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金属部会

2005年(H17)1月から6月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2005年1月19日

新年会
場所:ニューオータニイン東京 ももきりの間(4階)
・出席者(敬称略)
 来賓 清野茂次会長、小針輝夫副会長、竹下功専務、畠山正樹常務、加藤江美女史、法領田れい子女史
 建設部会(堀川浩甫氏)、化学部会(植村勝氏、北本達治氏)
 金属部会(吉武名誉会長以下21名)
 以上 合計30名
・次第
1.ソプラノ歌唱(加藤江美女史)
2.物故者への黙祷
3.開会の言葉(神戸良雄部会長)
4.挨拶(清野茂次会長、小針輝夫副会長、竹下功専務理事、畠山正樹常務理事)
5.乾杯(吉武進也名誉金属部会長)
6.歓談および念頭の抱負・近況報告(出席者全員)
7.閉会のことば(奥村貞雄理事)
8.音楽(加藤江美女史、法領田れい子女史)

2005年2月16日

テーマ:高分子電気絶縁材料の屋外への適用
講 師:浦辺修一氏(東光電気(株))
(概要)
 講演者の勤務する東光電気(株)は東電の関連会社で、6,000V関係の配電機器の製造・販売をしている会社で、講演者は商品開発研究所所長をされている。
 講演は、エポキシ樹脂を絶縁材料として使用する樹脂モールド電気機器について行われた。樹脂モールドは、導電部の封止やコイル含浸、機械構造要素を兼用するもので、予め電気機能要素を組み込んだ金型に熱硬化性液状樹脂を注入し、硬化反応を経て一体成型するものである。エポキシ樹脂電気絶縁材料は、信頼性、コスト面で工業的メリットが高く多くの実績があるが、従来、屋内使用に限定されていた。屋外での使用では、耐候性、耐トラッキング性に劣っていたが、コスト面や小型軽量化などメリットが多く潜在的需要があるので、屋外使用に耐えるエポキシ樹脂電気絶縁材料の開発を実施した結果について解説された。
 開発課題として4課題あり、耐候性、耐トラッキング性については、芳香族系から環状脂肪族系に替えて撥水性を付与し、耐サーマルショック性については材料線膨張係数の低減を目的として充填フィラーの検討を行い、耐エロージョン性については充填フィラーとマトリックス樹脂の接着性向上を目的としてフィラー表面改質の検討を実施した。環状脂肪族型エポキシ樹脂は、紫外線吸収官能基の存在が少なく、太陽光による劣化が少なくなり耐候性が向上する。また、熱分解でCO2、H2Oとなり気化する傾向が強く、炭化物を生成しにくく耐トラッキング性が良好になる。耐サーマルショック性については、高分子絶縁材料と金属導体の組合せで急激な温度変化があった場合、熱応力が発生しクラックが発生しやすくそのために絶縁不良が発生し、停電事故等が起こる。この防止のために、硬化発熱温度と樹脂膨張率の低減について検討し、溶融シリカ(アモルファスシリカ)を適正配合することで対応した。放電により絶縁材料の表面に発生しやすいエロージョンに対する耐エロージョン性の向上については、フィラー表面に反応性官能基を形成し、マトリックス樹脂とフィラーを共有結合させるエポキシシラン処理により、耐エロージョン性向上、機械強度向上させている。
 以上の各種対策を施した屋外用エポキシ樹脂の耐トラッキング性評価(回転輪浸漬法、噴霧室複合法)、耐候性評価(キセノンウエザーメータ試験、オゾン劣化試験、酸性雨試験)等の特性評価を実施し、電気的、機械的、熱的基本特性では実積の多いエビビス型エポキシと同等レベルであること、屋外に近い条件の複合塩霧室法では撥水性による漏れ電流低減効果が認められ、オゾン劣化・酸性雨試験では表面特性、耐トラツキング性共に変化なしとの結果が得られた。更に、劣化解析を実施した結果についても報告された。
 これらの開発成果として、屋外用エポキシ樹脂の実器への適用について説明があり、分割型CT、鉄道車輌搭載用EVTの試作、送電鉄塔特殊電源用機器、変電所電流計用機器への適用について解説された。

2005年3月16日

テーマ:極細線用荒引線製造法の適正化検討
講 師:池田大亮氏(特殊金属工業(株))
(概要)
 講演者が電線メーカーに勤務していた時に関与した極細線製造をターゲットとした荒引線の製造方法の開発について講演された。本講演の荒引線とは、銅の溶解、鋳造、圧延により製造され、極細線の伸線に供する素線で通常直径が8〜12mm程度の線材を言う。
 荒引線の製造方法としては、大規模、中規模、小規模等の規模別に各種の方式があるが、今回採用したのは、小規模生産方式での上方引抜鋳造方法(アップキャスト法)である。極細線の断線発生原因の大部分を占める原因は異物混入であり、線径の約1/3の大きさの異物が混入すると断線が発生し、異物混入源としては、鋳造・圧延時での混入が多くを占める。本研究では圧延なしの荒引線製造法としてアップキャスト法を採用したが、アップキャスト法は、伸線性(異物混入他)、コスト面等で優れており、また、量産設備では溝型誘導炉が良いため誘導加熱法を採用した。 溶鋼を2次側の1ターンとして使用し、二次側電流として16,000Aを通電して溶解する方法である。
 30ミクロン程度の極細線伸線時の断線では、絞り切れが多く、その対策として線材強度の向上を目標として鋳造組織の結晶粒微細化による強化を検討した。これは今回の検討では純銅をターゲットとしているため、固溶強化、析出硬化、複合化による強化、マルテンサイト変態硬化等の強化方法が採用できないためである。結晶微細化のために凝固速度の向上を図る方策として、冷却水量・流速の増加のために入排水管口径のアップ、冷却水の渦流化、鋳型熱伝導率向上のために鋳型ヘッド材質を黄銅からCr-Zn-Cu合金への変更、ノズル材質の変更、肉厚の薄肉化等を行い、鋳造後の結晶粒の微細化を図り、強度向上を達成した。その結果、大幅に伸線時の絞り切れを低減することに成功した。
 講演では、実験時のトラブル事例として低周波誘導炉のコイル溶損事故、Fe混入源の調査及び対策について説明された。原因は、コスト低減のために外国製の部材を使用したことによるトラブルであり、事前に良く調査して使用することの重要性が教訓として得られた。講演後、活発な質疑応答が行われた。

2005年4月20日

テーマ:鉄鋼の製造技術の進歩」
講 師:田中和明氏(新日本製鐵(株))
(概要)
 “今、鉄鋼に何が起こっているのだろうか”を副題に、現在の鉄鋼供給の品薄感、鉄鋼業再編問題、中国の鉄鋼生産、鉄鋼業の歴史、鉄鋼業における最新技術、及び講演者の鉄鋼に対する思い入れ等広範囲な面から鉄鋼について講演された。
 世界の鉄鋼の総生産量は、この数年増加の一途をたどり、2004年には10億トン超に達している。特に、中国の鉄鋼生産量の増加が著しく、次いで日本、米国の順で、年間1億トンを超えているのは中国、日本のみである。また、鉄鋼業の再編成が進んでいるものの、年間生産量は最大5千万トン程度で、群雄割拠の状態にある。
 中国鉄鋼業の躍進は、従来の製鉄所が軒並み生産量を増加させ、また多数のミニミルがそれぞれ生産量を増加させた総合結果である。その特徴はドイツに技術指導を受けているCSP設備の導入によるミニミルでの生産量を飛躍的に増大させていることである。講演者が現状調査のために訪問した内モンゴルのパオトウ製鉄所の状況が多数の写真を用いて詳細に報告された。
 西暦前5000年に鉄の時代が始まり、現在の鋼の時代に続いているが、原料面からは、鉄鉱石は地殻の1/3を占めており無尽蔵とも言え、質の良い石炭の入手が問題である。製鉄の歴史的な発展についても、日本での佐賀藩、韮山の反射炉を含めて詳細に解説された。
 鉄鋼技術の現状について、高炉技術、製鋼技術、自動車用鋼板、新プロセス技術、環境との調和等について取り上げられた。高炉技術は既に完成された技術であり、内部の状況の説明図、ファイバースコープでの観察結果等を説明された。更に、次世代コークス製造法「SCOPE21」、焼結鉱製造法、製鉄ダストスラッジの再利用等について触れられ、また製鋼技術とては、転炉による高清浄化、凝固技術、連続鋳造技術、製品技術としては、自動車用鋼板等について説明された。その後、現在、講演者が勤務している新日本製鐵株式会社君津製鉄所ツアーとして、製鉄所の航空写真による俯瞰写真も援用して、スライドで詳細に説明され、製鉄所の現状をより正確に理解することができた。
 次いで、講演者が手がけた都庁ビル、横浜ランドマークタワー用の鋼材に纏わる話題、技術士試験問題へ1日1題の挑戦、メルマガとして、「甲子夜話に学ぶ」を25年計画として掲載中等、また、鉄鋼技術者として鉄鋼関連の古典の収集、現代語への翻訳を実施しており、将来、「中国近代鉄鋼史」「新鉄鋼史」を執筆したいとの思いが披露された。
 講演後、中国への技術協力、技術内容、中国鉄鋼の品質の現状等について熱心、かつ活発な質疑応答が行われた。

2005年5月18日

テーマ:惑星航空機への道〜金星高温高圧大気圏における有人飛行性能と耐熱合金の関係〜」
講 師:園家研一郎氏((株)ニッケイ・トラスト)
(概要)
 講演者はロケット工学を中心とする宇宙工学を専攻されており、過去に同テーマのPart1の報告を技術士会で行っている。 1960~70年代にかけて米国のアポロ計画として月面に人間をおくり、地球に戻す有人飛行が行われたが、現在打ち上げられている衛星の殆どは宇宙にセンサーをあげて、地球再開発のために利用するものであり、宇宙開発を目的とする本来の意味での有人飛行はアポロ計画が唯一のものである。太陽系内の惑星のうち、最内殻の水星と最外殻の冥王星を除いた地球を含めて8つの惑星が大気圏を持っており、航空機として飛行が可能である。今回、有人飛行により太陽から2番目の惑星である金星をターゲットとした理論研究を実施した結果を報告する。
 金星の大気圏は、国立天文台のデータによると、金星地上の50~70kmは濃硫酸の雲の液滴で覆われており、ここは約1気圧である。 金星大気は二酸化炭素が約96%、窒素が残量から構成されており、金星表面は約490気圧、温度は約460度℃である。金星大気には酸素がないため、脱出時のエンジンとしては、非酸化燃焼型の推進剤を原子炉の等の加熱室で加熱し噴射して推力を発生する方式が有力である。金星の大気を吸入してタンクに貯蔵した後、その一部を加熱室に供給して噴射して推力を得る方法である。
 金星の重力は地球の0.9倍であり、金星からの脱出速度は約10km/秒台であり、この速度を得るためのエンジンの設計に関して、金星大気は二酸化炭素の分子量44で、燃焼室の圧力は12MPaで、噴射口圧力9MPaとして、加熱温度を1000~3000Kをパラメータとして噴射口密度を計算、更に推進剤の燃焼性能を示す特性速度C*及び推力係数CFを計算して有効排気速度(機体の推進のための推進剤の噴射口からの排気速度)を算出している。 推力は有効排気速度に燃焼室に流れる推進剤の量を乗じて求められる。
 金星飛行に使用する機体に適用する耐熱合金としては、レアメタルではレニウム(融点3,180℃)が有力な金属であるが地球上では極めて産出量が少ないものである。米国の雑誌に掲載されたデータによれば、宇宙の小惑星中のレアメタルの含有率が高く、これは有力な資源となるとの報告があり、ここでは地球誕生の46億年前の含有率を維持しており、ここから金属を採取できれば大量に入手できる可能性がある。
 金星に着陸するためのエンジンの設計では、金星の大気環境の変化が極めて大きいのでエンジンの効率面から、下層大気用と上層大気用と軌道上で待機する機体の3台のロケット機体を使用せざるを得ないのではと考えている。また、下層用のロケット機体は、重量面から金星大気からの脱出時に使い捨てにせざるを得ないと考えており、更に、詳細について計算を継続中である。
 講演後、宇宙での隕石に対する安全性、小惑星からの金属採取方法等活発な質疑応答が行われた。

2005年6月15日

テーマ:貴金属とその利用
講 師:清水進氏(清水技術士事務所)
(概要)
 講演者は貴金属メーカーで、生産・研究開発に永年携わっておられ、その経験から貴金属(ルテニウムRu、ロジウムRh、パラジウムPd、銀Ag、オスミウムOs、イリジウムTr、白金Pt、金Au)について、その用途、需要と供給、産出国、貴金属の性質等について詳細に解説された。
 講演に先立ち、今年の6/12付け朝日新聞記事を引用され、講演者がかって開発されたモルフォ蝶の発色機構の研究成果から開発され、帝人ファイバーで製品化された新しいモルフォテックスについて紹介があった。本開発については、金属部会で講演者により開発経緯等について報告されている。
 講演では、貴金属の供給と用途別需要の関係、純貴金属の主な性質、貴金属の主な用途例について鮮明かつ美麗な写真を多用されたパワーポイント資料を投影して詳細に説明された。
 金は、1トン中に約5gr程度以上あれば採算が取れると言われており、用途して日本で古くから知られているのは金閣寺野壁面の装飾としても使用された金箔であり、最終的には0.1ミクロン程度まで薄く延ばして使用している。その切り屑が酒等に入れられて高級感を醸している。金の用途は装飾用が主で78%を占めている。また、金は半導体製造時の金ボンディングワイヤとして使用されており、最近は、都市金山とも言われて、コンピュータ等に使用されている金が回収されている。
 銀は、金同様、展延製、加工性が良いが、大気中で硫化水素、亜硫酸ガスで硫化し変色する。用途としては、工業用、宝飾・銀器、写真様等に主に使用される。
 白金は、金、銀に次いで塑性加工性がよいが、切削性は非常に悪い。用途としては、排ガス処理のための自動車触媒が最も多く、宝飾用途がこれに次いでいる。また、坑癌性があり、大腸癌に効果のある薬剤が開発され、国内でも薬事法の認可が2005年4月に下りている。白金系材料が、燃料電池の電極触媒として使用されており、固体高分子型燃料電池のアノードに白金-ルテニウム、カソードには白金や白金-コバルトの超微粒子が使用されて、燃料電池の性能や寿命に大きく影響している。自動車触媒としては、セラミックスやメタルハニカム表面層のγアルミナに触媒を分散し、白金、パラジウムはHC、COの酸化、ロジエーウムはNOxの還元触媒として使用されている。パラジウムは、白金と同様に展延性、加工性が良く、用途としては、自動車触媒が約66%、電気電子関係、歯科治療用に使用されている。
 特に、貴金属の用途は多岐に亘っており、医療用(ベースメーカー電極、坑癌剤、歯科用材料等)、電子工業用(金ボンディングワイヤ、接合用はんだ・ろう、リードフレーム・コネクター、プリント基板、ハードディスク、サーマルプリンターヘッド等)、電気工業用(リレー、マイクロモーター接点、マルチブラシ)、新エネルギー関係(燃料電池)、環境関係(排ガス浄化触媒)、窯業用(ガラス溶解装置、ブッシング)、化学工業用(不溶性電極、白金網電極、繊維の紡糸口金、帯電防止用グスライニング)、その他放電電極、センサー、測温抵抗体、熱電対、「人工創成の次世代金属」としての金属ガラスの製造等にも及んでおり、貴金属が単に宝飾用途のみでないことが良く理解できた。
 講演後、生産量、銀の屋外用途、銀の硫化問題、燃料電池等に関する活発な質疑応答があった。

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