋である。架け替えの理由は、改良工事と機能上の理由とで50%を超え、寿命による橋は、きわめて少ない。
 歴史的鋼橋の保存か、撤去かという判断局面が多発している。餘目鉄橋(兵庫県 1986年突風で車両が転落)架け替えに対して、土木学会は、要請文を提出した。主な点は次のとおり。
  ・餘目鉄橋は、文化遺産で正の遺産である。
  ・定時性確保とともに、歴史的文化遺産の維持管理の取り組みも重要である。
  ・費用効果、将来性、効果の持続、文化意義など、総合的に廃橋・撤去を再考されたい。
 伊勢大橋(国道1号/揖斐・長良川 国内第1号のランガ−トラス)の場合、構造検討委員会にて現橋利用の却下・架替が決定された。土木学会では要請文を出した。要点は次のとおり。
  ・わが国の橋梁史上きわめて重要である。
  ・歴史的名橋は、土木文化財としての価値に見合った対処が望ましい。
  ・土木学会へ保全の相談されたい。検討の協力をする。
 今後、鋼橋の補修・補強/架け替え需要が増加するが、構造物の要件としては、構造物の本来機能(安全・使用性)のほかに歴史的機能(歴史性・文化性)があり、「歴史的鋼橋の価値基準」が必要となる。
 歴史的価値の研究として、土木学会では「現存する土木構造物2000選」を発行している。土木遺産の価値の評価項目としては、「技術」「意匠」「系譜」があり、2000選の橋をグレードA,B,Cにランク付けしている。
 架け替え以外の選択肢の認識、すなわち撤去・取替えではなく、補修・補強によるリハビリで再生することをめざすべきである。
 つづいて、国内外の鋼橋の補修、補強(転用、機能追加など)などについて豊富な事例が説明された。
 最後に、土木学会歴史的鋼橋の補修・補強に関する委員会の活動として、「補修・補強事例の収集」「事例の分析」「マニュアルの編集・発行」を進めていることがご報告され、まとめとして次のことを言われた。
 ・土木構造物は、共用して存続が最良である。
 ・歴史的価値(機能)を安全性、使用性などの機能と同様に受け止めるべきである。
 ・客観的評価に基づく歴史的価値、及び基本的機能の双方を勘案した総合判断材料の提供が必要である。
 ・選択肢としての大規模な改変を視野に入れる。(手を加えても文化的な価値を損なうことは無い)
 ・足し算方式の補修・補強を考える。(今あるものをベースに考えるべき)
 ・歴史価値判断をエンジニアリングとしてやっていく。
 土木遺産の保存は、脚光をあびており、まさに旬の話題であり、大変貴重なご講演でした。
                                                   (和作幹雄 記)

平成17年1月 講演会報告  
  日 時:  平成17年1月27日(木)17時〜18時40分
 場 所:
 日本工営鰍R階会議室
 演 題:  技術者倫理
 講 師:  今村遼平〔アジア航測褐レ問〕
参加者  28名
 報 告:

 今村講師は、国際航業(社)を経て、アジア航測(株)に移られ取締役になられ、現在顧問を務めておられる43年目を迎えた地質技術者です。応用理学部門並びに建設部門の技術士です。
 最初に、台湾に烏山頭ダムを建設して、不毛の地を台湾最大の穀倉地帯に変えた土木技術者 八田與一について説明された。中国の諺「飲水思源」(水を飲むたびに井戸を掘ったてくれた人のご苦労をしのび感謝する)をとりあげて、特に八田氏の「公平、誠実さ」、すなわち高度な技術者倫理観を備えていた点について強調された。
 次に倫理、専門職について説明がなされ。たくさんお話の中で特に記憶に残った点は次のとおり。
 ○技術者を支える三本柱  @技術力(真) A想像力(美) B倫理観(善)
  特に、現場管理にはイマジネーションが重要である。
 ○倫理観のピラミッド:倫理観の階層では、最上位に個人的倫理があるとすると、順に企業倫理、専門職倫理、社会的倫理、人間としての倫理があって、最近は、この下に汎地球的倫理(汎宇宙的倫理)が言われている。
  個人的倫理の根本は、「天知る、地知る、我知る」である。倫理観の根幹になるものは、真実性(誠実性)、責任性と公平性の3つである。
 ○業務上の責任の基本は、品質とコストと納期である。
 ○技術者の行動指針は、Mc Ginn R.E. によると次のとおり。
  (1)指針1:一般の害になることを技術者が知っている場合、そのような方法で行動しない
  (2)指針2:一般の利益に反する害が避けれれる種類のものであれば、それを避けるように努める
  (3)指針3:技術的な作業によって、ある範囲の人々に適切に情報を伝え、その人々が危険について合意するかしないかを十分認識できる機会を設ける
  (4)指針4:自分の能力の及ぶかぎり、自分雇用者や観客の合法的利益・目的・指示・注文にかなうように行為する
 ○公益とは?=不特定かつ多数の人々の利益増進に寄与すること。 「公益を害する」とは、次のような内容を「害する」(低下させる)ことを言う
  公益の内容の例: ・安全の向上 ・コストの低減 ・環境の保全 ・暮らしの向上 ・景観の保全や向上
  ・財産・資産の保護 ・健康の保持や向上 ・公平性・平等性の確保など
○判断は若いうちから 「判断力は大人になってから高めるのは難しい」(ラクビー監督 平尾氏の言葉)
 倫理についても同じことが言え、若いうちに教え込んでおくべきである。
 
 ご講演の最後にフィリピンの砂防ダム建設における講師の失敗をもとに、イマジネーションの重要性を強調され、締めくくりとされた。あっというまの、大変勉強になった1時間45分でした。
                                                   (和作幹雄 記)

建設部会講演会・見学会の一覧
平成17年4月〜6月
4月 5月 6月
見学会: 首都高速道路公団中央環状新宿線中落合シールドトンネル 演題: 鉄道施設のモニュメント 見学会: 首都高速道路公団MMST工事
説明者 首都公団東京建設局 講師: 小野田滋((財)鉄道総合技術研究所 情報・国際部主査) 説明者 山田淳(首都高川崎工事事務所長) 立石洋二(大成・鹿島・戸田JV所長) 阿部吉生(同所長)
日時: 4月21日(木)14:00〜17:00 日時: 平成17年5月19日(木)17:00〜18:30 日時: 6月23日(木)13:30〜16:00
会場: 日本技術士会 葺手ビル5階D会議室
会費: 1,000円 会費: 2,000円(非会員2,500円) 会費: 1,000円
幹事: 櫻井、浅岡、鈴木(眞) 幹事: 中尾、佐藤 幹事: 吉田(圭)、岡田、小山
平成17年1月〜3月
1月 2月 3月
演題: 技術者の倫理 演題: 歴史的鋼橋の保全 見学会: 今井川地下調整池
講師: 今村遼平氏(アジア航測褐レ問 講師: 五十畑 弘(日本大学教授) 説明者 横浜市下水道局河川部
日時: 1月27日(木)17;00〜18:45 日時: 2月24日(木)17:00〜18:30 日時: 3月4日(金)15:00〜17:00
会場: 日本工営3F会議室 会場: 日本工営3F会議室
会費: 2,000円(非会員2,500円) 会費: 2,000円(非会員2,500円) 会費: 1,000円
幹事: 西畑、吉田、君島 幹事: 高浜、和作 幹事: 堀川、長谷川、吉田(圭)