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建設部会

2026年1月 建設部会講演会(報告)

写真ー1:ご講演の様子1(拡大画像へのリンク)

写真ー1:ご講演の様子1

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写真ー2:ご講演の様子2(拡大画像へのリンク)

写真ー2:ご講演の様子2

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■開催日時:令和8年1月21日(水) 18時00分〜19時30分
■講演者 :(一社)建設コンサルタンツ協会 会長 大本 修 氏
■講演場所:機械振興会館 6−66会議室
■講演方法:会場(対面)+WEB会議方式
■参加者 :会場参加者39名(内訳:会員25名、非会員8名、担当6)、Web参加者148名

1.ハイライト
・「阪神淡路の震災を経験した。人を守るためのインフラが、倒壊して人命を奪うことがあってはならない。」私は設計者の立場から人を守るためのインフラを整備したいと、建設コンサルタント業界に転職した。
・ハード、ソフトの両面をうまく組み合わせることで、防災減災対策を行う必要がある。
・災害の激甚化、インフラの老朽化など、社会課題は複雑化・複合化しているが、我々は受け入れ不可能なリスクが存在しない状態を目指している。
・多額の資金を使わず、知恵を集約して関係者と調整しながら、解決策を提供することが我々の役割である。
・建設コンサルタントは、一般企業の倫理観に加え、公益性、中立性を持つ必要がある。

2.講演の概要
(1)建設コンサルタントの専門性と業務領域
・建設コンサルタントは、社会資本整備における中立的立場として、企画立案・調査計画・設計・施工管理支援・維持管理までの全工程を担う専門技術サービス業である。
・発注者は国交省、地方自治体が中心となっており、最終的には国民・住民の納税によって支えられている。
・1957年の技術士法制定、1959年の設計施工分離原則、1964年の建設コンサルタント登録規程の整備等により制度基盤が整い、業界の専門性と社会的責務が確立された。
(2)業界の現状と人材構成
・全国登録業者数は3,930社、協会会員は509社。会員企業売上高は1兆2千億円規模、技術者比率は約85%と高い。技術分野は22分野に分類され、河川・海岸、道路、鋼構造コンクリートの売上割合が大きい。
・建設投資額が長期的に減少している中で、建設コンサルタントの売上は増加傾向にあり、業務範囲の拡大、高度化・複雑化が背景となっている。
(3)歴史と業務変革 ― 受動から主体的へ
・建設コンサルタントは、戦後復興における発注者の外部専門機能として、膨大なインフラ整備を支えながら成長した。この受動的役割から脱却し、プロジェクト提案・政策提言を主体的に行う役割への転換が講演の重要なメッセージである。
・地域支部による自主的なインフラ構想(北海道2050ビジョン、関西の道まちづくり、中国地方未来ビジョン、四国八の字ネットワークなど)は、主体的提案型コンサルの具体事例である。
(4)DX(BIM/CIM)とデータ連携 ― 生産性改革の核心
・BIM/CIMを中心としたDXは、企画から維持管理までのデータ連続性を確保し、ライフサイクル最適化を支える。しかし、発注者側担当者の頻繁な異動等により、システム整備や実装が進まないことが課題である。
・協会や企業がPMOとして継続支援する体制づくりの必要性が強調された。
・CDE(共通データ環境)、IFC標準、属性辞書整備、API連携など、運用基盤の整備が不可欠である。
(5)レジリエンスと持続可能性への転換
・気候変動と災害リスクの増大が続く中、ハードとソフトを組み合わせた統合的な防災が求められる。
21世紀末頃には気温 +4.5°C、海面 +0.7m、時間降雨量50mm/h以上が2.3倍、総人口の7割が災害リスクエリアに居住。老朽化も深刻で、2040年までに橋梁の75%、トンネルの50%が築50年以上に到達する。
・確率論+決定論を組合せた安全工学アプローチ、冗長性を備えた粘り強い設計、迅速復旧への備えが重要。
(6)グリーンインフラ・ネイチャーポジティブ
・防災・環境・地域振興を統合するグリーンインフラが注目され、柏の葉アクアテラスなどの事例を紹介。2030年までに生物多様性損失を反転させるネイチャーポジティブの重要性、SDGs後を見据えた社会・環境・経済の“統合的意思決定”への移行が語られた。
(7)災害対応と協会の現場力
・協会は災害協定に基づき、八潮の道路陥没、能登半島地震など実災害に出動している。
・平時訓練・初動調査・被害把握・応急復旧計画・住民対応を迅速に行う体制を強化している。
・複数災害が同時発生する状況では、人命優先・ライフライン・交通要衝の優先度に基づき派遣隊を分散配置する。
(8)契約制度改革とPPP・報酬制度
・地方に残る価格競争偏重からの脱却が必要であり、総合評価・プロポーザル方式の導入を提案している。
・契約約款の課題として、設計費の10倍近い損害賠償を支払う事例など不合理なリスク配分の是正が急務。
また、成功報酬方式、GHG削減インセンティブなど、新たな報酬モデルの導入が議論された。
(9)AI活用・著作権課題と倫理
・成果品の著作権は発注者に移転するため、AI学習に利用する際の法的整理が必要。
・国土交通省 技術調査課と協会による議論が始まっており、成果品の活用に関するルール整備が不可欠。
・建設コンサルタントは、通常の倫理に加えて、公共性・中立性・公益性という立場、倫理観が求められる。
(10)未来社会への貢献と業界の使命
・世界経済フォーラム2026が指摘するように、複合化したリスク(地政学、AI、環境、人材)が絡み合う時代において、必要なことは[1]信頼の再構築 [2]分散型協力 [3]技術・人材・インフラへの戦略投資である。
・建設コンサルタントは、創造的課題設定、合意形成、プロジェクトマネジメントなど、AIに代替されない領域で社会的価値を発揮する必要がある。
講演は、「建設コンサルタントとして、持続可能な社会づくりを提案していきたい」という言葉で締めくくられた。

3.まとめ
 本講演は、建設コンサルタントが直面する社会課題の複雑化に対し、業界が「受動」から「主体」へ転換する必要性を強く示したものであった。気候変動・災害リスク・インフラ老朽化・人口減少といった構造的課題に加え、DX推進の遅れや発注者側の人材ローテーションなどの制度的課題も浮き彫りとなった。
 これらに対し、建設コンサルタントは、企画・計画から維持管理までのライフサイクル全体で価値を創出し、レジリエンス強化・グリーンインフラ・ネイチャーポジティブなど新たな社会要請に応える役割を担う。また、主体的な政策提言、DXの標準化支援、PPPや成功報酬型の新たな契約モデル、人材育成とナレッジ継承、そして公共性・倫理性の徹底が不可欠であることが強調された。
 最後に、未来は「予測」ではなく「設計・実装」すべきものとして、建設コンサルタントが持続可能で強靭な社会を“ともにつくる”中核的存在となることが期待される、という力強いメッセージを戴いた。
 貴重なお話をいただいた大本会長に心から感謝致します。
 講演会担当:長久保、影山、三吉、岩部、平井、渡邊(文責)
           

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