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金属部会

2008年(H20)1月から6月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2008年1月23日

新年会(18:00〜20:30)
場所:ニューオータニイン東京(JR大崎駅)
*次第(司会; 神戸評議員)
 1.ソプラノ独唱(加藤江美女史)で開会(題目; 1月1日)
 2.金属部会物故者(平成19年は3名(牧野昇、岡崎正男、藤井政夫の各氏))に黙祷
  (アメーシ゜ンググレース; ピアノ演奏 法領田れい子女史 )
 3.開会のことば(清水部会長)
 4.来賓ご挨拶
  1)高橋修会長(清水部会長代読)
  2)吉田克己副会長
  3)岩熊まき副会長
  4)竹下功専務理事
  5)西村文夫常務理事
 5.乾杯(吉武名誉金属部会長)
 6.歓談、出席者の自己紹介・近況・抱負
 7.音楽(加藤江美女史、法領田れい子女史及び全員参加)
 8.閉会のことば及び三本締め(奥村幹事)

参加者による集合写真(拡大画像へのリンク)

参加者による集合写真

(画像クリックで拡大 190KB)

2008年2月20日

テーマ:マルテンサイト系肉盛金属の組織と性質
講 師:佐藤裕二紙(JFEスチール(株)東日本製鉄(千葉地区)設備部保全技術室 主任部員(課長))
(概要)
 講師は川崎製鉄(株)(現、JFEスチール(株))に入社後、千葉製鉄所に着任した。着任当時は、千葉製鉄所・西工場の建設時期に当たり、溶接技術を主体とした建設工事と設備部品の再生・補修工事に携わってきた。
 補修工事に携わる中で、破壊解析技術と材料・溶接技術改善を結びつけた改良保全技術に取り組むようになった。これにより、業務課題の対象範囲を設備の保全技術の範囲から転炉炉体設備のオンライン補修技術の開発や製鉄プロセスロール用合金の開発、熱延・冷延コイル連続生産工程におけるシーム溶接法・レーザ溶接法の開発に至るまで、製鉄所で必要とされる金属材料・溶接技術のほとんどに関与することになった。
 平成10年には「金属部門」で合金設計を専門事項として技術士試験に合格し、同年、技術士会に入会し、金属部会で破壊解析技術と実用金属の開発について講演している。
 近年は肉盛溶接金属の組織と性質・性能に関する因果関係の本質解明に系統的・継続的に力を注ぎ、さらに、製鉄設備の全社的長期未解決課題に対して破壊解析に現品固有の腐食化学的解明の手法を取り入れ、SCCの化学反応理論の確立に取組んでいる。
 今回の講演は前述の技術活動のうち、製鉄プロセスロールに多く適用されている13Crマルテンサイト系肉盛金属のフェライト(δ)・マルテンサイト(α‘)・オーステナイト(γ)の相比率が使用中に必要とされる耐熱き裂性と耐水蒸気酸化性に及ぼす影響について述べている。
 供試材には低炭素13CrにNi無添加、2および4mass%添加とした合金をサブマージアーク溶接バンド法で創製したものを用いた。これらの金属組織観察の結果、はδ+α‘、α‘、α‘+γとなりシェフラーの組織図による推定と異なることが分かった。
 物理的性質において、γ量の増加によって熱伝導率が低下し、線膨脹係数と縦弾性係数は上昇する。機械的性質のうちα‘単相の2mass%Niが最大強度を示し、最小伸び・絞りを示す。
 これらの特性値を基に熱き裂試験結果を解析すると「耐熱き裂性は耐力と熱伝導率の積に比例し、線膨脹係数に反比例する。」ことを表す回帰式に高い相関を示した。
 水蒸気酸化増量は試験中の金属相比率に相関し、「500℃においては、γ/δ+α‘+γ比率に逆相関し、600℃、700℃では正相関する。」との知見を得た。
 これらの基礎的知見に基づき、新たな合金の組織制御に取組んでおり、微細マルテンサイトを示す開発合金は耐熱き裂性・耐水蒸気酸化性の複合性能を有する合金として実証試験に入っている。

2008年3月19日

テーマ:住友金属鉱山のHPAL/MCLE法による低品位ニッケル酸化鉱の新湿式精錬法」
講 師:土田直行氏(住友金属鉱山(株) 執行役員 Ph,D、海外プロジェクト推進室室長)
(概要)
1.はじめに
 住友金属鉱山(株)では、資源化が困難であった、低品位ニッケル酸化鉱から、高純度電気ニッケルを生産する技術の開発に取り組んできた。この結果、住友金属鉱山独自のニッケル生産技術を開発し、2004年にフィリピンパラワン島に低品位ニッケル酸化鉱の処理工場を建設し、2005年からニッケル生産を開始した。
2.住友HPAL/MCLEプロセス
 低品位ニッケル酸化鉱処理を目的とする、鉱石の高圧硫酸浸出(HPAL)、ニッケル・コバルト混合硫化物での金属回収、混合硫化物の塩素浸出・電解採取法による新製錬法を、住友金属鉱山が開発。フィリピンパラワン島にニッケル・コバルト混合硫化物を生産するHPAL工場を建設した。この混合硫化物は、新居浜ニッケル工場の塩素浸出・電解採取(MCLE)設備で処理して、99.99 %純度の電気ニッケルを生産する。
3.コーラルベイニッケルプロジェクト
 ニッケル原料は硫化鉱と酸化鉱に大別され、その存在量は硫化鉱で62百万トン、酸化鉱で140百万トンとなっている。一方で、現在生産されているニッケルは、その70%が硫化鉱を原料としている。鉱量として豊富な酸化鉱の活用は充分とは言えない。さらに酸化鉱の中でも、Ni2%以上の鉱石が、フェロニッケル原料として利用されてきた。すなわち、ニッケル含有量1%程度の低品位酸化鉱のニッケル資源としての利用は限られていた。
 フィリピン、パラワン島のリオツバニッケル鉱山は過去25年の操業で、低品位酸化ニッケル鉱石を積み上げ、その量は22百万トンに達していた。2001年に住友金属鉱山では、このストックパイルされた鉱石(平均ニッケル品位1.26%)を処理するための工場建設の経済評価を実施。独自開発の新技術による、低品ニッケル酸化鉱の処理工場の建設を決定した。工場の設計に当たっては、徹底した地域環境調査を行い、安全性、環境保全を最優先した。これらの結果をもとに、住民説明会を繰り返し、工場建設に対する地元住民の了解を得て、2002年にはフィリピン政府の環境適合証明が得られた。その後、2003年初めには現地工事を開始し、2004年9月には試運転に入った。
4.コミッショニング
 工場のコミッショニングに先立ち、現地フィリピン人従業員は新居浜のニッケル工場にて、約1年間の研修を実施した。これらの従業員と日本人約30名で、工場の立ち上げ準備に入り、2005年4月には商業生産を開始した。その後、徐々に生産量を伸ばし、11月にはほぼ設計値の生産量を達成、2006年3月には設計値を越える生産量が達成された。また、2007年はニッケル生産量1万トンを超え、通年での設計能力を達成した。
5.まとめ
 住友金属鉱山が従来困難とされてきた、HPALプロジェクトを円滑に立ち上げた。この結果、低品位酸化鉱の資源化が実現し、ニッケル製錬に新しい時代を築き上げた。

2008年4月16日

講演会及び第一次・第二次技術士試験合格歓迎会
場所:ニューオータニイン東京「ももきりの間」
1.講演会
テーマ:溶接・接合技術者として体験した失敗例と成功例について
    〜SAMUSUNGにおける「外国人技術者専門家招聘Seminar」の講演から〜
講 師:中村隆彌氏(NIKKO CSS総括部長)
(概要)
 2007年11月27日SAMSUNG 技術研究所にて外国人技術専門家招請Seminarで講演した内容の紹介とその後の感想も含め話された。金属部門技術士試験合格者歓迎会の一環でもあり、溶接法の種類と主な溶接法の原理は間単にスライドで紹介「モノづくりは、美しく、誇りある、すばらしい仕事」であることをコンセプトとして話された。
(1)失敗例
 N無線端局鉄骨(Hmax=115.4m最大板厚70mm)の現場溶接に開発適用したNOW-HB法(Narrow Gap Automatic CO2 Arc Weaving Horizontal Position Welding Process)について、狭開先溶接法の特許、技術的困難さ及びタンデム超音波探傷法について説明し、実験室と現場の環境条件の違いに対するきめ細かい分析とフォローおよび粘り強い開発が十分でなかったことで標準化(一般化)に失敗した例を紹介した。
 「1パルス1溶滴移行」が制御可能となった現時点の溶接電源を使い大手JVが開発適用した、全天候型ビル自動施工システムと併用するなら、NOW-HB法の適用も可能性があると考えられる。
 また、超高層Gビル鉄骨と超高層モード学園コクーンタワー鉄骨の例から、CO2半自動溶接の適用が現在は主流であり、建築用ロボットの開発状況と次世代技術開発について触れるとともに、2004.4.経済産業省「技術戦略マップ2007」ロボット分野の導入シナリオについての説明があった。
(2)成功例
 溶融亜鉛めっきによる鋼の液体金属脆化(LME)について、めっき割れ事例と疲労亀裂の例を紹介した。その解決例として、UHV鉄塔(百万ボルト送電鉄塔)用に開発されたHT590鋼(TMCP鋼)に対し、半円スチフナー先端すみ肉溶接、まわし溶接「トウ部」に適用当初は微少な溶融亜鉛めっき割れが検出された。そこで、亜鉛めっき割れ発生の特性要因分析を行い、ビード形状(フランク角θと先端直ρ)と半円リング形状(α)に注目し、再現試験用の実物大規模の実験と防止対策の実験により原因を検討した。その結果、半円リング先端の「ソフトトウ化」とビード形状の管理(θ、ρ;1円玉を利用したコイン管理)によりめっき割れ防止策を確立した。現在UHV鉄塔は完成し、美しい姿で50万ボルトから100万ボルトへ昇圧の時期を待っているとのことである。
(3)感 想
 韓国SAMSUNGでの講演前に各所を見学した。大学創立600周年記念会館「成均館大 国際館建築現場」では、工程管理と安全管理(1984.9〜1985.5.沖縄石川火力発電所で経験した現場と比較して)が徹底されていたことに、鉄骨工場「YUNG HWA ENG 唐津工場」では”Year 2010、The No.1 the world in Structural Steel Field!”の意欲に、そして「’07 Raemian Style Housing Sphere 見学」では近未来の電子技術を駆使した住環境を再現して展示された、その規模の大きさと進歩性に多いに感心された。SAMSUNG講演会場の聴講者一人一人にディプレイがある立派なプレゼンルームで、日本のJVにも在籍されたことのある優秀な通訳のお陰で、無事に講演を終えることができた。
(4)まとめ
 2025年にはロボット化が進み工場とモノづくりが変化すると予測されるが、人間はよりクリエイテブな方向へ向かい、製品のアイデアそのものは、人間が生みだすものであり「モノづくりは、美しく、誇りある、素晴らしい人間の仕事」であることには変りがない。ナポレオン・ヒルの「信念」を紹介「・・・・強い人が勝つとは限らない。すばしこい人が勝つとは限らない。私はできる、そう考えている人が結局勝つのだ。」と書かれている。

2.歓迎会(内容は省略)
 司会:部会長 清水 進
 1)開会の挨拶:理事 山崎 宏
 2)ご祝辞
  ・NPO法人科学技術倫理フォーラム代表 杉本泰治様(化学部門)
  ・(有)SYSBRAINS 代表取締役 橋本義平様(情報工学)
  ・日本技術士会常務理事 西村文夫様
 3)新合格者の喜びの言葉
   岩崎克博様:JFE技研(株)エネルギー環境システム研究部主任研究員
沖森麻佑巳様:(株)日鐵テクノリサーチ 取締役 (技術担当)
木藤茂様:福田金属箔粉工業(株) 金属粉製造部 ファインパウダー製造課 課長
佐々木巌様:(株)安川電機 技術開発本部 開発研究所 つくば研究所 技術担当係長(博士、学術)
中原紀彦様:横浜ゴム(株) 平塚製造所 スポーツ事業部 スポーツ技術部 技術グループ 主幹
藤田善宏様:(株)東芝 電力システム社 京浜事業所 溶接センター (工学博士)
吉川光昭様:住重試験検査(株) 横須賀事業所 応用技術部 材料・環境Gテクニカルアドバイザ
 4)会食
 5)出席者全員から一言:お祝いと励ましの言葉をいただきました。
 6)中締めの言葉:評議員 神戸良雄

2008年5月21日

テーマ:水素エネルギーと水素吸蔵合金について
講 師:岩瀬健二氏((独)産業技術総合研究所 エネルギー技術部門 水素エネルギーG 特別研究員)
(講演内容)
 講師は、日本重化学工業(株)において高容量の水素吸蔵合金の研究開発をスタートした。Ti系bcc固溶体合金の水素吸蔵・放出特性と構造に関する研究において博士(工学)を取得後、産業技術総合研究所エネルギー技術研究部門水素エネルギーGrで基礎研究に従事。20年4月1日、茨城大学フロンティア応用原子科学センターに異動し、中性子散乱を利用した材料研究に従事している。J-PARC(大強度陽子加速器計画)が現在東海村に建設中で、茨城県として茨城大学が建設、維持管理を行う設備の立ち上げ中であり、2008年5月25日、First Beamの受け入れ直前の時期のあわただしい中、ホットな情報を含めご講演を戴きました。
 地球温暖化の懸念からCO2の排出削減が各国に求められ、1997年京都議定書が締結された。近年、石油の代替エネルギーとしてCO2を排出しない水素エネルギーの利用が積極的に展開されている。
[1].水素エネルギーは二次エネルギーの中で唯一、燃料電池などによって電力と容易に相互互換することが可能である。日本では水素エネルギーを燃料電池自動車に利用する実証研究を行っていて、水素供給のための水素ステーション等を実使用条件に近い状態で設置している。代表例として「有明水素ステーション」「相模原水素ステーション」「愛地球博水素ステーション」「大阪水素ステーション」などで、原料の供給法や蓄ガス、充填の仕方など異なる方式で水素貯蔵・移動媒体等の技術的な検討を行っている例を紹介された。
 燃料電池自動車はガソリン自動車に比べ総合効率が高いが、ガソリンハイブリッド車よりも低い。燃料電池車をハイブリッド車にすることで更に総合効率を良くする研究が行われている。そこで問題になるのが水素の貯蔵技術で、自動車内に収めるため体積と重量の小さい貯蔵法が必要である。ガス圧を上げると体積は小さくできる。現在35MPa、70MPaが開発されているが、圧縮圧力を2倍にすると、タンクの厚みが2倍、コストも2倍になる。しかし、圧縮ガスの圧縮係数が理想気体と「ずれ」を生じて、実質的に貯蔵量は30%増にしかならない。こうした対策として、水素吸蔵合金と高圧ガスのハイブリッドタンクが検討されている。トヨタは35MPaタンク内に水素吸蔵合金(Ti-Cr-Mn合金)を入れて、4本のタンク(外容積180L)で高圧ガス(35MPa)に較べ2.5倍、高圧ガス(70MPa)に較べ1.7倍の結果をだしている。
[2].水素貯蔵合金の実用化は1990年、ニッケル水素電池として実用化され、2007年には1,236億円、2.8億個売り上げ、ハイブリッドカー用バッテリー(Ni-MH電池)の売り上げは2006年に37万8千台、8,000万個である。
 水素貯蔵用の材料は高容量化の開発によって燃料電池の実用化や普及を目指す方向と、基礎研究、構造解析、格子欠陥、拡散、界面など吸蔵・放出の過程を研究する方向があり、講師は後者の基礎研究を目指している。
 例えば、水素化反応の発熱・吸熱の繰り返しによって吸蔵合金が体積膨張、収縮の繰り返しの歪みを受け、割れが生じたり、微粉化する。動画にてLaNi5の吸蔵によって粉末化する例を紹介された。水素の占有位置が結晶構造「fcc」「bcc」「hcp」によってどの位置を占めるか、水素吸蔵・放出の特性を圧力・組成等温曲線(PCT曲線)によって確認することができる。
 こうした金属系の水素貯蔵材料の基礎研究、水素吸蔵機構の基本原理の解明をするための機器はNMR,電子顕微鏡,陽電子寿命測定、元素分析、熱分析などあるが、中でも中性子による粉末回折法は水素の吸蔵・放出の過程での結晶構造の変化、水素占有位置、格子定数、原子間距離などが正確に解析できる。こうした計測機器によって金属原子中の、結晶構造のどのサイトに水素が占有しているかを調べるにはX線回折よりも中性子回折の核散乱でみると良くわかる。X線の散乱長は原子番号に依存するが、中性子散乱長は原子番号に依存しないので同位体でも中性子散乱長が異なるからである。こうした測定をしている「In-situ XRD machine」、「PCT測定装置」を紹介された。
[3].J-PARCについて
 現在東海村に建設されているJ-PARC(大強度陽子加速器計画)での完成予想図及び物質生命科学実験棟の説明、茨城県として材料構造解析装置(iMATERIA)、生命物質構造解析装置(iBIX)の建設維持管理を茨城大学で行うことになっていることなど紹介し、これらの装置を使った事例で動植物の透過写真や非破壊で自動車用キャブレーターの観察結果などと、容器の中にあるコーヒーが沸騰する様子や水中を砂が拡散する様子などの反応状態を動画で紹介された。茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)の基本は粉末中性子回折装置であるが短時間測定が可能である。結晶構造解析や、ナノ構造解析、局所解析など複合して検討が可能な装置で、特殊環境パンクの活用により、引張り試験機、超高圧セル、超高温電気炉等の設置も可能で、集合組織の測定も可能になる。ただ検出器の設備は高価で車一台分に相当する。今後、産業界に広く利用できる粉末中性子回折装置が必要である。

2008年6月21日

テーマ:特許の世界に飛び込んで−話題提供
講 師:池ノ谷秀行氏(池ノ谷技術士事務所)
(概要)
(1)講演者は1991年3月に大学院を終了し、三菱マテリアル株式会社に入社、非鉄材料、主として、銅及び銅合金の鋳造、一次加工分野の開発や生産管理の業務に携わってこられ、端子やリードフレーム等の素材となる銅合金鋳塊の鋳造や加工熱処理、プリント配線板等の銅メッキ用アノードの加工等を中心に活躍されてきました。2006年4月に「金属材料」で技術士試験に合格、登録。2007年3月に前三菱マテリアル株式会社を退職し、現在は、今後、特許・知的財産分野の業務に携わっていくべく、勉強中とのことです。
(2)本講演では、近年「戦略的な活用」が求められており、関心が高まっている「知的財産」に関して、話題提供ということで、特許出願の実情を中心に紹介した。
[1].特許制度について
 近代特許制度は、中世ベニスで誕生し、イギリスで発展したといわれている。また、日本の特許制度は、明治18年に公布された「専売特許条例」に始まり、昭和34年に現在の特許法が制定され、その後の改正を経て現在に至っている。
 その特許法の目的は、発明の保護と利用のバランスを図り、発明を奨励し、産業の発達を図ることである(特許法第1条)。
 一方、いわゆる知的財産とは、知的創造物(発明、考案、意匠、著作物他)、商品・役務の表示(商標、商号他)、技術上又は営業上の情報(営業秘密他)が含まれる広い概念である。
[2].特許出願の現状
 現在、国内の特許出願件数は年間約40万件の高い水準で推移している。また、審査請求件数が審査請求期間の変更の影響により急増し、現在、審査順番待ちの件数が増大しているが、順番待ち期間短縮のための取組みが行われている。
 分野別では、車両や電気・電子といった日本企業の得意分野での出願数が多くなっている。最近は、ナノテクノロジー、バイオ、環境といった先端分野の出願も各国で増えている。
 また、世界的な経済のグローバル化に伴い、特許協力条約に基づく国際特許出願(PCT出願)も増大している。そのうち日本のPCT出願件数は、第2位を維持しており、日本の企業活動のグローバル化を示している。そして、日米欧の出願でPCT出願全体の87%以上を占めるが、近年は、韓国や中国の出願も増加している。
 各国を比較すると、米国及び欧州では外国人による出願比率がほぼ半数を占めているのに対し、日本及び韓国では約8割が国内からの出願という出願構造の違いも見られる。
 そして、このようなグローバル化の状況にあって、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現(知的財産基本法第1条)する必要性と、関連して知的創造サイクルという考えが提唱されているが、その内容を簡単に紹介した。
 なお、本講演にあたり、特許庁より公表されている、特許行政年次報告書2007年版、知財戦略事例集等の資料を参考にしたが、講演内容は、個人の見解・責任に基づくものであり、特許庁他の公的見解を述べたものではない。

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