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金属部会

2004年(H16)1月から6月例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2004年1月20日

新年会
銀座キャピタルホテル
(概要)
 二期会加藤江美女史のソプラノ歌唱に続いて、昨年の物故者(伊賀久矩氏、小川弘二氏)に黙祷を捧げた後、懇親会を開催。部会長の挨拶に続いて、来賓のご挨拶を頂いた。
 清野茂次会長からは、「技術士会のビジョン」作成についての決意を述べられ会員にサービスする事務局の確立が表明された。小針輝男副会長からはビジョン作成について、竹内功専務理事からはビジョン作成、会員増強及び金属部会の会員組織率が40数%あること、畠山正樹常務理事からはカミオカンデ見学会への参加、JABEEが審査員を募集する計画があること等のお話を伺った。
 吉武進也名誉金属部会会長の乾杯の音頭に続いて、宴会を開始。加藤女史、伴奏の法領田女史による技術士の歌とも称される「地上の星」の独唱に続いて、清野会長と加藤女史のデュエットで「知床旅情」を披露された。その後「雪の降る町を」が加藤女史と小川氏他が熱唱、「都の西北」を畠山常務、間瀬氏、大山氏がトリオで熱演・熱唱された。
 ここで恒例の出席者の近況報告に移り、各自の経歴から始まり、今年度の抱負・決意表明、またそれぞれの含蓄深い蘊蓄が披露された。
 近況報告で「琵琶湖周遊の歌」を覚えたいと発言された森信武氏と加藤女史のデュエツトがあり、次回はぜひ出席して11番まで記憶したいとの森氏の決意が表明された。
 ここからは加藤女史、法領田女史による、「ローレライ」、オペレツタ蝙蝠から「新春」、アンコールで「小さな薔薇」を独唱され、その余韻の覚めぬ間に、奥村理事の閉会の挨拶・三本締めで、あっと言う間に過ぎた2時間半の宴を盛会裡に閉会した。

2004年2月18日

テーマ:冷却水処理(金属の腐食防止と汚れ防止)
講 師:鈴木隆氏((有)鈴木技術士事務所)
(概要)
 熱交換器用冷却水について、工業用水の内、73%が冷却水として使用されており、主として化学工場(石油精製)、鉄鋼業で消費されていると前置きされて、次いで冷却水処理の目的、腐食と対策、汚れと対策、トータルの処理プログラムと効果、熱交換器の補修について解説された。冷却水とは、液体とか気体を間接的或いは固体を直接的に冷却するもので、この水を循環使用する設備を冷却水系と言う。大型の工場で使用されている開放循環冷却水系(間接冷却水系)、即ち冷却槽を使い熱交換器でプロセス側から熱を奪い温度のあがった水を冷却槽でスプレーして一部を蒸発させ再冷却して循環使用する冷却塔系設備について報告された。
 蒸発により冷却水の中の塩類が濃縮され腐食が起こるので、ブロー水量を制御し、又補給水を供給することにより塩類の濃縮度を調整するが、用水の節約のため通常5倍程度で運転されている。腐食を抑制して機器の寿命を延長し、汚れ(腐食生成物、ミネラルスケールと微生物的汚れスライム)による効率低下防止のため、冷却水処理として薬品処理を行う。また表面に汚れが付着するとその部分で孔食が発生する。 最近では、冷却水そのものの腐食性の低下のため、安定度指数を小さくすること即ち冷却水のCa硬度、アルカリ度およびpHを高くし、更に防食剤として各種のりん酸塩を使用することにより、鉄の表面にりん酸Caの防食皮膜を形成し鉄の腐食を防止している。特にポリマー系スケール防止剤との併用によりりん酸皮膜がアモルファス状となり熱効率低下を防止できる。環境対策としては、できるだけ腐食性の低い冷却水を使用し、低濃度の防食剤で処理すると旨く行くことになる。また、金属表面を清浄に保つ事が重要である。鋼管の場合に10年程度の寿命保持のために、これらの防食技術を併用して達成しており、これらの処理技術の詳細について解説された。更に、熱交換器の高圧水による洗浄及びチューブ交換等の保守対策についても紹介された。更に、講演後、海水による冷却等について活発な質疑応答が行われた。

2004年3月17日

テーマ:CrMo鋼HAZクリープ特性改善と余寿命診断について
講 師:安部仲継氏(鋼管計測(株))
(概要)
 Cr-Mo鋼のクリープ特性の評価方法及び特性改善及び余寿命診断について報告があった。
 1.25Cr-1Mo鋼を使用したハイオクガソリン反応容器のマンホール部の熱影響部粗粒域に発生したタイプIIIの割れ発生部の原因を調査し、典型的な粒界割れであること、及び粒界にSn等不純物の偏析を確認している。この割れについて、同容器の母材部より試験片を採取して高温クリープ破断試験を行いクリープ脆化によるものと推定している。更に、クリープ脆化を短時間の試験で評価するために、切欠付き試験片による高温での低歪速度(0.0005mm/min)引張試験(以下SERT試験)を行い、試験後得られた試験片破面について調査し、実装置での割れの波面様相と比較した結果、高温での長時間脆化挙動を短時間に再現出来る方法としてSERT試験で評価出来ることを確認した。
 また、クリープ特性改善方法として、1,350℃+650℃後熱処理と、溶接後のTIG溶接によるテンパービードを想定した1,350℃+900℃の熱処理後の試験片についてSERT試験を行ったところ、900℃で処理を行った試験片ではクリープ脆化を生じずテンパービードの有効性が判った。
 ついで、現在講師の所属する会社で実施している非破壊方式による圧力容器の余寿命診断を行うための転写(スンプ)法について解説された。これは火力発電設備の寿命評価技術の中の非破壊試験法に属するもので、対象部位のレプリカを採取し、ミクロ組織、クリープボイドを観察してAパラメータ(HAZの粗粒域の測定方法)を求め、クリープ破断寿命消費率とのマスターカーブを用いて評価している。更に、1.25Cr-0.5Mo鋼エチレン装置の抜管サンプルから、HAZ粗粒域のAパラメータ及びボイド個数密度を調査し、表面からの距離との関係を求めて余寿命を評価する例、更に別法として硬さ低下比法についても解説された。
 講演後、石油プラントの余寿命、オージエ分析法、低歪引張試験方法、水素脆化、熱処理によるクリープ特性改善等について熱心な質疑応答が行われた。

2004年4月21日

テーマ:水素吸蔵合金の改質法とその利用技術
講 師:阿部真丈氏(那須電機鉄工(株))
(概要)
水素エネルギーの概要、水素吸蔵合金、平成15年度から講演者等が経済産業省平成15年度コンソーシアム研究開発事業として実施している研究成果についても報告された。その成果の一部は、2004年の金属学会春期大会で「ナノ化したFeTi系水素吸蔵合金の熱的構造安定性」として東京都立産業技術研究所、東海大学と共同で報告されている。
 水素エネルギーは、化石燃料資源の枯渇問題への対応、環境問題を解決するエネルギー源、エネルギー効率向上対策として最も有力視されている。その用途として燃料電池が有力で、水素貯蔵方式、すなわち、5.5wt%水素吸藏合金、70MPa高圧水素貯蔵タンク等の研究開発が活発に行われている。特に、日本では水素吸蔵合金の開発研究が進んでいる。
 水素吸蔵合金は、常温・常圧付近で水素を吸蔵し、その水素を可逆的に放出することが出来る合金で、高圧での水素吸藏時に微粉化が起こる様子をビデオで紹介された。現在、3.6重量%の水素吸蔵が可能なMg2Ni合金は放出温度が300℃と高く自動車への適用には問題がある。現在のトップデータであるTiCrV合金では3重量%の吸蔵量で、100℃で放出可能である。 自動車への搭載のため500km走行を前提として5.5重量%の最大水素吸蔵量が可能な水素吸蔵合金の開発研究、すなわちメカニカルアロイング法によるMg2Ti合金、積層薄膜合金、アルカリ金属系水素化物、カーボン系材料等の新規材料が探索されている。
 講演者等は、原材料が安価なFeTi系水素吸藏合金のメカニカルアロイング法による大量生産方式の確立について「高性能水素吸蔵合金及びその製造装置の開発」研究を実施している。FeTi合金では、表面を清浄にする初期活性化処理が問題で、遊星型ボールミルによりFeTi合成相を形成しており、ボール径(25mmが最適)、合成時間の影響を調べ、又、TEM観察でナノ構造の形成を確認している。
 講演後、結晶構造、メカニカルアロイング、合金開発の今後の見通し、ニッケル水素電池、水素放出の手段等について熱心な質疑応答が行われた。

2004年4月22日

見学会(化学部会主催、金属部会協賛)
見学先:国立環境研究所
(概要)
 定刻9.45に八重洲鍛冶橋駐車場を出発、一路筑波を目指す。車内での各自のPRも含めた自己紹介の終わる頃、独立行政法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質標本館(無料)に到着、1時間程度、展示物・ビデオの見学を行った。昼食は近くのコンビニ等で自由昼食。13:30から、国立環境研究所を訪問、会議室で研究所概要説明、2班に別れて、環境ホルモン研究棟、循環・廃棄物研究棟、化学物質管理区域(ダイオキシン)を見学、再び会議室で地球温暖化研究棟の説明を伺った。16時に玄関前で全員の記念撮影の後、帰途についた。
 なお、金属部会からの当日の参加者は5名(中澤、萩野、二沢、中山、神戸)であった。

2004年5月10日

見学会(金属部会主催・化学部会協賛)
見学先:東電常陸那珂火力発電所、日本原子力研究所東海発電所
1.東京電力(株)常陸那珂火力発電所
1)概要説明(石橋所長)(VTR併用) 本火力発電所は、水戸対地射曝場跡に建設された施設で、環境アセスメント、海岸埋立て、発電所建設に25年を費やし、平成15年12月に第1号機の営業運転を開始した。現在100万KW発電機が1基稼働している。敷地としては3基分の余裕があるが、販売先難で、第2号機建設の目途が立っていない。石炭火力としては、国内最大規模の100万KWで、蒸気条件の高温・高圧化(蒸気圧力24.5MPa、主蒸気温度・再熱蒸気温度共に600℃)により熱効率は43%でトツプレベルを実現している。
 環境対策としては、排煙中の窒素酸化物(NOx)、煤塵、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染物質の除去、石炭粉塵の飛散防止対策として遮風フェンス、散水装置、密閉式ベルトコンベアの設置、温排水対策、景観対策(建物、八角クロススパイラル煙突等)、地域共生エリアとしてビオトープが整備され、環境に優しい発電所である。又、石炭燃焼による石炭灰は、港湾建設の埋立材として有効活用されており、現在20年分(県埋立地12年分、敷地内埋立地8年分)の処理場所を確保している。また、実験的ではあるが、本館建屋の腰板部分に石炭灰を混入したコンクリートとして利用している。

2).現場見学(岡部氏、高梨氏)
(1)屋内設備見学
(1-1).中央操作室(正・副各1名、操作員2名体制で24時間3交代制、運転状況の大型パネル表示を見ながら操作している。将来の第2号機用スペース確保済。)
(1-2).タービン室(第1高速3000rpm/第2低圧1500rpmタービンにより、19,000Vを発電、275,000Vに昇圧して開閉所から送電している。)
(2)屋外見学(バスで敷地を一周して設備を見学)
(2-1).公害対策設備 排煙脱硝装置(アンモニアスプレーによりN2+H2O化)、電気式集塵装置、排煙脱硫装置(石灰スラリーを吹き付け石膏化)、高さ230mの煙突(八角クロススパイラル鉄塔支持型、愛称;レインボータワー、夜間ライトアップ中。)
(2-2).敷地造成(220ha) 水深7〜8mの海岸を埋め立て、鋼管杭を60m(3本継)程度打設、その他にサンドパイル等で地盤基礎を固めている。
(2-3).揚炭バース 全長385mで水深18m(15万Tの船舶からの荷揚げ可)
(2-4).貯炭場(40万T貯炭可) 粉塵の飛散防止のため、散水装置、高さ18mのメッシュ遮風フェンス設備を設置。払出機(リクレーマ)3基、空気浮上式ベルトコンベア設備にてボイラーまで輸送している。
(2-5).軽油タンク 石炭火力は365日連続稼働を原則とするが、定期点検等で再立ち上げ時に軽油燃焼でボイラーを加熱、微粉炭焚きに移行する時に使用。
(2-6).脱硫時に石灰スラリーを排煙に噴霧し生成した石膏をベルトコンベアで搬送する密閉ベルトコンベア設備等。

2.日本原子力研究所東海研究所
1).研究所概要(横溝副所長)
 東海研究所の在籍者は950名で10%は事務職、約500名が研究者である。予算規模は、平成15年度は180億円であった。東海研究所の組織としては、管理部など11部・センター・室と安全性試験研究センターとして3部が設置されている。  現在、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設中で、加速器としては、1)リニアック(線形加速器)(全長約300m)、2)3GeVシンクロトロン(周長約350m)、3)5GeVシンクロトロン(周長約1,600m)を建設中である。二次粒子を利用する研究施設としては、生命化学研究、物質科学研究、原子核素粒子研究、核変換技術研究等があり、それぞれの施設でビームを利用して研究が行われる。
2).安全性について(石島氏講演)
 「原研の安全性研究」として、原研の安全性研究の実施体制・実施内容について詳細に説明された。即ち、軽水炉として、シビアアクシデントの際の対策についての研究、更に原子炉を長期に使用した時の対応研究、また、兵庫県南部地震、JCO事故、シュラウドのひび割れ解明等への支援、ウラン燃料・プルトニューム燃料を永く使う目的で空焚き事故等を想定した実験(冷却材喪失事故時炉心冷却性研究)を実施している。金属材料の劣化を確率論的取り扱いによるモデルの作成、軽水炉の熱水力安全性(ROSA-V計画)に関する研究、液体燃料の臨界実験(TRACY 臨界実験)、放射性廃棄物処分における安全性評価(長期間地中埋設)、地下環境関連では放射性核種の野外移行試験、原子力に於ける国際協力その他、幅広い研究内容について詳細に紹介された。
3).東電問題について(中島氏講演)
 「原子炉(BWR)炉心シュラウドのひび割れ調査と健全性評価」について、まず、基礎的事項として、応力腐食割れ(以降、SCCと記す)は、材料劣化(粒界等)、応力(溶接の残留応力)の存在、環境の腐食作用(高温水)が協働して発生すること、軽水炉構造材料の経年劣化要因としてはSCCが40%で最も多いこと、また、BWR一次系ステンレス鋼の高温水中での粒界SCCの発生要因としては、溶接熱鋭敏化、溶接残留応力、水中溶存酸素が影響する事を解説された。次いで、シュラウド等のひび割れ問題への対応として、ひび割れの調査、8例の実例サンプルによる調査(6例の調査報告書受領)結果について説明され、 調査結果のまとめとして、SUS316L系材のひび割れは従来の知見とは異なるものであることが判明し、SCC発生メカニズム、粒界割れを示すSCCの進展メカニズム、溶接金属におけるSCC発生・進展挙動については必ずしも明確に解明されておらず、今後の研究が必要であると結論されている。
 また、健全性評価について実機での評価を行い、SCC進展評価線図の分析、5年後の亀裂進展量評価、5年後の残存面積の評価、地震荷重に対する評価を総合して、炉心シュラウド及びシュラウドサポートリング共に、5年後も必要残存面積を確保していることを確認されている。
4).実験場見学
(1)燃料試験設備(VTR併用)(西野氏) 重コンクリート及び鉛ガラス(1.2m厚さ)に囲まれた実験室内に移動・設置したサンプル燃料管をマニピュレータにより操作し、ペレット及び外管試料の各種試験を実施する様子を見学した。ペレットは再生されるが、外管は、放射性廃棄物として処分されるとの事であった。
(2)大型非定常試験装置(LSTF)(朝霞氏) PWRを模擬した総合実験装置で、軽水炉における冷却材喪失事故時の熱水力現象に関する基礎的研究のための実炉を模擬した総合実験装置ROSA-Vを見学した。この装置は、体積は実炉の1/48であるが、高さは1/1で、炉頂上及び炉心部で実験内容の説明を受けた。
(3)燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)(VTR併用) 過渡臨界実験装置(TRACY)の現場で、機器の構造及び溶液燃料体系での臨界を超えるような事象を模擬した実験について説明を受けた。また、給液による臨界超過時の溶液燃料のふるまいについてVTRで説明を受けた。臨界に達した出力ピークの瞬間、その後気泡が液面に達して再度出力が上昇する様子が良く理解できた。

2004年5月19日

テーマ:食品機器における耐食材料の開発及び評価技術
講 師:中山佳則氏(下田・田宮特許事務所)
(概要)
 食品機械としての自動販売機の腐食問題への対応について講演者の開発経験を踏まえて解説された。即ち、カップ式自動販売機の接液回路に用いるステンレス部品の飲料液や温水による腐食問題に対応するためのステンレス材料の開発、及び自動販売機の外箱の粉体塗装鋼板における耐食性評価技術の構築について報告された。
 食品機械用耐食ステンレス鋼の開発については、耐食性と快削性の両立をはかり、更に低コストを目指すための成分設計を行っている。即ち、耐食性については、SUS304組成をベースに、非金属介在物MnSを減少させるため低Mn、低S組成とし、更にMo、Cuを添加したステンレス鋼を開発し、飲料シロップ原液、0.1%%食塩水と10%有機酸の混合液、3%食塩水中で4ケ月浸漬して腐食試験を行った結果、耐隙間腐食性に優れていることを確認している。 更に、ドリル孔あけ加工での工具寿命を伸ばし快削性を確保するためにBiを添加している。Bi添加により溶接性がやや犠牲になっているものの、本研究で開発されたBi添加SUS304ステンレス鋼は高耐食性材料として現在でも食品機械に実用されている。
 粉体塗装は、有機塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の排出問題を解決するために開発されたもので、耐食性及び耐候性に優れた粉体塗料の開発とその迅速な評価法の開発が要望されている。講演では、ポリエステル樹脂をベースにルチル型城顔料、アゾ系赤顔料を添加した塗料を約100μm厚さに塗布した塗装鋼板を交流インピーダンス法により評価した結果を報告された。実験室的に屋外の曝露状況を比較的短時間で予測できる可能性を見いだしている。
 講演後、材質改善・鋼成分に特にBiの効果について、溶液中の酸素の影響、粉体塗装の現状、ウエザーメーターと実際の腐食の関係等について熱心な質疑応答が行われた。
(資料)
1.食品機器における耐食性材料の開発と評価技術レジメ
2.特許公報 特許出願公告平6783
3.Bi含有18-8ステンレス鋼の腐食挙動(1987年10月 日本鉄鋼協会発表予稿集)
4.インピーダンス法による粉体塗装鋼板の耐食性評価(表面技術Vol.52,No.9,2001)

2004年6月16日

テーマ:青色ダイオード600億円特許は如何にしてうまれたか
    −404特許公報の解説、発明の成立経緯の紹介−
講 師:山崎 宏氏(下田・田宮特許事務所)
(概要)
 青色発光ダイオードに関する特許係争が新聞紙上を賑わしているが、その詳細内容について、中村修二博士の経歴、中村博士の日亜化学工業(株)での業務内容、中村博士の顕著な業績、問題の404特許(特許第2628404号 「半導体結晶膜の成長方法」)、日亜化学工業(株)の売上高経緯等を含む年譜の解説から始まり、青色LEDの開発、「404特許」の内容、特許の対価、200億円の判決経緯について詳細に説明された。
 1988年から1993年にかけての青色LEDの開発経過として、中村博士は当時の研究者の殆どが採用していなかったサファイア基板上に窒化ガリウム薄膜をMOCVD法(有機金属化学気相成長法)で形成する方法を選択し、米国にMOCVD法の勉強に出張している。翌年帰国しMOCVD装置を購入し、改造を繰り返した末に、1990年ツーフローMOCVD法を発明し、その特許を1990.10.25に出願した。これが上記の「404特許」であり、その内容は次の通りである。即ち、その概略は、「加熱された基板の表面に、基板の平行方向から反応ガス(アンモニア、トリメチルGa)を供給し、垂直方向から不活性ガス(水素、窒素)の押圧ガスを供給することを特長とする窒素化合物半導体結晶膜の成長方法。」である。
 特許裁判の判決は、「被告日亜化学工業(株)は原告中村修二に対して200億円を支払え。」であり、その裁判所の判断内容の詳細について詳細に解説された。現在、日亜化学工業(株)は、特許を独占して市場での優位性を保っており、判決は本特許の価値を高く評価しており、更に、原告の貢献度を90%と認定している。また、本特許は、米国、イタリー、ドイツ、フランス、英国に出願されている。
 講演後、技術内容(供給ガスの効果等)、404特許の内容、日亜化学工業(株)の特許の考え方、ノウハウの特許化の最近の動向等、数多くの熱心な質疑応答が行われた。
(参考図書)
1.「怒りのブレイクスルー」(集英社)
2.「中村修二の反乱」(角川書店)
3.「特許ニュース」No.11245、No.11246(産業調査会)

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