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金属部会

2002年(H14)例会講演アーカイブス

所属は講演当時で示してあります。

2002年1月23日

新年賀詞交歓会(18:00〜20:30)
銀座キャピタルホテル ローズの間
佐藤清会長、畠山常務理事ご出席、 加藤江美さん、法領田礼子さんのアトラクション、出席者:吉武名誉部会長以下23名

2002年2月20日

テーマ:自動車排気部品用ステンレス鋼とその製造方法の特徴について
講 師:小林真氏(川崎製鉄(株)商品技術部)

2002年3月20日

テーマ:21世紀の機能材料
講 師:間瀬一夫氏(間瀬技術士事務所)

2002年4月17日

テーマ:連続焼鈍法による軟質冷延鋼板の製造について
講 師:浮穴俊康氏(新日本製鐵(株))
(概要)
 冷延鋼板の連続焼鈍による製造時の研究課題と成果について今までの研究業務体験から具体的なデーターを用いて詳細に説明された。
 コスト低減面から連続焼鈍化が行われており、CAPLと称する連続焼鈍ラインが開発されており、連続焼鈍に加えて後処理、スキンパス工程も含めた高能率ラインである。連続焼鈍用鋼種として低価格で市場に供給できることを前提に低炭素アルミキルド高(〜0.02%C)を採用している。
 プレス成型時に要求される性能として時効性と深絞り性が課題で、前者は過時効処理により固溶炭素を低減することでストレッチャーストレインを防止しており、後者は高温焼鈍、結晶粒成長により111面方位を発達させることで深絞り性を怪傑しており、現在良好な製品が市場に提供されている。
 現在担当されている業務から、自動車車体へのAl合金の適用についても説明された。エンジンフードを中心にフェンダー、ドアのほかヒートインシュレーター等の部品に軽量化目的で適用が進められている。材質としてはA5000系、A6000系が中心で、接合法は現在はMIG溶接が主であるが、レーザーMIGハイブリッド溶接、摩擦撹拌溶接法等の適用研究がすすめられていることが紹介された。
 Al合金適用による軽量化については、フードに適用した場合、板圧はやや厚くなるものの軽量化率50%を達成している。

2002年5月15日

テーマ:CPD教育の今後の進め方
講 師:須賀田正泰氏(スガタ技術士事務所)
(概要)
 技術士CPDの経緯、日本技術士会の取り組み、CPDの背景、各国のCPDの現状等について詳細に説明された。平成12年改正の技術士法には、「技術士の資質の一層の向上のため資格取得後の研鑽が責務」と規定されており、日本技術士会として技術士の品位の保持、資質の向上のために技術士の研修、技術士CPDを実施している。また、CPD登録のメリツト等について、様々な意見があるが、技術士にとってプラスになるように努力している旨説明された。

テーマ:CPD登録の仕方
講 師:吉井博氏(日本技術士会業務部長)
(概要)
 CPD登録時の留意事項、登録の具体的な方法つい て詳細な説明があった。CPD登録依頼は技術士CPD登録依頼書、CPD記録(ログシート)、返信用官製はがき、手数料(ただし、当面無料)を添えて事務局宛郵送する。 ログシートには、CPDの形態、課題とその区分、CPD名称、主催者、内容等を記載し、証拠書類等は各自整理保管することとする。登録は原則として誕生月にそれまでのCPD記録をログシートに記載して事務局宛に郵送するが、初年度は平成13年4月からの分を記載し、2年目以降は、誕生月までの1年分のログシートを郵送する。なお、整理の都合上、年度毎にログシートを分けて作成するよう要望された。ウエブ登録については、現在パイロツトユーザーで登録テスト中であり、現状では、ログシートの郵送による登録を御願いしたいとの説明があった。

2002年5月31日

春季見学会 (金属・化学部会共催)
1.石川島播磨重工業(株)富岡工場(略称IHI)・(株)IHIエアロスペース富岡事業所見学(略称IAS)
(宇宙衛星、ロケット、ロケット推進システムなど設計、製造、販売)
(概要)
 IHI石川島播磨重工業株式会社航空宇宙事業本部の鈴木寛課長、同宇宙開発事業部管理部の小宮山忠仁部長、IHIエアロスペース総務部の宮本健部長の会社説明及び工場案内で事業所を見学した。
 IASは中島飛行機の流れを汲む旧日産の航空宇宙部門がIHIに営業譲渡して誕生したIHIの子会社で、ロケット開発は1955年東大の糸川博士によるペンシルロケツト打ち上げに始まっており、来年のIHI航空宇宙部門との組織統合を目指している。統合により固体燃料ロケット、液体燃料ロケットを持つ総合メーカーになる。
 IHI及びIASのビデオによる概要紹介、ロケット関連製品紹介に続き、「技術力について」と題する小宮山部長の講演では、人材育成、特に技能伝承、及びコンピューターによる情報管理の重要性を強調された。
 IASはロケット飛翔体の開発及び製造販売を行っており、今年2月に打ち上げに成功したH-IIAロケット開発では大型固体ロケット及び火工品を担当、一方、IHIはH-IIAロケットでは、第2段エンジン用ターボポンプ、ロケット制御用ガスジェット装置、第1段エンジンのターボポンプ等を担当しており、共に宇宙開発に多大の貢献をしている会社である。
 工場は、棟高さ25mのロケット建造用第1工場を中心に見学し、カーボングラスファイバーからなるロケット胴本体及び焼き固め炉、宇宙機器開発に必須のクリンルームでは月モジュール等を見学した。質疑応答後、吉武先生のお礼の挨拶後15時に退出した。

2.渋沢栄一記念館(深谷市) 見学
「渋沢栄一生誕の地」の深谷市で、郷土の偉人と讃えられ日本経済の創始者でもある渋沢栄一の生い立ち、遺墨、写真等の展示されている渋沢栄一記念館、銅像を見学した。(写真は左から鈴木課長、小宮山部長、吉武先生)

渋沢栄一記念館において(拡大画像へのリンク)

渋沢栄一記念館において

(画像クリックで拡大 14KB)

2002年6月19日

テーマ:製鉄産業のグリンケミストリー
講 師:植村勝氏(ポリテクノ事務所)
(概要)
 無機グリンケミストリーの概要及び関連技術用語すなわち、BAT(Best Available Technique、産業活動において実施可能な技術の最も効率的、経済的で技術的高度なもの)、Eファクター(製品トン当たりの副産物量)及びDFE(Design for Environment)等について説明された後、鉄とグリンケミストリーの係わりについて解説された。
 製鉄産業におけるグリン化技術開発として、次の各種の新開発技術を取り上げてグリン性への効果を解説された。すなわち、「廃プラスチックの高炉原料化」では高炉17基で1000万T処理可能となり現状の廃棄物の全量処理可能、「ゼロスラグ化技術」では操業条件の改善によりスラグ量を従来の1/2〜1/3に削減可能、 「微細粒熱延鋼板技術」では2〜3μmの微細結晶構造にして高強度を得て構造物の軽量化が可能、「鉄スクラップのリサイクル」ではスクラツプの原料化によりエネルギー消費を約1/3に低減する事が出来る。
 また、最も注目される技術として「高炉における新規製鉄技術」があり、これは回転炉床炉により混合ペレツトを溶融還元するもので、生成鉄粒は従来の高炉銑鉄と同品質でしかも下流工程として従来の製鋼工程がそのまま適用出来るものである。実用化にはまだ達成すべき課題が多いが、そのグリン性には注目すべきものがある工程である。

2002年7月17日

テーマ:モルフォ蝶に学ぶ構造発色繊維の開発
講 師:清水進氏(清水技術士事務所)
(概要)
 日産自動車(株)、帝人(株)、田中貴金属工業(株)の共同研究開発として世界的に始めて実用化された構造発色繊維”モルフォテックス”の詳細が資料、OHP及び実物サンプルにより報告された。 生きた宝石とも言われる南米アマゾン全域に生息するモルフォ蝶の一種スルコウスキーモルフォ蝶の神秘的な青色の雄翅、鱗粉の基本的な発色機構を研究して、薄膜多層干渉理論に基づき、2種類の屈折率の異なる高分子材料を組み合わせて、構造発色に必要な微細で正確な薄膜多層形状と寸法をつくるための工程を紡糸口金内で一挙に行い、複合溶融紡糸により構造発色する高分子繊維を作り出した。
 ポリマー素材として、ペット及びナイロン-6を採用し、断面を扁平構造としたクラッド構造(交互積層数は61層、1層当たりの層厚は70〜90nm)とするための口金設計・製作を田中貴金属工業(株)が担当した。繊維成型は2元、3元コンジュゲートによる溶融複合紡糸法を採用し、コンジュゲート口金を設計開発した。積層厚の精度は積層形成流路に流れる吐出量に依存するため、両ポリマーの吐出部形状及び加工精度が重要で工夫がなされており、特許も多数出願されている。
 本開発の成果は帝人(株)により衣料、カーテンその他に実用化され、また、日産自動車(株)では、自動車座席及び自動車外部塗装に適用されている。なお、本研究は、繊維学会から2001年度の技術賞を授与されている。

2002年9月18日

テーマ:社会と技術者と倫理
講 師:杉本泰治氏(T.スギモト技術士事務所)
(概要)
 技術者倫理の直接の目標は、科学技術の危害を阻止すること、公衆を災害から救うこと及び公衆の福利を推進することであり、更に究極の目標は、科学技術が人間生活のあらゆる面に深く関わり、かつ技術者の職業の機会が国際化する現代、技術者一人ひとりが個人として強くなり、技術者の集団としての学協会との連帯のもとに、信頼される専門職の社会的勢力として受入られる様になることを目指すことであると説明された。 技術者倫理では、技術者の社会的責任を説くのではなく、人間関係の問題とされており、モラルに基づく判断を規範の形にしたのが倫理である。
 専門職団体の除名処分についての判例によりモラル共同社会(倫理)と社会(法)の関係、社会と技術者倫理の係わりについて説明された。学会・協会等の小さなソサイエテイには、モラル共同社会を破壊しようとする様な行為に対しては多数決による除名処分があり、例示された判例によっても、一般市民秩序と直接の関係を有しない場合は、団体内部の自主的、自立的な判断、解決にゆだねるのが適当との裁判所の判断がしめされている。
 技術者倫理の発揮が期待される例として、JCOの臨界事故のVTRが上映され、法律に定められた手順を遵守しておれば防げた事故であつたが、技術者倫理が欠除していたために惨事に発展し、公衆にも被害をもたらした。ここに技術者の倫理が重要視される意味があることを強調された。この原因として、米国での集団思考の考え方、及び村上先生の日本のQCサークルに由来する集団になると個人の責任感が希薄になる事例として説明された。

2002年10月16日

テーマ:冷間プレス成形角形鋼管の保有性と利用技術
講 師:高田信宏氏(高田技術士事務所)
(概要)
 冷間プレス成形角形鋼管について、その各種保有特性を調査し、鋼構造物に適用可能であることを実証することにより、平成5年には冷間加工コラムの現場使用が認められ、鋼材倶楽部規格(BCP規格)に制定されており、現在では、各種の建築物、高速道路の橋梁等の鋼構造物に適用されて普及している。
 冷間プレス成形角形鋼管には、製造方法により、1枚の鋼板をプレス成形・溶接して作る1シームの角形鋼管、C型に成形した型鋼を合わせて内面をCO2溶接、外面をサブマージアーク溶接で接合する2シーム角形鋼管がある。建築柱に適用した場合に、現場では隅角部の目違いが問題になるが、ロール成形鋼管等に比較して、2シーム角形鋼管は隅角部形状が安定しているメリットがある。
 この冷間成型した隅角部には、表面部で20%程度の冷間歪みが発生しており、これが使用性能にどのような影響を及ぼすかを各種試験により調査し、日本建築学会で数多く講演している。調査内容は、引張試験、曲げ試験、衝撃試験、隅角部の広幅試験、座屈試験に加えて、実物による各種大型試験が行われており、隅角部は降伏点で約50%増加、引張強度は約20%増加するものの、破断伸びに対しては曲げ加工の影響が少ないこと、また、衝撃値は表面部でやや低下している結果が報告された。大型試験では、短柱圧縮試験、圧縮繰返し3点曲げ試験、実物曲げ試験、実大十字試験体による載荷試験等が行われ、その実用性を確認している。また、適用鋼種についても、普通鋼以外に、亜鉛メツキ鋼、耐火鋼等にも適用されてその用途を拡大している。

2002年11月20日

テーマ:高温水中腐食研究のための電機化学的測定手法
講 師:高林純一氏(高林技術士事務所)
(概要)
 腐食の電気化学的な測定についての基礎事項(局部電池、混成電位、電極電位、照合電極等)について解説の後、標題の高温水中での腐食の電気化学的測定手法、すなわち電極電位の厳密な測定方法について詳細な説明があった。また、腐食の電気化学的な捉え方についても詳細な説明があり、高温高圧では、オートクレーブ、高温高圧用照合電極を用いるが、高温高圧での測定のために、多孔質のテフロンの薄膜を使用した新型のAg/AgCl内部照合電極を開発している。この照合電極は、3、4回の実験後でも基準電圧の変化が数mVと少ない特徴があり、腐食防食協会の応力腐食割れに関する分科会の中の委員会で、標準電極としても採用されて共同研究が行われている。
 沸騰水型原子炉のSUS304配管の応力腐食割れの解明のため、電気化学的手段を応用した例についても説明があった。応力腐食割れの発生には、応力と材質と腐食環境、すなわち、溶接残留応力と原子炉立ち上げからの昇温に起因する膨張による動的歪み、304材料の溶接熱影響部、溶液中の溶存酸素の組み合わせが必要である。発生過程に関する試験方法では、短時間で割れ発生が可能なSSRT法を採用して検討している。応力腐食発生のモデルについて説明があり、更に、腐食研究のための電気化学的測定装置について測定方法の詳細が解説された。また、真の電極電位を測定するため、方形波の微弱な交流を重畳して測定する方法を開発している。

2002年12月11日

見学会
(株)日立製作所 日立研究所 材料基盤技術センター、水戸偕楽園
1.(株)日立製作所 日立研究所 材料基盤技術センター
 日立研究所では、織田村元視主幹研究員兼ソリューションセンタ長の司会で、小園裕三材料・デバイス研究センタ長の日立研究所の説明、前田邦裕技術主幹兼材料基盤センタ長の材料基盤センター紹介に続いて、稲垣氏から「摩擦撹拌溶接(FSW)」、近藤氏から「低熱膨張銅複合材」についての説明を伺った。
 午後は、研究所の現場見学で、摩擦撹拌溶接によるAl材のビード置き溶接実演及びサンプル説明、Mg合金の射出成形用新Mg-Al-Zn合金材(HITMAG-A,B)の説明及び湯流れと凝固欠陥のコンピュータシミュレイションソフトADSTEFANの説明を伺った。その後分析関係機器及び各種電子顕微鏡等の解析ツールを見学した。更に、展望室では、日立市、日立港を望むすばらしい景色を堪能した。
 「摩擦撹拌溶接」については、その原理から各種の材料への応用について紹介された。また、ステンレス鋼への適用の説明があり、現状は溶接長1m程度までであること、実用化するにはツール材質をダイヤモンド焼結体にする必要があるとの説明等、大変興味深い研究成果が報告された。
 「低熱膨張銅複合材L-COP」は、ヒートシンク材で問題になっている熱膨張差に由来するチップーヒートシンク間の熱応力を低減することを可能にする材料で、CuとCu2Oの比率を調整することで熱膨張を調整することが可能である。本材料は銅と酸化銅との複合材料で、上記の様に成分調整により広い範囲で熱膨張係数を調整でき、また、リサイクル性に優れていることが特徴である。

2.徳川光圀公の西山荘を帰途見学
 ここは光圀公が晩年の10年間を過ごした隠居場で、西山の麓に老樹にかこまれて茅葺屋根の庵風の建物である。また、正直な人は友人に値するとの教えであるが、「人の心は裏から見よ」との戒めから、心の字を裏から見た形に掘ったと言われる心字(白蓮)池等を見学した。

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