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金属部会

2007年(H19)1月から6月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2007年1月24日

新年会
場所:ニューオータニイン東京(JR大崎駅) ももきりの間(4階)
出席者(敬称略):
ご来賓:都丸徳治会長、竹下功専務理事、畠山正樹常務理事、ソプラノ歌手加藤江美女史、ピヤニスト法領田れい子女史
化学部会 :北本達治部会長、植村勝評議員、
金属部会 :吉武名誉会長(五十音順、順敬称略)池ノ谷、小川、太田、大山、奥村、神戸、海崎、小林、笹口、齋藤、神藤、清水、田中、中村、萩野、平野、細谷、松田、森、山方、、山本、山道、山崎、渡辺
 以上 合計32名
(概要)
二期会加藤江美女史のソプラノ歌唱に続きまして、昨年の物故者2名(福山 嵩氏、宮嶋信雄氏)に黙祷を捧げた後に、懇親会が開催された。部会長の開会のあいさつに続きまして来賓のご挨拶を戴きました。
 都丸徳治会長のご挨拶;昨年から技術士の皆様に企業内に閉じこもるのではなく、自ら外に出て幅広く活躍をするようにと呼びかけてきた。勿論、文部科学省もこちらから働きかけリードしなければ、なかなか動かないので、こちら側に引き込む必要がある。金属部門も人数は少ないが金属を通じ世の中に貢献するため積極的に前に進むことが重要性であると述べられた。
 竹下功専務理事のご挨拶;会長が積極的に行動していこうとの号令から、支部や部会が活発になってきている。また金属部会からは色々な委員会に参加、協力してもらっている。試験問題審査に皆様のご協力と事務局が頑張ったお陰で、本年は第一次、第二次技術士試験の出題に間違いがなかった。しかし、受験者数が昨年度に比べ大幅に減少していて、大きな問題である。如何に受験者を増やすかが重要な課題であり、皆様のご協力をお願いしたい。
 畠山正樹常務理事のご挨拶;毎年見学会に参加していますが、昨年秋の金属部会、化学部会共催の新日鐵の見学会に参加、大変愉しかった。日本技術士会にとって受験者の減少は、大きな問題であり、皆様の出身企業や関連する方々に受験をするよう呼びかけて欲しいとの要請がありました。そして、昨年残念ながら亡くなられました、高城様の奥様から鹿児島の芋焼酎をご送付戴きましたので、ご賞味下さいとのお話がありました。
 吉武進也名誉金属部会長から、関東大地震、阪神淡路の震災も亥年で、富士山の噴火も亥年だそうで防災の年であるほか、株価は、戦前戦後の亥年は全部上がり、また、アメリカの大統領選挙の前年は景気が良いので、2007年が皆様とっても良い年でありますことを祈念し、乾杯の音頭をとられ、続いて、懇親、会食がはじまった。
 会食をしながら例年の通り、加藤女史の歌声と法領田女史の伴奏により歌が始まり、続いて都丸会長と加藤女史のデュエットなどそれぞれ自慢の歌を披露し、遠路、福井市から今年もご出席された海崎様が加藤女史と一緒にご自身で用意した曲を歌われた。
 ここで恒例の出席者の近況報告に移り、各自の現状や趣味、今年度の抱負・決意表明または、それぞれの率直な考えなど思い思いのお話が披露され大変に盛り上がった新年会となった。
 神戸副会長の本日の出席のお礼と、来年の金属部会新年会への出席依頼を含めて、閉会の挨拶があった。
最後は奥村評議員の(社)日本技術士会と金属部会の発展と出席者の健康を祈念して、力強い3本締めの、音頭により全員の手拍子により新年会を締めた。

ご挨拶の様子(拡大画像へのリンク)

ご挨拶の様子

(画像クリックで拡大 48KB)

2007年2月21日

テーマ:技術士第二次試験 試験方法の改正について
講 師:笹口裕昭氏(日揮株式会社)
(概要)
*2000年の法改正のポイント(現行試験方法の理解と再確認):
 技術士試験が一次と二次の2段階の選抜になり、JABEEとの連携によりJABEE認定教育課程修了者は一次試験が免除される。技術者倫理は一次試験の「適正科目」に追加、二次試験では口答の試問によって試験される。またCPD(継続研鑽)は技術士法の「第47条の2、“技術士の資質向上の責務”」に追加され、CPDのWEB登録制度が実施され、CPD認定会員制度もスタートした。
 また総合監理部門が創設され、[1].5つの総合管理技術[2].リスクマネージメント[3].国際化の動向[4]倫理観[5]プロフェッショナル、が求められている。
 二次試験の方法は筆記試験回答の文字数の軽減がなされた。二次試験の筆記文字数は、I−1:4,000字→3,600字、I−2:4,800→3,600字、II−2:3,200字→1,800となり、五肢択一問題が追加された。尚、一次試験は大幅に改正された。

*2006年改正のポイント(2007年度からの試験方法の変更点):
(1) 二次試験の試験方法が大きく改正された。
[1].筆記試験から経験論文が廃止された。理由は暗記が可能である、受験者の負担軽減という理由である。この経験論文は筆記試験合格者に後から論文を(字数3,000字以内)提出させて口頭試験で技術的体験を確認する。
[2].二次試験から択一問題が廃止となる。一次試験との重複を避けるためである。一般専門知識は記述式の試験で確認できる。選択科目の課題は一般専門知識を問う問題が専門知識と応用能力を問う問題になる。解答時間は現行よりはるかに余裕が出る。口頭試験も30分から45分と長くなる。
[3].二次試験のI−1「選択科目」に関する専門知識と応用能力が配点50点、記述式で3,600字、3時間30分で、II−1の「技術部門」全般にわたる理論的考察力と課題解決能力は配点50点で、記述式3,600字、2時間30分となった。
(2) 口頭試験の試問は、次のようになる。
[1].技術的経験を中心にした経歴の内容と応用
[2].必須科目および選択科目に関する専門知識および見識
[3].技術士としての適格正および一般知識、中でも技術士倫理と技術士制度の認識

*総合技術監理:
 Iの選択科目は20部門にI―1及びII−1と同じで、技術士資格を有するものは免除。
 IIの必須科目は現行の「総合監理部門」に関する専門知識、技術的体験および応用能力が「総合監理部門」に関する課題解決能力および応用能力となり、II−1五肢択一式で配点は50点、2時間、II−2は記述式で3,000字、配点が50点、3時間30分である。

*平成19年度の試験実施への課題:
 20部門における設問の整合化、特に選択科目の「応用能力」を問う設問方法や必須科目の「理論的考察力」と「課題解決能力」を問う設問方法および口答試験の体験論文の設問方法と採点方法など多くの課題がある。
 また、第一次試験専門科目(五肢択一問題)の充実化や体験論文が合格後に出題され、提出する方式になるため模範解答などが氾濫し、形骸化する恐れがある、との指摘をされた。

2007年3月22日

テーマ:自動車メーカーでの技術士金属部門の仕事(仮題)
講 師:新川雅彦氏(株式会社本田技術研究所 栃木研究所)
(講師紹介)
 講師は大阪大学大学院材料物性工学科終了、1996年大同特殊鋼(株)に入社、技術開発研究所で塑性加工に関わる業務に従事し、2003年に(株)本田技研に転職、車体用の材料開発と商品開発を行っている。
(概要)
 温暖化などで現在自動車に求められるものが、スピード、安全、安さ、ステータスに加えて燃非、個性が求められ、維持費や税金が安いことや先進的なイメージから、ハイブリッド、ディーゼルが求められている。一方、個性では小さくても高級感があり家族に優しい、アウトドア/シティ派など個人の好みで選択されつつある。
 自動車の販売台数はアジアでは平均して増加、南米でも最近増加傾向であるが、日本は飽和状態である。
 燃費に関しては日本が世界で一番良い(平均15Km/l)。生産拠点が世界でアジア、EU、北米、南米の4極で鉄鋼メーカーも対応している。アジアでの生産は関税の関係から、品質に問題があっても現地調達せざるを得ない。日本ではすぐれた材料や製造ノウハウがあり、造り難いものも図面品質より良いものができる。海外では材料も同じものがなく図面通りの品質ができない。
 例えば現地調達での問題として、鋳造ボルトは塑性変形組織まで気にしているのに、鋳巣があるとか、左右対称の部品をプレス加工で作るが、左右で異なる形状になっている。溶接が原因と疑ったが、プレス型の固定の不備であった。また、ロットごとに形状、めっきの色が違う部品が納入される。理由は他社製品をもってくるようである。
 他社が使用していても本田は自社の品質基準を厳格に適用しているので使用できない。
 自動車のリデュー、リユース:企業は新車を販売したいが、増加している。対応策は燃費の向上や複数部品の一体化、軽自動車、パーソナルカーにシフトするなどである。排気量/車重量(シーシー/Kg)=約1が最適値とされている。
 中古市場は下落気味で、海外アジア、ロシアなどに売られている。
 自動車リサイクル法により分解し易い設計や材料の明記が求められ、「Honndaグリーン購買ガイドライン」に基づく購買をしている。EUではすでに分解し易く、材料名は刻印で表示しているが、日本ではまだである。
 また、グリーンファクトリーを目指して、工場排出物を「ゼロ」エミッションにしようと考えている。
 自動車の寿命は北米では15年保証をしている。特にさびは寒冷地での融雪剤の問題、疲労強度では貨車に固定し長時間移動ですることで振動や衝撃により、足回りの破損や疲労強度が問題になる。
 鉄鋼材料の腐食は塗装で処理し、エンジンは耐熱鋼や足回りは合金鋼板に置き換わった。アルミは一次つかわれたが価格が高騰し使えなくなっている(一部に使用)。車体強度はピラー部や中柱の強度と車体外周部のビームの剛性を高め、フレームで衝突の安全性を確保している。
 自動車メーカーでの環境問題に対する優先度は低い。局所的な環境問題も全世界に影響してしまう現在、これまで以上に調和の取れた発展が重要であると考えている。

2007年4月18日

金属部会 技術士法制定50周年記念事業の討論会 並びに 第一次、第二次合格者歓迎会
I.討論会(14:00〜17:00)
テーマ:技術士制度の評価とそのあり方
場 所:ニューオータニイン東京(大崎駅前)
出席者:大山、奥村、神戸、小林、笹口、佐藤、齋藤、神藤、清水、芝崎、高田、中村、中山、荻野、平野、細谷(陽)、細谷(佳)、松田、森、山道、山崎、吉武、渡辺、柳澤(新合格者)、岩崎(新合格者)、田原(新合格者) 以上26名(敬称略)
書記担当;神藤、中村

配布試料;
(1)技術士制度に関するアンケート結果
(2)技術士法の変遷及び公的業務参入について
(3)話題提供「技術者倫理について」及び技術士の活用について並びに企業内技術士について

司会進行(推進実行委員長 奥村貞雄)
*開会の挨拶(副会長 神戸良雄)
 全国の金属部門会員は、約300名、その内、関東地方に150名余、例会の出席者は毎回30名程度。今日の出席者は26名で、新合格者も3名参加されている。法律の変更は大変であるが、これを機会に活発な議論を行いながら、金属部会員の親密度を高め、意義のある提案をしていきたい。

*アンケートの集計結果の報告(部会長 清水 進)
 アンケート配布数215人に対して、回答数46人で、回答率21.4%と少ないが、独立技術士52%、企業内技術士等が48%で、回答バランスとしては均衡の取れたものであった。年齢は、企業内技術士が50代を中心に、独立技術士は60代、70代で構成されている。内容をさらにまとめて見ると次の通りである。
1.取得の動機、認知度、満足度から企業内の地位向上、定年後の活用に期待が大きく、独立準備には「名称だけでは不満」の傾向が見られた。
2.実務、実益のある「業務開拓」「業務独占」等を企業内技術士、独立技術士ともに望んでいる。
3.活用の場を作るために技術士による「独自の機関」の設立、「技術士活用センター」の組織化など、金属に関する業務の斡旋等活躍の機会を増やすべきとの要望が多い。
4.法改正し「業務独占」を実現し、金属部門技術士の中立性を生かした、「社会貢献などの活躍」の場を作るべきである。

*パネルディスカッション(5テーマ)
1.技術士法について(幹事 笹口裕昭)
 技術士法の制定・改定の経緯について、月刊「技術士」2007.03号と石井弓夫著「インフラのデザイナー」を参考に説明した。技術士法の欠陥として、名称独占のみで独占的業務を付与していないこと、技術士の職務範囲が未確立であることとしている。このことが、技術士の地位を低く抑えている根本原因であり、この解決こそ技術士にとっての長年の課題である。
 技術士会は総力を挙げて、この問題の解決に取り組むべきである。
2.技術者倫理について(幹事 細谷陽三)
 技術士はプロフェション宣言に則り、CEからPEに転換し、専門技術の向上、情報開示、説明責任を図り、人材育成に努めるため若手技術者の育成、修習技術者の指導等を行い、国際社会の信頼を得るための海外技術支援、人材育成協力(APECエンジニア他)に尽力するべきであるとした。
3.公的業務参入について(幹事 中村隆彌)
 スイスのハイブリッド構造の美しい人道橋とカペル橋(木造橋)を対比させて、我々技術士はカフカの老人ではなく、時代のフロントランナーでなくてはならないとした。そして各国の技術者資格を比較しながら、技術士は、能動的に資質と能力を維持・向上しながら、技術士会による新資格の導入(技術判事、技術経営者)等を目指すべきとした。
4.技術士の活用について(幹事 齋藤雅彦)
 技術士の特権業務の取得活動について、技術士会30年史、50年史の記述から引用し、更に各省庁関係先に対する要望、検討依頼活動の実態にも触れた。その上で、更なる技術士の活用として、第三者検査機関(活用センター)の設立や企業の研究開発において、金属疲労や安全、PL,破損事故等の安全監査業務への活用、産学協同の各分野における支援活動への参画等を提案した。

5.企業内技術士について(幹事 中山佳則)
 企業内技術士交流会において、潜在的専門能力を基に、人的交流、相互啓発、情報交換を通して、異業種企業間の交流を図っていることについて説明。これによって、企業内の技術士が社会的ニーズを知るチャンスとしている。更に技術士資格を保有すること、且つ技術士としての倫理をわきまえて、技術的業務に精通することが、所属する企業内でも一目置かれる存在としての意識を持つようになる。これらのことが、関係会社の指導や日本の技術革新に貢献できるという自信につながっている。

●質疑応答および自由討論
1.プロフェッションの特徴について説明(奥村委員)
2.日本の技術士法と米国のPE法について説明(奥村委員)
3.JABEE認定(金属)の大学、課程は、現在7大学1高専で10コースが存在する。(奥村委員)
4.資格の分類について説明(奥村委員)
5.2020年問題について齋藤委員から説明

●パネルディスカッションのまとめ
 奥村推進実行委員長より金属部門における「技術士制度の評価とそのあり方」として下記の通り提案があった。
1.技術士法:技術士の職業的位置づけ、即ち、業務独占の付与は長年の課題→米国PE法との比較検討を含め、選任技術者の登録促進等、法改正の提言をする。
2.技術者倫理:プロフェッション宣言に則り、[1]専門技術の向上、情報開示、説明責任を図り、[2]人材育成に努め、[3]国際社会における信頼を得る。
3.公的業務参入:有資格者の認定枠の拡大に努力要→パブコメ対応が肝要。
4.技術士の活用:不十分→[1].業務開拓:内(活用センター組織化、第三者機関設立)、外(裁判・損保の鑑定、評価、判定、審査業務拡大、及び技術、教育指導)、[2].業務独占:選任技術者による金属材料の認定、許可、調査等。
5.企業内技術士:処遇不明確→プロフェッション宣言、JABEE制度の有効活用が必要。

II.第一次、二次合格者歓迎会(18:00〜20:30)
場所:ニューオータニイン東京(大崎駅前)
出席者:討論会出席会員(中山会員は討論のみ)に山方、山本会員と新合格者(篠田、柳澤、野坂、河村、渡邉、田原、竹島)以上31名(敬称略)
*式内容
 神戸副会長による開会の挨拶に始まり、吉武名誉部会長の乾杯で会食が始まり、宴半ば頃に新合格者の自己紹介、続いて出席会員の自己紹介があり、奥村評議委員の三本締めで、和気藹々の中で終了した。

2007年5月16日

テーマ:アルミニウムの特性と用途
講 師:佃 市三氏(昭和電工株式会社 技術開発部長)
(講師紹介)
 講師は1975年4月に昭和電工(株)に入社、アルミニウム事業部門、押出品事業部配属され、1978.5に技術研究所、1996.2に圧延品事業部、2000.5に技術企画室、2003.3に技術センター技術開発部長の現職に至っています。その間、アルミニウム合金の特性向上のため、合金開発や用途開発など幅広い研究や開発を体験されてきました。
(概要)
 アルミニウムの市場は2000年以降から安定成長に移行しているが、価格はこれまで200円/Kg 前後であったが、現在はその2倍400円/Kg近く高騰している。原料は豊富であるが、急激な需要に供給が追いつかない状況である。
 アルミニウムは成形性が良く、軽くて錆び難く、熱や電気の良導体である。この基本特性に機能的特性を付加するため、合金元素の添加、熱処理条件とプロセス技術により押し出し、アルマイト処理、薄板成形、強度、耐食性、切削性、鍛造性、エッチング性などによって、建材、自動車、車両、船舶、熱交換器、電解コンデンサー、缶材など幅広い分野における市場の創出をしてきた。
 アルミニウムの特性向上と用途開発の具体例として、ここでは主としてアルミニウムに合金元素の添加と組織制御による、各種の特性向上を図り、用途に適した材料開発、用途開発の事例を紹介する。
[1].電子部品に欠かせない電解コンデンサーはセラミックスやタンタルに較べアルミニウムは小型化がネックで、小さくて容量を向上させるには表面積を大きくする必要がる。高純度アルミニウム(99.99%)の(100)方位を100%近くまで制御し、Fe,Si系析出物を圧延加工度と冷却制御により、表面積を高め高静電容量エッチング箔を開発した。
[2].車両材としては鉄に比べ高い。省エネ、軽量化材料として特徴がある。コストダウンは溶接工数の削減で、複雑形状の押出や薄板用にはAl-Mg-Si系合金により不溶性化合物を制御し、焼入れ感受性を抑え、熱間押出時の冷却で焼入可能な複雑中空形状など、車両材やプラズマディスプレーパネルに適応できる高強度、高熱伝導材の開発ができた。
[3].鍛造用材料のAi-Si系合金は耐摩耗性材料として優れているが、Si粒子径が大きくないと耐摩耗性が向上しないが向上しない。このため切削工具の磨耗が大きい。これにNiを添加、Al-Si-Ni合金は切削性が大幅に改善され、耐摩耗性がありピストンなどに使われている。また、表面側の組織を微細化することによって鍛造性が向上、据え込み割れが改善される。
[4].切削用材料の改善について、永久に工具の磨耗しない材料はできないかとの要望があり、微量添加を見直し切削性向上を図った。微量成分によって金属間化合物が形成されるが中でもTiB2は著しく工具磨耗を助長する。
 この元素の含有量を低減することにより、工具磨耗しない材料が開発できた。
[5].超精密切削で作る感光ドラム基体や磁気ディスクなどの材料は表面状態、形状、硬質層の3拍子が必要である。金属間化合物が存在すると部分的に切削割れが生じる。99.99%Alでは表面が加工により再結晶する。これにMgを2.5〜4%添加することで表面組織の変質層が無く、優れた感光ドラムが製品化できた。
[6].精密な管の加工法には切削、絞り、後方押出、押出後カーリングあるいは絞りなどがある。高強度でしごき加工性の良好な材料は微細結晶粒子のAl-Mn系、3003合金が優れている。
 今後のアルミニウムの開発方向は環境・省エネ・省資源などの観点から、強度・耐食性向上および成形・接合・防食技術開発による自動車の軽量化、異種材料との複合化・ナノ組織制御による高機能材料の開発、アルミニウム材料の高効率生産プロセス技術開発が進展いくと考えられる。

2007年6月20日

テーマ:材料評価試験における産学官の連携
講 師:小古賀正樹氏(株式会社 明電舎)
(講師紹介)
 講師は1979年に武蔵工業大学大学院博士課程を修了し、工学博士学位を取得。1980年に(株)明電舎に入社、総合研究所、本社エネルギー事業本部、太田工場に勤務し、昨年9月末に退社。その間、鉄鋼材料の腐食疲労研究や重電機器、水晶応用デバイスの材料開発などのほか、材料関連技術者の育成やNEDO出向で新エネルギー関連の業務に従事。また、会社勤務の傍ら琉球大学、熊本大学の地域共同研究センター客員教授(非常勤)を歴任し、現在も産官学連携のコーディネーターを続けている。7月には小賀技術士事務所設立予定である。

〔産学官の材料試験技術への関わり〕
 バブル崩壊後の産業構造や“ものづくり”の環境変化に伴い、この数年 産学官に求められる社会的役割も大きく様変わりしている。
 “産”は試験機のメーカーとユーザーに分類される。ともに利益を追求するための組織ではあるが、近年 企業としての社会的責任(製造物責任、地域環境保全等)や地域・社会貢献も厳しく問われるようになってきた。
 “学”は国立大学法人化に象徴されるように、自主独立経営に向け、従来からの教育・学術研究のみでなく、研究成果の外部移転や地域貢献も強く求められている。
 “官”は国と地方自治体の研究機関に大別される。前者では独立行政法人化に象徴されるように、自主独立経営に向け、従来の基礎研究主体から 実用化研究、新規事業の創製(含. 外部技術移転)への展開が、後者では従来のような地域企業への技術支援・指導のみでなく、地域ベンチャーの育成・支援、新規産業・技術の導入支援等による地域活性化や新規雇用の創出も求められている。

〔日本材料試験技術協会での産学官連携によるワーキング活性化提案〕
 材料評価技術は、性能、コスト、信頼性等を考慮した“着実なものづくり”や材料開発を行う上で、必須の基本技術であり、産学官共通の行動対象として、[1].試験・評価技術の開発、[2].“新分野”の試験機開発、[3].成果発表、製品紹介(シンポジウム、展示会)、[4].啓蒙・普及活動(講習会、技術指導)があり、“新分野”の対象材料として、微小部材(含. 極薄板、極細線、ナノテク材)、複合材料(含. 多層薄膜積層材、異材接合部材)等が、試験環境として、常温の大気中のみでなく、極限環境下(温度、圧力、腐食環境)での外部負荷との重畳作用等が必要になる。
 講演者はこの数年、地方シンポジウム(沖縄、熊本)での地域交流会や協会誌特集号の企画、日本試験機工業会や異業種交流会テクノブリッジとの協力関係強化等で、産学官の連携をベースに協会活動の活性化に取り組んでいる。

〔まとめ〕
 材料評価は“着実なものづくり”の必修の基本技術である。産学官が互いにその関わり方の違いをよく理解した上で連携体制を構築、協力して課題解決に取り組めば、より大きな成果を効率よく生み出すことが期待できる。試験・評価技術や試験機の開発と併せ、得られたデータベースを共同で多数蓄積することで、JIS、ISO等への新たな試験規格提案においても発言力を高めることができる。

このページのお問い合わせ:金属部会

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