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金属部会

2004年(H16)7月から12月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2004年7月21日

テーマ:準オーステナイト系ステンレス鋼の時効割れ防止技術と評価技術
講 師:吉田義昭氏(東光電気(株))
(概要)
 電柱上の架空線用及び地中線用の配電機器(開閉器等)の外箱ケースは、超塩害地域・泉害地域での使用環境対策、及び温度上昇面から誘導電流の発生しない非磁性体であること、溶接性、耐腐食性からオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304L)の深絞り加工により製作されている。講演では準安定オーステナイト組織のステンレス鋼の絞り加工後の時効割れについて豊富な資料と長年の経験を交えて講演された。
 安定オーステナイト系ステンレス鋼では時効割れは発生せず、応力腐食割れのみが問題となるが、準安定オーステナイト系ステンレス鋼では時効割れが問題となる。
 時効割れは、時期われ、置き割れとも言われ、その特徴は絞り加工後に絞り方向に直線的に発生し、粒界、粒内に関係なく、ジクザクに割れが進行すること、絞り加工にのみ発生し、圧延・曲げ・切断では発生しないこと、60〜100℃で促進され、短時間で発生する場合もある事等である。
 時効割れの因子として、材料の化学成分、加工条件特にブランク形状、加工速度、金型材質、潤滑油、加工温度等に影響され、促進条件として、引張残留応力、Clイオンの存在、温度、加工誘起マルテンサイト等がある。時効割れに影響する要因である残留応力の測定法、プレス部品の加工誘起マルテンサイト変態について詳細に解説された。
 準安定オーステナイト系ステンレス鋼の成形について、円筒絞り、角筒絞り時の不具合現象について解説され、絞り加工の評価方法として、角絞り時の絞り加工品の各部の板厚、硬度、材質の変化について検討し、角筒絞りでは角隅部の硬度の高い部分に時効割れが発生する事を確認している。
 発生要因として、引張残留応力の発生量、加工誘起マルテンサイトの発生量、鋼中水素、Clイオン、時効促進温度等があり、引張残留応力及び加工誘起マルテンサイト変態量の予測により時効割れを予測することができる。
 講演後、時効割れ発生要因その他について熱心な討議が行われた。

2004年9月22日

テーマ:鉄鋼の標準化活動について
講 師:小林経明氏(日本鉄鋼連盟、小林技術士事務所)
(概要)
 講演者が現在勤務している(社)日本鉄鋼連盟・標準化センターの業務及びそこで講演者が担当している業務内容について詳細に報告された。
 (社)日本鉄鋼連盟は、”鉄鋼の健全な生産・流通・消費及び貿易を促進し、もってわが国経済の発展と国民生活の向上に寄与する”ことを目的としており、その業務の一つに”鉄鋼に関する標準化の推進”があげられている。標準化センターは1997年に設立され、それまで鉄鋼協会で実施されていた標準化業務を引き継ぎ、JIS及びISOの標準化を実施している。鉄鋼関連の30社からなる会員制組織で、主査7人がそれぞれの分科会で規格の作成を行っている。講演者は発足した1997年から勤務し、現在主査を務めている。
 標準化センターで取り扱っている内容は、構造用鋼、圧力容器、薄板、線材、鋼管、機械試験、非破壊試験、分析で、鉄鋼連盟担当のJISは273件、対応するISO規格は496件に達する。ISOのTC(テクニカルコミッティ)の国際幹事引受については、鉄鋼関係57TCのうち日本が幹事を引受けている8件中の5件を鉄鋼連盟が担当して活動している。
 規格化の世界の流れとして、WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する規定)で、国際貿易における不必要な障害にならないように各国は規格作成に当たってのガイドラインを基礎とすることが決められている。国家規格とISOとの整合性には、もっとも望ましいとされる完全一致型の他に、共存型、公約数型がある。鋼材規格においては、JISとISOの整合性は容易ではなく、その場合は併記方式で対応している。共存手法の例として、油井管、鋼板の寸法精度、圧力容器用鋼板の例で詳細に説明された。
 日本経済団体連合会では、戦略的な国際標準化の推進に関する提言(2004年1月)で、企業にとって国際標準化が事業戦略に重要な要素になること、官民一体となった国際標準化への取り組みが急務であることを提唱するなどきわめて重要な提言を行っている。
 講演後、ISOとの整合性、特許権との関係等について活発な討議が行われた。

2004年11月17日

テーマ:電磁気センサー式金属疲労損傷識別装置の開発
    −現場で使える簡易なハンディタイプの金属疲労モニタリング装置−
講 師:齋藤雅彦氏(齋藤技術士事務所)
(概要)
 講演者が、現在(株)マエダで開発し販売しているハンディタイプの金属疲労識別装置の開発経緯について講演された。本装置の原理は金属の疲労に伴う透磁率及び導電率の変化を利用して、電磁気的な方法により検出センサーの電圧変化で金属内部の微視的変化を測定評価するものである。原理としては、測定センサーのコイルへの入力電流による磁束により被検査部材に誘起される渦電流から発生する磁束で検出コイルを貫通する磁束が変化することを利用している。
 本研究は、中小企業総合事業団(現中小企業基盤整備機構)の補助金を得て、平成10〜13年に研究実施されたもので、本装置の開発に当たっては、横浜国大、神奈川県産業技術総合研究所、センサーメーカー、非破壊検査専門事業者、石油メーカー、自動車メーカー等の委員会を結成し各分野の専門家の指導を得て開発しており、産学官の連携事業の成果と言える。
 本装置では、疲労損傷識別結果をMFD値(電磁気代用特性値)としてデジタル表示しており、現場で簡易に測定が可能である。講演ではS45C及びSKD11材の平板型引張疲労試験片による疲労、60キロレールのレール表層の転動疲労、自動車用鍛造金型の鍛造回数と疲労損傷度等の適用例について詳細に解説された。疲労試験における疲労損傷度としては、破断時のMFD値を100%とした比率で表している。
 本装置は、多くの分野の企業の関心を呼び、金属疲労による亀裂発生前の損傷状態の検出を目的としてその有効性の確認検討が行われており、その経緯についても報告された。
 講演後、原理、応用例、測定のノウハウ、販売価格(ヒロミールMFD102Bは150万円程度)等について多くの質疑応答が行われ、出席者の関心の高さが伺われた。
(参考資料)
1.電磁気的非破壊検査法による金属疲労識別装置(検査技術2004.7)
2.金属疲労識別装置ヒロミールMFD102Bカタログ

2004年11月25日

見学会
見学先:神戸製鋼所真岡製造所、益子焼き見学及び窯業技術支援センター
1.益子焼き見学及び窯業技術支援センター見学
(概要)
 8:55定刻に鍛冶橋駐車場をハトばすで出発。首都高速、常磐自動車道を経由、友部JCTで降りて、県道1号線を益子町を目指す。車中で本見学会のアレンジを担当された宮木氏から、益子及び(株)神戸製鋼所について説明を伺った。益子では、創業140年の塚本製陶で製造工程(本日休業日)、登り窯(現在未使用)を見学し、塚本製陶の平成館で山の幸づくしの釜飯(益子焼き釜飯容器使用)を賞味した後、栃木県技術士会理事藤田亮一氏の案内で、栃木県産業支援センター「窯業技術支援センター」を見学した。本センターは、平成15年4月に名称変更したもので、益子、茂木地区他の530軒を越える製陶業者の技術支援事業(壊れにくい陶器の開発、釉薬の配合等)、又、後継者育成事業(年間10名受け入れ)等を実施している。VTR上映、展示室、小型の登り窯を見学後、(株)神戸製鋼所に向かった。

2.神戸製鋼所真岡工場概要及び工場・研究所見学
(概要)
 田中本部長から神戸製鋼所の概要説明及び「アルミ新世紀」VTR上映後、3班に別れてスラブ鋳造、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、矯正の各工程の見学、研究関連では、1,000Tプレスとフード等のプレス品の展示、アルミ缶の実演及び説明を伺った。
 アルミ・銅カンパニーは、鉄鋼・溶接カンパニーに次いで、2003年度連結決算で約2,400億円の売上高を記録しており、全社の約20%を占めている。本カンパニーは、真岡製造所、長府製造所、大安工場からなり、海外及び国内に関連会社を有している。
 工程は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、南米から輸入したアルミインゴット及びアルミリサイクル品を電気炉で溶融し、鋳造によりスラブ(28T)を作り、端部の鋸切断後、熱間粗圧延、熱間仕上圧延、冷間圧延、焼鈍、矯正を行っている。虫付着による歩留まり低下防止の観点から対策も取っており、QM100品質向上運動、ISO14001環境対応を展開しており、工程管理・安全管理に特別の配慮を払っている。
 年間33万Tの生産量の約60%はアルミ缶材料で、DI缶で30数%、ボトル缶で70%のシエアを占めている。その他、自動車パネル材、熱交換材、印刷用のPS板等を生産しており、アルミのディスク用基盤では世界の60-70%のシェアを占めている。

3.講演:自動車軽量化のためのアルミ化技術動向(野田研二氏)
(概要)
 国内外の自動車アルミ化動向として、その背景は車体の軽量化による燃費向上、CO2対応であり、アルミ合金の使用が有力である。国内及び海外の自動車メーカーのアルミパネル使用状況は、日本ではフードへの適用が多いが、海外では、フード以外にフエンダー等への適用も多い。今後、アルミの使用量は増加すると予想されている。
 自動車用アルミ板は、5000系、6000系が主体で、特に、6000系のアルミ板の場合は、塗装焼き付け時の温度上昇により強度が向上し、それだけ板厚を薄くできるメリットがある。
 アルミ成形時の課題として、鋼板に比較して局部伸びが低く局部変形能に劣ること、スプリングバックが大きいこと等の問題があり、アルミ材のヘム加工性の解析等も行われている。
 自動車のリサイクルでは、コストダウンとLCA向上に必須であり、自動車メーカーで発生するアルミプレス材の回収と再生、廃車からのアルミ材回収と再生が重要である。
 講演後、活発な質疑応答が行われ、本日の見学会を終了した。

2004年12月22日

テーマ:ITOターゲットと利用例
講 師:石塚慶一氏(元日鉱マテリアルズ(旧日本鉱業))
 講演者が、元勤務していた日本鉱業(株)開発センターで研究開発を実施したITOターゲツトについて、その原理、製造工程、ITO成膜技術、応用例、課題と対策等について詳細な報告が行われた。ITOは、Indium Tin Oxide(In2O3-5〜10%SnO2金属複合酸化物)の略称で、液晶デイスプレー、プラズマディスプレー等のフラツトパネルの透明電極膜として広く使用されている。
 インジウムは、柔らかい銀白色の金属で、世界の確認埋蔵量2,500Tと言われており、現在各国で盛んに探鉱が行われている。亜鉛鉱石からの副産物として回収され、北海道の豊羽鉱山が世界最大の鉱山で、年間75〜125T生産している。
 ITOの特性は、その透明性と導電性にあり、透明性については、可視光域で光透過性が良好であるが、紫外域、赤外域での透過性は低い特性がある。また、導電性は、5〜10%の酸化錫を混合することにより達成され、その電子状態によりもたらされている。透明導電膜を使用した例として、液晶テレビ、太陽電池、デジタルカメラ画面等多くの例がある。
 ITO透明導電膜は、液晶フラットパネルディスプレー製造に使用されているが、薄膜はITOターゲツトにアルゴン等の不活性の物質を高速で衝突させることにより、叩き出された原子・分子を付着させるスパッタ法で製作される。
 ITOターゲットの製造工程について、電解工程、焙焼工程、粉砕・造粒工程、プレス成形及び密度を均一且つ高密度とするために改良法としてのCIP(冷間等方圧加圧法)の適用、次いで焼結工程、研磨・ポリッシング工程、バッキンクプレートへのボンディング工程、非破壊検査工程等について極めて詳細に解説された。改良技術として、CIP二段成形効果による高密度化技術、超音波洗浄による表面清浄化技術、ポリッシング効果による表面平滑化技術、大型化技術が開発されている。 また、講演者が開発した製品群として、異形状ターゲット、鏡面仕上げターゲット、大型ターゲットがある。更に、資源有効活用の観点から、リサイクル技術についても解説された。
 太陽電池等に適用可能な代替薄膜技術は既に開発されているが、インジウムの価格暴騰対策、資源枯渇問題に対して、液晶用として使用可能な代替技術開発のために、現在国家プロジェクトとして研究開発が開始されている。
 報告後、不純物の許容度、業界及び組立時のインジウムのリサイクルの現状等について活発な質疑応答が行われた。

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