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金属部会

2007年(H19)7月から12月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2007年7月18日

テーマ:パネル部品を主体とした最近の自動車用薄鋼板の開発動向
講 師:細谷佳弘氏(JFEスチール(株)スチール研究所 主席研究員)
(講師紹介)
 講師は1977年に東北大学大学院修士課程終了後、日本鋼管(現JFEスチール)に入社。爾来30年、自動車用薄板鋼板およびその製造プロセス開発に関する研究に従事。その間、1990年に東北大より学位を取得。1994年に金属部門“鉄鋼生産システム”で技術士第二次試験に合格・技術士登録。2006年日本技術士会に入会。
(概要)
 本日の講演は鉄鋼協会会報「ふぇらむ」並びに自動車技術会材料フォーラム講演の内容をベースに紹介する。
 多種多様な薄板鋼板の中で、自動車のボディーパネルに用いられる1mm未満の薄鋼板は、自動車のデザイン性、外観品質、特に形状性や塗装鮮映性、質感などに加えて、パネル本来が具備すべき耐食性、耐凹み性、耐ベコつき性などに対する要求レベルが高いため、海外ミルの追従が困難な高級鋼材の代表例と言える。
 自動車用薄鋼板の高強度化・薄肉化は、車体軽量化に有効な手段であるが、構造・骨格部品などに1000MPa級以上の超高強度板が使用されるようになったのとは対照的に、ボディーパネルに関しては [1].形状性確保の観点からの成型限界、[2].材料特性向上の物理的限界、[3].板厚に支配される剛性の限界から、270MPa級の軟質鋼板が使用される部品も少なくない.。
 ボディーパネルに成形される鋼板に求められる特性は、成形時の降伏強度は低く塗装焼付け後のパネルの降伏強度は高い、張出し成形性や深絞り成形性が良好である、成形後に面ひずみが残らない事などである。
 外板パネルは成形ひずみ量が小さいため加工硬化が然程期待できない。塗装後の焼付け工程でのひずみ時効硬化による降伏強度上昇によって凹み難さを改善している。蓋物パネル用薄鋼板はたわみ難さ、凹み難さの性能向上が課題である。現状使われている340MPa級BH鋼板の形状凍結性を維持しつつ更なる高強度化を図る狙いから、r値がほぼ1.0で面内等方性であり、かつ340MPa級BH鋼板と同等のYS(σ0)と440 MPa級のTSを持つ材料が開発された。合金化溶融亜鉛めっきを施した(440LYR-BH)と340MPa級BH鋼とをドアパネルで比較した結果は顕著な耐凹み難さ(耐デタント性)の改善が認められた。
 ボディーパネルの防錆では、概観、端面、穴明き腐食に対する寿命が重要である。亜鉛めっき鋼板は、めっき層による成形性の劣化や成形時の型との摺動に伴うめっきの剥離、剥離粉などが意匠面の問題として顕在化する。この対策として、めっき層中のFe%の管理や潤滑皮膜処理などが施された。その結果、日本の自動車メーカーでは合金化溶融亜鉛めっき鋼板へ集約されてきた。
 今後の展望として、成形法では液圧潤滑を利用した円筒絞り成形やシートハイドロホーミングによる逆圧を掛ける成形法などが開発されている。最近の素材価格高騰に伴い、自動車用材料としてのアルミの位置付けは低下傾向にある。むしろ、スチールをベースとした軽量化、ルーフレールをパイプにするなど薄くて剛性のある構造設計、テーラーブランクやテーラーウエルドチューブなどの適用が検討されている。更に、車体構造の最適化や信頼性向上の観点から、部品の溶接技術が重要である。こうした要求に応えられる鋼板開発がこれからも期待されている。

2007年9月19日

テーマ:ガス浸炭から真空浸炭へ−その現状と問題点
講 師:山方三郎氏(山方技術士事務所)
(講師紹介)
 講師は昭和43年秋田大学鉱山学部冶金学科を卒業後、オリエンタルエンヂニアリング(株)に入社、昭和62年取締役加工技術部部長、平成9年代表取締役副社長、翌年、社長に就任、平成16年会長そして平成18年に退任し、山方技術士事務所を開設、その間、熱処理設備の販売や熱処理加工の技術開発に関り、ガス軟窒化、窒素ベースガス浸炭、P−CVD、真空浸炭、低歪超振動焼入れ法などの開発及び開発関与。
(概要)
 鋼材を沢山使用する自動車産業において環境、振動問題の解決策の一つとして歪のσ値を小さく一定にすることや摩擦係数を小さくすることなどが要望され、その対策に材料の高強度化、浸炭による性能向上が求められている。
 浸炭技術は昭和29年ごろアメリカから導入されて以来、固体浸炭→液体浸炭→ガス浸炭→プラズマ浸炭→真空浸炭と進歩してきた。固体浸炭は作業環境が悪く、シアンを使う液体浸炭は環境問題から姿を消し、ガス浸炭が多く使用されているが、その方式はいくつかあり、オリエンタルエンヂニアリングが開発した滴注方式はCO濃度が33%で、変成炉方式の24%に比べ高い。浸炭速度論によりCO+CO2ガス濃度は50%までは炭素移行係数が向上することがわかっている。こうしたことから、さらに高CO濃度浸炭法「URX」が開発されている。また、プラズマ浸炭はカーボンをイオン化して浸炭する方式であり、真空浸炭では従来の機構とは異なるプロセスで難しい条件があり、あまり広まってはいない現状にある。
 ガス浸炭方式では品質管理上、製品が炉から出るまでその良否が判断できないことが問題であり、炉内のガスの濃度をリアルタイムで計測する技術が必要になった。温度ファクターとCO2測定の仕方を赤外線吸収スペクトルの測定で制御できるようになり、安定製品ができるようになったが、常温で計測するため実際の炉内とは、ずれが生じる。雰囲気中のフリーの酸素を、酸素センサーを利用して、熱伝対とおなじ場所に設置して、炭素のポテンシャルを測定、コンピューター制御により全自動で操作する装置などが開発された。作業者はボタンを押すだけで製品が出来上がるので、技術の中身が理解できないなどの問題がある。
 高濃度浸炭技術では炭素濃度が3.4%の粒状炭化物を作り、硬さが従来の62−63HRCが67HRCとなりCr2.5%にVが添加されたMAC‐14など表面層は1,000Hvの硬さとなり、焼き戻し温度に上げても硬さの軟化は小さい。
 ガス浸炭は安定した雰囲気制御によってばらつきも少なく、光輝処理ができ自動化が可能である。しかし粒界酸化が起こり、エネルギー消費型でCO2も排出され爆発の危険性がある。しかし、装置開発が進み3Kと呼ばれた職場が、今は白衣とスリッパで作業できる環境になり、日本では20,000〜30,000台が実用化されている。
 真空浸炭装置は各社が製造している。真空浸炭の特色は微細穴内面の浸炭ができ、高濃度浸炭も可能で、ステンレスや高合金鋼に浸炭が可能となり粒界酸化も殆んどない。省エネでCO2発生が少ないなどに加えて、高温短時間操業ができ、変成炉が不要などの特色を有する。しかし真空浸炭は部品形状によってエッジ部に炭化物が多くなり、脆くなるなどのほか、ガス浸炭のような、雰囲気の制御が確立されてなく浸炭課程の対応ができないなど品質保証上の制約がある。そして材料の表面積が変化すると処理条件が変わることやなど、まだ幾つかの課題が残されている。今のところ多くのメーカーはパルス制御と処理パターンとの組み合わせでおこなっているが、オリエンタルエンヂニリングはガスの熱伝導度の違いを利用して水素濃度を測定制御するセンサーを開発している。今後はこれらの雰囲気測定とパルス制御、パターン化等の組み合わせで安定した処理が進められると期待している。

2007年10月17日

テーマ:非調質クランク材料の開発について
講 師:田原 譲氏(本田技研工業(株) 品質改革センター 技術主幹)
(講師紹介)
 講師は大学卒業後、非破壊検査の会社に5年勤務し、1979年に(株)本田技術研究所に入社、約20年間、二輪車の材料開発に携わってきた。2000年から汎用機器開発部門で材料開発、その後、品質改革部で市場問題対応を担当し現在に至っている。日本技術士会(金属部会)には本年4月に入会した。
(概要)
 本開発は自動車メーカー単独ではできない材料開発の範囲があり、(株)住友金属工業小倉との共同研究で開発したものである。二輪車や四輪車のエンジンとは異なり、汎用機器に搭載される小型エンジンのクランクシャフトは強度と同時に高い靭性が求められる。こうした汎用エンジンの用途は25シーシー〜650ccの小型エンジン、インダストリアルとして発電機、動力噴霧、コンシューマでは耕運機、芝刈り機、運搬機、マリーン用では船外機、コジェネの家庭用ユニットなどに使われるクランクシャフトが対象である。中でも芝刈り機はベルトなどの緩衝機構を介していない機種は、ブレード部が縁石などに当たると、大きな衝撃荷重を直接クランクシャフトで受けるため高い強度や靭性が必要である。クランクシャフトの耐摩耗性、疲労強度の向上には、ピン部、ジャーナル部を高周波焼入れするため、材料としてはS45C等の構造用炭素鋼を使用し、熱間鍛造後に調質処理によって靭性を付与している。こうした汎用エンジンのコストダウンと環境負荷物質を削減する目的でクランクシャフトの熱処理を廃止して、快削性を高める添加元素の鉛を使用しない材料開発を検討した。
 一般には非調質材はフェライト−パーライト組織であり、ソルバイト組織の調質材に比べ靭性的に  は不利といわれている。そのことに加え、汎用エンジン用クランクシャフトには特に高い靭性が求められ、靭性確保は大きな課題である。一方、環境負荷物質の削減は昨今、ヨーロッパを始め地球的規模で規制強化の気運であり、製造業者として早急な対応が求められ、こうした環境対応と合わせクランクシャフトのコストダウンを達成する技術的手段として、新規合金設計と鍛造条件の最適化を図った。
 一般にフェライト-パーライト鋼の場合硬さ、引張り強さ、高周波焼入れ部の硬さは、炭素量に比例し、靭性には反比例する。新規合金開発では靭性を得るため、まずクリティカルな元素である炭素を高周波焼入れ部の硬さを満足できる最低限度の0.33%まで減らした。これによる強度の低下はフェライトを固溶強化するSiを増やし、析出強化するVを微量添加、Mn、Crにより焼入れ性の向上を図ることで、S48C調質鋼と同等以上の強度を可能とした。また、靭性向上には組織を微細化するため、組織中にMnとSを増量し、MnS化合物の核を生成させ、粒内フェライト生成による組織の微細化によって靭性を確保した。切削加工性は鉛快削鋼中の鉛の代わりに、MnSがその効果を発揮した。そして、熱間鍛造時の組織の粗大化を防止するため、従来の条件である1,250℃での鍛造を1,200〜1,150℃の範囲まで下げて再結晶や粒成長を防ぎ、衝撃値を高める冷却速度は900〜500℃の間を50〜80℃/minにすることが適切であるとがわかった。こうした鍛造温度管理と鍛造後の冷却速度の制御により所望の結晶粒度を確保し、靭性を得ることができた。
 芝刈機のクランクシャフトに必要な衝撃値はJIS3号試験片でシャルピー衝撃試験と実体衝撃試験を行い、要件を満たす結果を得た。その他の機械的性質、硬さ、引張り強さ、疲労強度、降伏点なども従来材と同等の結果を得た。焼入れ性及び切削性も比較した材料と同等またはそれ以上の良好な結果であった。これらの個々の技術は既存の技術であるが汎用エンジンクランクシャフト用という特殊な領域においては、新しい位置づけであり当初の目的を達成し、現在量産適用に至っている。

2007年11月21日

テーマ:ステンレス鋼の微生物腐食と隙間腐食
講 師:篠田修和氏(JFEスチール(株) 東日本製鉄設備部保全技術室)
(講師紹介)
 講師は平成6年4月に鋼管計測(株)(平成17年10月合併によりJFEテクノリサーチ(株))に入社。入社以来、耐高温腐食鋼の評価、化学プラント、建築設備、土木設備などのトラブルシューティング、腐食・防食に関する電気化学試験に従事してきた。平成19年3月 技術士登録し現在に至っている。
(概要)
 河川、湖沼、海洋設備や水処理設備などで、装置のメンテナンスフリー化のため、近年、ステンレス鋼が採用されている。一方、ステンレス鋼には、環境中にClが存在すると、すきま腐食を起こすといった弱点があり、装置、設備の早期の損傷につながる。本講演においては、ステンレス鋼のすきま腐食についての電気化学的理解、ステンレス鋼の腐食におよぼす微生物の役割について紹介する。
 ステンレス鋼の局部腐食は、自然浸漬電位と孔食電位、腐食再不動態化電位を比較することにより、腐食発生の判定が可能である。ここでいう自然浸漬電位とは対象とする金属と参照電極(基準電極)の電位差である。ステンレス鋼の場合は中性、酸化剤が溶存酸素のみの場合、時間とともに電位は上昇するが0.1V程度までである。酸化剤として過酸化水素や残留塩素などが添加されたり、pHが低下すると電位は高くなる。
 一般にステンレス鋼をアノード分極すると、始めに不動態皮膜ができ耐食性が高まるが、電位がある程度上昇すると、孔食の萌芽が起こる。卑な電位では、その孔食が再不動態化するが、さらに電位が上昇すると、孔食が修復されず、安定的に成長を始める。この臨界電位を孔食電位と称している。
 腐食すきま再不動態化電位は、動電位法および定電流法により、安定的に成長できるすきま腐食をつくり、その後、ステップ法でカソード方向に掃引したときに、アノード方向の電流の上昇傾向が見られなくなった電位と定義される。この電位以上では、すきま腐食は再発する可能性がある。こうした、孔食電位及び腐食すきま再不動態化電位は、それぞれ、孔食の発生する臨界電位、すきま腐食の発生する臨界電位については、それぞれJISに規格化されている。
 腐食発生については温度にも依存するが、孔食電位とCl− 濃度の関係でみると「電位とCl−濃度」は負の相関関係にある。「孔食電位 < 自然浸漬電位」の条件で孔食は発生する。酸化剤が入ると、電位が上昇し、孔食の発生する臨界Cl-濃度が低下する。ちなみにある種の微生物は、ステンレス鋼の自然浸漬電位を貴化させる作用がある。一例であるが電位が微生物なしのときは−0.1〜+0.1Vであったものが、微生物があると+0.2V〜+0.5V(vs.SSE)と電位が上昇するという実験結果があり、電位を貴化させる微生物種としては、従属栄養細菌、鉄酸化細菌、マンガン酸化細菌などの説があり、現在も研究が進められている。
 実験室的にステンレス鋼の微生物腐食を再現することは困難であるが、酵素を添加したり、大型生物を共存させることにより再現することが出来る。例えば、酵素法、輸送海水法、単離細菌法(SRB)などがる。この中で、京浜運河から採水した自然海水を用いて輸送海水法により、実験室におけるステンレス鋼の電位貴化の再現実験を実施した。 [1].水槽海水には大型生物を入れ、[2].輸送海水には自然海水で微生物があるもの、[3].人工海水では微生物が無いものを、SUS316LとSAF2507の2種類の材料を対象に25℃で比較実験をした。時間1400Hrまでの結果で、SUS316L鋼の場合は人工海水の電位が0.2V〜0.3Vに対して、大型生物のある水槽海水では0.5V〜0.6V と高い電位になった。
 再現実験の応用例では、海水プラントで、生物の付着を防止するため塩素を注入することがあり、その残留塩素は適度に添加するとステンレス鋼の電位貴化を阻止できるが、その塩素が過度に添加されるとステンレス鋼の電位は貴化し、すきま腐食を誘発する危険性がある。
 実際に使用されている排水処理設備では、曝気処理以降のプロセスで微生物腐食が生じる事例もあり、こうしたケースでは現地におけるSUSタンク、SUS配管の電位を、参照電極として現地測定用の銀/塩化銀電極(SSE)を使い計測し、電位測定や微生物検査などで判定している。
 こうしたステンレス鋼の微生物対策には有効な方法が無いのが現状である。従ってコストがかさむが、高級材料例えば、ハステロイなどへの変更、そして樹脂材料への変更では温度、強度、紫外線劣化などの問題があり、それ以外の対策として塩素による殺菌、電気防食などが試みられている。ステンレス鋼の微生物腐食は諸説があり、方法も各種、定説はまだ無い。微生物腐食の判定は、現地での電位測定などにより可能であるが、その防食方法はまだ確立されていないのが現状である。

2007年11月29日

見学会
見学先:(独)物質・材料研究機構(NIMS紹介 広報室長 兵藤様)
講演1:構造材料の未来を拓くものつくり力「創製力と解析力、そして好奇心」
講 師:津崎兼彰氏(新構造材料研究センター長)
講演2:革新的溶接部材創製のための溶接技術
講 師:平岡和雄氏(新構造材料センター 溶接グループリーダー)
見学
 1.<組織制御棟玄関展示室>新構造材料野研究
 2.大出力CO2レーザー溶接関連設備
 3.高窒素ステンレス鋼創製設備等見学
 4.軽量構造材料(マグネシューム合金等)関連設備見学
 5.NIMSハイブリッドワイヤでのMIGアーク溶接設備
 6.クリープ試験関連設備

参加者による集合写真(拡大画像へのリンク)

参加者による集合写真

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2007年12月19日

幹事会
場所:ニューオータニイン東京 「ももきりの間」
議事:
 1.平成20年度の活動及び公益法人化に関しての意見交換
 2.来年度の見学会について
 3.その他(部会長会議など)

幹事集合写真(拡大画像へのリンク)

幹事集合写真

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