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金属部会

金属部会 「定例部会」 議事録(H29/6/21)

金属部会定例会議事録(改1)    

1. 日時 : 平成29年6月21日(水) 17時〜20時30分
2. 場所 : 日本技術士会 葺手第2ビル 5階 CD会議室
3. 出席者(敬称略) : 渡辺正満氏(講演者)、稲村朋宏、奥村貞夫、神戸良雄、小林経明、後藤 明、笹口裕昭、芝崎 誠、
神藤典一、清水 進、關根伸仁、田中和明、中川暢子、中山佳則、中村隆彌、新井田有慶、野坂恵介、
濱田賢祐、平野富夫、平野昭英、勝田明里、松井利治、向原文典、村山 肇、山崎 宏、山崎一正、
吉武進也、渡邉喜夫、齋藤雅也(建設)、(以下電気電子)、前川英洋、長田雅史、丹治雅行、澤田誠一、
安井英己、岩井俊樹、                                  合計35名
4. 配布資料:(敬称略)
1) 金属部会議事次第、部会案内 (山崎 宏 評議員)
2) (2017年7月〜2019年6月) 委員会委員候補者推薦書
3) 講演要旨、講師略歴、講演資料:「通信設備・装置における腐食事例と対策」 (講師:渡辺正満)
4) 平成29年 金属部会主催見学会のご案内、超高温材料研究センター見学会(仮)
・定時総会及び懇親会メモ (小林経明理事)
5) 金属部会活動予定 (清水 進 部会長)
6) 日本技術士会 部会長 部会長会議 報告 (新井田有慶副部会長)
7) 第44回倫理委員会議事録(案) ・月刊『技術士』への連載記事「各学会での技術者倫理への取り組み」の執筆者
のお願い(中山佳則委員)
8) 総務委員会の会議報告(平成29年:3回、) ・技術士制度改革について(提言)‐中間報告‐(新井田有慶委員)
9) 平成29年度第一回国債委員会会議議事録 r3 ・国際活動報告会式次第 (小林経明国際委員長)
10) 議事録 技術士活性化委員会 (濱田賢祐委員)
11) 第23回科学技術振興支援委員会 議事録 (神藤典一委員長)
5. 部会長の交代について
   本日、部会長清水から、新部会長小林経明氏(評議員、前理事)に部会長を
引き継させて頂きました。正式には7月5日の第一回理事会で決定されます。
小林経明氏は、前期理事として、同時に国際委員会を立ち上げる
ために委員長として立派な職責をまっとうされた優れた方です。
  金属部会をさらに発展させて頂けるものと期待しています。
 12年間、皆様に大変お世話になりましたこと心より深謝申し上げます。
 (清水 進)
6. 講演
講演 ;演題 : 「通信設備・装置における腐食事例と対策」
渡辺正満 氏 (工博) 日本電子電話(株)  NTTデバイスイノベーションセンター 主任研究員
◆ 講演内容
? 自己紹介; 山梨県都留市で1968年(昭和43年)12月2日に生まれ、現在の勤務地は神奈川県厚木市で、大田区に奥様と住まわれています。趣味は読書、釣り、お酒とのこと、好きな言葉 「Where there is a will, there is a way」他、平成5年4月NTTに入社研究開発本部、境界領域研究所に配属、平成8年7月基礎技術総合研究所、平成11年1月、生活環境研究所、平成14年4月NTT東日本技術部知的財産担当、平成16年7月、NTT東日本サービス運営部技術協力センター、平成27年7月NTT先端集積デバイス研究所、平成28年7月NTTデバイスイノベーションセンターなど材料の劣化原因の分析や耐食性評価、高強度鋼の水素脆化などの研究開発に携わってきた。
? 通信装置の設置環境の変化; 有線回線に無線通信が加わり、マイクロ波により自動車や携帯電話などの通信、通信衛星で航空機や船舶など幅広い通信が行われています。通信機械室の装置も交換機も電気接点を使用したアナログから電子化されてデジタルに変化してきた。
    モバイル系の進展やアクセス系の高度化など、従来のような厳重な温湿度管理された通信機械室から、通信装置が屋外に設置されるようになり、腐食の観点からはより過酷な環境に変化してきている。こうした環境ではプリント配線基板が腐食 する例が発生している。更に電子部品・デバイスの小型化・微細化の進行により、例えばビルトアップ多層プリント配線板の配線の胴体幅、導体間隔は現状50〜100μmが将来は10から50μmと髪の毛の太さの1/10程度になると予測されている。これによって微小な腐食も致命的な影響がおこる。
通信機器のトラブルの要因は、屋外から、海塩粒子(Na+、Cl-、SO42- など)、火山の噴火などの(H2S、SO2、PM)などの自然源と人為源(SO、 HCl、 NOX、 PM、 etc)などの物質が流入することによって、硫害(H2S、SO2)や塩害(NaCl)によって交換機・伝送装置のパッケージボードの腐食やコネクター部腐食などによって通信装置の故障の一原因となっている。
? 事例1. 硫化水素(還元性硫黄)による腐食事例と対策; 温泉地域で機械室内 の接点障害の事例について、接点抵抗の時間変化の実験では、接点材料銀(Ag)を使用した場合の、初期状態は接触抵抗が10-2Ωであったものが、6カ月後に徐々に抵抗が上昇し、13カ月後には抵抗値が102Ωと高くなった。
硫化水素濃度の時間変化について、外気と機械室のH2S濃度と時間経過の変化をプロットした結果、外気の変化とほぼ同じように機械室内濃度が変化し、最大で70ppbのH2Sとなっていた。
ガス濃度による屋内大気腐食性分類(ISA S71.04-1985)によれば銅の屋内大気のH2Sの腐食速度で最も厳しいレベルはガス濃度 GX(Severe):≧50ppbvとされていて、対策前のH2S濃度が70ppbとなっていた。これに対して対策として脱硫装置の設置と換気の抑制によって外気のH2S濃度が10ppmを超えても機械室内の濃度は2ppb以内で推移することが確認でき、機械室大気をISA S71.04におけるG1(mild)レベルに改善できた。
? 事例2、非温泉地域での銀導体パターンの腐食事例; 田園地域にあって海岸から15km離れた、非温泉地域での銀導体パターンの腐食が起こった。周辺に腐食性ガスの発生源のない通信機械室の交換機のパッケージ故障が稼働開始から1〜2年半で複数発生した。故障の発生部位はパッケージボードのオンボード電源部のAg‐Pt導体パターンが腐食によって断線した。
断線した箇所を走査型電子顕微鏡で観察した結果、制御IC端子のはんだ部とカバーガラスの間に腐食生成物が発生してい
た。セラミックス基板表面のAg‐Ptの導体が腐食生成物によって断線していた。コーティング樹脂、シリコーン、ポリウレタン、
エポキシのH2O、O2,H2Sのガス透過性はシリコーン樹脂が最も透過係数が高かった。パッケージボードには防食のためシリ
コーン樹脂が塗布されていたが、物理的なバリアにはならないと考えられた。
  故障は導体パターン(Ag‐Pt合金)の断線であり、腐食生成物を調査した結果、硫化銀が原因であった。機械室内の大気に含まれる硫化水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析した結果、検出限界未満(0.1 ppb未満)であった。しかし、ガスクロマトグラムには硫化カルボニル及び二硫化炭素のピークが検出されており、導体パターンの硫化
はそれらの硫黄系ガスが関与しているものと考えられた。硫化カルボニルによる銀の硫化は硫化水素に匹敵すること、
また二硫化炭素による銀の硫化能力は低いことが報告されていることから、原因物質として硫化カルボニルと特定し
た。本事例に対しては、導体パターン材料をAg-Pd合金に変更することで対処できた。
? 事例3. 温泉地域でのチップ抵抗の腐食事例; ユーザビル内の機械室に設置しているVDSL装置で発生した。当該ビルの地下には温泉施設(硫黄泉)があり、その施設の排気(H2Sを含む蒸気)が機械室に流入している状況であった。故障したパッケージを新品に交換しても3か月で再発した。外観から見てチップ抵抗の外観には何らの変化もなかったため、腐食起因の故障と判明するまでに時間を要する事例であった。チップ抵抗の寸法は3ミリメートル×2ミリメートルで、その中に酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗体が使われ、その中に添加されている銀が腐食していたためと分かった。機械室内の硫化水素濃度は1 ppmを超える場合もあり、非常に厳しい腐食環境であった。
ユーザビルという事情もあり、脱硫装置の設置は、装置の保守費がユーザー負担になるなど問題があり、チップ抵抗素子の高耐食化は仕様変更に時間がかかるため短時間の対策で現実的でないため、硫化水素濃度の低い場所に移設するという環境改善を対策として実施した。
? 事例4. 非温泉地域でのプリント基板の腐食事例; 水産加工会社に設置したビジネスホン及び主装置が、設置後2年以内に主装置4台とビジネスホンが故障した。主装置の設置場所は海岸エリア(港)である。このプリント基板の故障は、当初は塩害、エレクトロケミカルマイグレーション、あるいは絶縁不良が原因と予想されたが、プリント基板の観察の結果、基板腐食部を定性分析した結果、腐食生成物は銅、硫黄、酸素からなる化合物であった。
ビア部で典型的な硫化物クリープの形態をとっていた。硫化水素濃度計による事務所等の濃度測定の結果、ppbレベルの硫化水素濃度であることが判明した。この硫化水素は水産加工工場の排水中の有機物と硫酸イオンが硫酸塩還元バクテリアの作用で還元されて生成したものと考えられる。故障の発生したプリント基板はいわゆる金メッキは施しておらず、金属表面に基材の腐食生成物(硫化物)がはい出て広がる現象である。銅配線の上には薄い有機コーティング(プリフラックス、OSP)を施してあるものであった。
  ビア部表面及び断面の硫化物クリープの起点は何処か、SEM-EDSによって分析した結果、ビア表面は有機コーティングの欠陥からの硫化クリープが起きていて、ビア内部のコーティング端からの硫化物クリープの発生はなかった。
対策としては、水産加工工場であり、発生源防止の対策は困難のため、プリント基板の仕様を変更し耐食性の良い他社製品に置き換えた。
? まとめ ;4つの硫害事例を紹介した
・ 対策として、[1]環境改善(脱硫措置の設置、低濃度場所への移設) [2]材料の改善(高耐食化、別仕様の製品)
・ コーティングによる防食も有効、ただしメーカー保証が得られないという難しい問題がある
7.  部会案合、他 ; 山崎 宏 評議員、
8.  部会長報告: 代理新井田有慶 副部会長
9.  理事会報告及び国際委員会報告: 小林経明 理事、国際委員会委員長
10. 報告事項
(1)倫理委員会 (報告:中山佳則 委員)
(2)総務委員会 (報告:新井田有慶 委員)
(3)研修委員会 (報告:後藤 明 委員)
(4)広報委員会 (報告:田中和明委員)
(5)CPD支援委員会(報告:野坂恵介 委員)
(6)技術士活性化委員会(報告:濱田賢祐 委員)
(7)科学技術振興支援委員会(報告:神藤典一委員長)
10.その他
  本日、初めて部会に参加された以下の3名の方が、自己紹介をされました。[1]向原史典氏(向原技術士事
務所)、[2]山崎一正氏(日本金属(株)).

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