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2024年10月 建設部会講演会(報告)
■日 時:令和6年10月16日(水)18:00〜19:30
■講演名:「未来を拓くインフラ・プロジェクト〜JAPICからの提言とその背景〜」
■講演者:一般社団法人 日本プロジェクト産業協会国土・未来プロジェクト研究会
委員長(パシフィックコンサルタンツ株式会社 特別顧問) 藤本貴也氏
■講演場所:機械振興会館6−66会議室(会場/オンライン併用ハイブリッド形式)
■参加者:会場20名(会員19名,非会員1名)web(会員104名))
1.はじめに
藤本氏は、建設省に入省し、退官後多くの企業・団体等でご活躍され,現在は,パシフィックコンサルタンツ株式会社に席を置くとともに、一般社団法人日本プロジェクト産業協議会 国土・未来プロジェクト研究会の委員長をされている.
本講演会では未来を拓くインフラ・プロジェクト〜JAPICからの提言とその背景〜と題して講演をいただいた.
2.講演内容
(1)はじめに
・近年は公共事業の予算が徐々に増加しつつある.これは東日本大震災と笹子トンネル事故の2つの出来事が生じて,防災・減災・国土強靱化や維持・修繕の必要性が認識されたためである.
・しかし,「新しいフロンティアを拓き,将来の社会経済の発展基盤を形成するインフラ整備」や,「国民生活の豊かさを実感できる環境・景観の改善に資するインフラ整備」までには至っていない.これは1990年代から始まった公共事業悪玉論の影響を受けている.
・今後,日本は上記のような未来を拓くインフラ整備に力を入れていく必要があり,JAPICではそうした観点から提言を行っている.
(2)インフラ投資を重視する欧米諸国と軽視する日本
・日本ではインフラ整備が停滞している一方で,日本以上にインフラが充実している欧米諸国においても,インフラ整備の重要性が認識され,現在も長期的な視点で積極的にインフラ整備に取り組んでいる.
・日本は,GDPが伸びないので,財政が厳しくインフラ整備に投資できないというデフレスパイラルに陥っているが,インフラの整備は国の成長にとって重要であり,GDPと税収は相関があることから,税収を増やすためにも,インフラ整備等のGDPを増やす政策をするべきである.
(3)ヨーロッパにおけるビッグ・インフラ・プロジェクト
・ヨーロッパにおけるビッグ・インフラ・プロジェクトを紹介する.
・<海峡横断プロジェクト>デンマーク/オーレスン・リンクや渡り鳥ライン:デンマークとスウェーデンやドイツをつなぐ道路と鉄道の併用構造による海峡連絡路である.
・<超長大トンネル>スイス/アルプ・トランジット計画:世界最長トンネルを含むアルプス直下を通過するトンネルで鉄道の高速化が可能となる.
・<国土の大改造>ドイツ/ライプツィヒ新湖水地方:総面積40km2の広大な石炭採掘跡に湛水し,環境整備を行った.
・<鉄道の大規模改造事業>ドイツ/シュツットガルト21計画:ターミナル駅を通過型の駅に大きく改造するとともに線路・駅舎を地下化する事業である.
・<大規模地下駐車場>ザルツブルク山腹駐車場,スイス/ジュネーブ・ブラージュ駐車場(レマン湖):駐車場のニーズに応じて地下や湖面下に大規模な駐車場を整備した.
(4)JAPIC(日本プロジェクト産業協議会)国土・未来プロジェクト研究会からの提案
・JAPICは昭和58年に設立され,多くの企業,自治体,大学等が会員になっている.これまでに多くのプロジェクトの提言を行ってきており,東京湾アクアラインの事業化に大きく貢献した.JAPICの中で国土・未来プロジェクト研究会は,会長直属の組織である.
・研究会の設立の背景として,現在進行しているプロジェクトは30年以上前に検討されたものばかりであり,新たな長期的・具体的なプロジェクトの提案の必要性が認識されたことがある.
・2017年に140のプロジェクトからなる第一次提言を行った.その中から12のプロジェクトを選定して深掘りし第二次提言とし,地元等とも議論を行った.2022年3月にキックオフシンポジウムを行うとともに,各地方の行政関係者、経済団体,建設・不動産関係者等への働きかけを行っている.その後,中村先生から,北海道,畿北,四国,沖縄については,「さらに具体のプロジェクトを検討すべし」との指摘があったため,第三次提言の検討を行っている。(畿北については本年6月12日斎藤建設大臣に手交・公表。残る3ブロックにつては同12月10日に発表会を行った。)
・第二次提言の主なプロジェクトとしては北海道の津軽海峡トンネルプロジェクト,神戸空港の機能強化と関西三空港一体運用,四国全県単線新幹線と地域発展,瀬戸内クルーズネットワーク構想,下関北九州道路の早期事業化,沖縄本島ツインゲートウェイ構想等を提案している.
・畿北地域の活性化については,サバ街道サイクリングを基軸とした畿北地域の再生・活性化検討,敦賀観光活性化,若狭湾周辺観光魅力アッププロジェクト,小浜線交通サービス向上による利用促進策等を提案している.
(5)インフラプロジェクト推進に際しての課題
・インフラプロジェクト実現に向けては,粘り強い取り組みが必要である.
・常にバッターボックスに立っている気持ちでいないといけない.好球が来たときにいつでも打てる態勢でいることである.ベンチにいては好球が来ても打つことができない.
・これまでの30年間は,プライマリーバランス至上主義であっため,インフラ整備を怠ってきた。成長戦略に転換する必要がある.
・人口減少のGDPへの影響は,過大評価されている.香港や韓国は日本より出生率が低いのに,GDPが伸びている.人口が減るから成長できないということはない.
・建設国債は未来への投資であるから,もっと発行するべきである.
・B/C,特に便益は定量化できないため,実際はもっと便益が出ているのではないか.また,割引率4%は高すぎる.割引率で必要以上に便益を低くみせているのではないか.
3.おわりに
・上皇さまの教育係の話として,自分の顔には責任を持たないといけない,生まれながらの顔を持って死ぬのは恥だ,という話があった.国土も同じであり,前代から引き継いで,よりよいものとして,次代に引き渡さなければならない.貴重なお話をいただいた藤本様に心から感謝申し上げます.
以上
講演会担当:三吉,中村,榎本,平井(記)
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