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建設部会

2025年1月 建設部会講演会(報告)

■日 時 :令和7年1月22日(水)18:00〜19:30
■講演名 :「建設分野の働き方を経営工学の視点で改善」
■講演者 :改善コンサルタント、技術士(経営工学) 小松 加奈 氏
■講演場所:会場/オンライン併用ハイブリッド形式
■参加者 :178名(会場27名(会員23名,非会員4名)web(会員151名))

1.はじめに
 小松氏は,製造業特化型コンサルティング,完全カスタマイズ型コンサルティング,資格・スキル活用コンサルティング,技術士合格講座運営の4つの事業を展開されている。また,講演,教材執筆,ラジオやYouTubeへの出演など,多彩な分野で活躍されている.本講演会では,経営工学の視点からの建設分野の働き方の改善について講演をいただいた.

2.講演内容
(1)最近のデータ
・国土交通省のデータによると,建設業者数,建設就業者数とも,ピーク時(平成11年度末)から減少している.
・60歳以上の技能者は全体の約4分の1を占め,10年後にはその大半が引退することが見込まれる. 29歳以下の割合は全体の約12%程度であり,若年入職者の確保・育成が喫緊の課題となっている.
・建設業は出勤日数,総労働時間とも,他の産業に比べて長い.技術者・技能者ともに週休二日の確保ができていない場合が多い。
・労働基準法の改正による時間外労働規制の見直しが,建設業は令和6年4月から適用されている.
・建設業は,月当たり平均残業時間45時間,月当たり最大残業時間100時間を超えて残業している人が多い.
・働き方改革を推進しなければ,人材を確保できなくなっている.

(2)働き方改革施策事例
・働き方改革施設事例について,カテゴリーとキーワードを挙げて解説いただいた.
・カテゴリーとしては,[1]デジタル技術(情報共有システム,クラウド管理,ICT建機,BIM/CIM,ITツール),[2]業務効率化(労働時間管理,工期・工程の調整,業務効率化,外部委託,処遇改善),[3]人材活用と教育(社内教育,勤務形態の工夫,人材採用),[4]新規事業・多目的利用(不動産の多目的利用,異分野への参入,事業部門の新設),[5]働きやすい環境づくり(効率的な工法の活用,リフレッシュ),がある.
・キーワードとしては,「生産性向上」に関するものとして,[1]デジタル技術活用,[2]測位・情報共有,[3]作業効率化ツール,[4]作業環境・人事制度,「経営効率化」に関するものとして,[5]デジタル化・自動化,[6]新規事業・環境対応,「長時間労働の是正」に関するものとして,[7]柔軟な働き方,[8]福利厚生・支援制度,[9]業務効率化,[10]給与・雇用制度が挙げられる.

(3)経営工学技術と応用
・経営工学技術と応用について解説いただいた.
[1]利益をもたらす分析・管理・改善の流れ(効果が高いものを抽出し改善技術を選択する。パレート図,ABC分析が有効)
[2]生産性向上は,主作業以外の削減こそ着目(主作業以外に無駄が多く改善余地が大きい)
[3]プロジェクト運営のコツ(トップの意思表示・声掛け,定量的な目標設定,継続的なモニタリングとフィードバック,仕事・体制への組み込み等)
[4]標準化が継続するための組織構築(ベテランのノウハウの若手への伝承,チェック機能,基準書,手順書等)
[5]標準化(手順,内容,管理項目,目的・理由,起きる可能性のある問題,起こったことへの対処法,標準時間・標準出来高)
[6]標準化(掲載・伝達方法)
[7]理解促進の工夫(マニュアル説明後のテストの実施,実演,被教育者による説明,反復教育等)
[8]改善の基本の流れ(テーマ選定から現状の把握,分析,目標の設定,改善案の検討・実施,効果の確認,標準化)
[9]改善の考え方(動作経済の4原則,治工具・機械の原則,サーブリック分析,外段取り・内段取り,段取り改善の着眼点)
[10]視点・交渉の技術(ECRSの原則,ガントチャート,仕事の詳細所要時間表,仕事のフロー図,作業者別山積表,他の部署との比較,力量表の利用,マトリクス図,時間管理マトリックス,PDPC法等の活用)

(4)勤続の現実的ポイント
・話を聞いてくれる,向き合ってくれる,実際に組織が変わっていくということが、なければ退職していってしまう。
・相談したときに、上司や総務が向き合ってくれた,関わってくれたという対応があると、退職を思い止まることもある。例えば,子供ができたときに,男女問わず数年間は転勤を猶予するなど。
・今の人は,キャリアがつながらないと退職してしまう.キャリアをつなぐことが重要である.また,会社の規定に入れたり全社的に周知する,明文化することが重要である.
・感情や勘違いによる失望,すれ違いにより退職してしまう例が多い.退職しなくてよい人を繋ぎ止めるには,座談会やアンケート,面談,フィードバックを一人一人地道にやっていくことが有効である.キャリア形成や働き方への配慮があることが理解できれば,お互いのミスマッチが解消されて良い結果にもなる。

3.おわりに
 建設分野の働き方の現状と課題,働き方改革施策,働き方改革への経営工学技術の応用,働き続けてもらうための現実的な対応についてお話をいただいた.
 働き方改革に経営工学技術を応用することにより,実践的かつ効果的な対策が可能になること,退職を防ぐためには,地道に一人一人と向き合い,キャリアをつなぐための配慮や明文化が重要であるとのお話が印象的であった.
 働き方改革や人材の確保は,建設分野の喫緊の課題であり,私たちの職場でも是非実践していきたいと感じた.
 多岐にわたる話題を短時間で,わかりやすく講演いただき,質問にも気さくに応じていただいた小松加奈氏に感謝申し上げます。
                             以 上
講演会担当:河北,榎本,太田,山岡(記)

写真ー1:講演者・小松加奈氏

写真ー1:講演者・小松加奈氏

写真ー2:講演会の様子

写真ー2:講演会の様子

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