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2025年10月 建設部会講演会(報告)
日 時 :令和7年10月15日(水)18:00〜19:30
講演名 :「気候変動の科学的知見とカーボンニュートラルの政策・技術動向」
講演者 :パシフィックコンサルタンツ株式会社
上席執行役員 梶井 公美子
講演場所:会場/オンライン併用ハイブリッド形式
参加者 :117名(会場26名(会員24名,非会員2名)web(会員91名))
1.講師プロフィール
梶井氏は、1994年にパシフィックコンサルタンツ株式会社に入社され、環境・エネルギー分野を専門とし、国の気候変動影響評価報告書のとりまとめ支援など、国や自治体の環境・温暖化政策等の策定支援に長年従事されてきた。環境・エネルギー部長、社会イノベーション事業本部副本部長、技師長等を経て、現在、上席執行役員、ソリューションビジネス本部長。また、エネルギー系のグループ会社である株式会社PE-TeRaSの代表取締役社長、及びパシフィックパワー株式会社の取締役副社長を兼務されている。
本講演会では、「気候変動の科学的知見とカーボンニュートラルの政策・技術動向」と題して、国内外の気候変動の現状と課題、政策と技術動向についてご講演頂いた。
2.講演内容
1.世界の気候変動とその影響の現状・将来
・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書(AR6)によれば、世界の平均気温は産業革命前から1.1度上昇し、特に1970年以降の上昇速度が過去2000年で最も速いとされている。
・温室効果ガスの増加が主な原因であり、人間活動による影響は疑う余地がない。今後も気温上昇や極端気象のリスクが高まり、生態系や人間社会への影響の深刻化が予想され、健康被害や生物多様性の損失、農業・水資源への影響も懸念されている。
・それらの影響を最小限に食い止めるために1.5度目標が設定されているが、達成するためには、全分野で急速かつ大幅な排出削減が必要となっている。
・カーボンバジェット(排出が許容される炭素量)の概念も重要視されており、世界全体で残された排出枠をいかに使うかが問われている。IPCCの科学的知見は確信度や可能性を慎重に評価し、政策決定の根拠となっている。
2.日本の気候変動とその影響の現状・将来
・日本の平均気温は100年あたり1.4度上昇し、世界平均より高い傾向が見られる。
・猛暑日や熱帯夜の増加、大雨や大雪の極端化が進行し、台風の強度や海面水温の上昇も顕著である。
・将来予測では、2度・4度上昇シナリオともに気温・降水量の増加が見込まれ、災害リスクも拡大する。農業・水産業・水資源・生態系・健康・経済活動・生活など多分野に影響が及び、特に農作物の品質低下や水資源の需給バランスの乱れが懸念される。
・国内のCO2排出量は近年減少傾向にあるものの、産業・運輸・家庭部門からの排出が依然多く、さらなる削減が不可欠な状況である。気候変動の影響は、より脆弱な地域や人々に大きく及ぶことも指摘されている。
3.日本におけるカーボンニュートラルの政策・技術動向
・経済産業省主導のGX(グリーン・トランスフォーメーション)政策では、排出削減・経済成長・エネルギー安定供給の同時実現を目指している。
・省エネ・再エネ・CCS/CCUSなどの技術導入が進み、排出量取引などカーボンプライシングの仕組みも導入予定である。第7次エネルギー基本計画では、今後の方向性として再エネ比率の拡大や電力需給の最適化が挙げられている。
・国交省は社会インフラの脱炭素化、農水省は森林・農地の吸収源強化やクレジット化を推進している。
・環境省は地域・企業の脱炭素化支援を強化し、自治体や企業の取り組みを後押ししている。
・このように各省庁が連携し、技術・経済・制度の多面的なアプローチでカーボンニュートラルを推進している。
4.カーボンニュートラルの取組事例
・北海道の自治体では、太陽光・蓄電池によるマイクログリッド導入で災害時の電力供給やコスト削減を実現している。
・企業の取組としては、鉄鋼業界のグリーンスチールや自動車材料のバイオマス化など、製品・材料の脱炭素化、そのための技術開発が進んでいる。
・海外ではJCM(二国間クレジット)制度を活用し、効率的な技術導入やバイオマス発電などのプロジェクトが展開されている。これらの事例は、地域・企業・国際協力の多様な取り組みを示しており、経済効果やレジリエンス向上にも寄与している。
・今後は、製品のライフサイクル全体でのCO2削減や、社会課題解決との相乗効果を意識した取り組みが重要となってくると考える。
5.まとめ
・気候変動対策には、緩和(排出削減)と適応(影響への備え)の両面が重要となる。1.5度目標達成には、急速な削減努力が不可欠であり、日本は特に気温や海水温の上昇・災害リスクが高いため、分野横断的な対策が求められる。
・GX政策やカーボンプライシング、社会インフラ・地域・企業の連携が鍵となる。経済効果や社会課題解決との相乗効果を意識したデザインが今後ますます重要となる。緩和と適応の統合的な視点で、最適な対策を進める必要がある。
・LCA(ライフサイクルアセスメント)的な評価や、可視化・経済効果の最大化も今後の課題となってくる。
以上
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