建設部会のホーム行事案内2023年12月・建設部会講演会(報告)
■日 時:令和5年12月7日(木)16:30〜18:00
■講演名:「土木のしごととデザイン」
■講演者:土木学会次期会長 早稲田大学理工学術院教授 佐々木 葉 氏
■場 所:日本教育会館 9階 喜山倶楽部(千代田区一ツ橋2-6-2)
■参加者:会場60名(会員58名,非会員2名)web(会員140名)
1.はじめに
佐々木氏は,持続可能な地域景観まちづくりや地域水系基盤デザインによる地域再生を研究テーマとして活躍されている。2024年に女性初の土木学会会長に就任が内定している。
本講演会では土木のしごととデザインについて講演をいただいた。
2.講演内容
・フィールドに根ざした継続的な研究を行っている。郡上八幡が最も長く26年間継続している。
・デザインの対象は様々であり、それらを日用雑貨などのプライベートで小さいサイズから、都市・風景などのパブリックな大きなサイズまで,サイズの大小とプライベート・パブリックの二軸で整理した。都市や風景は,日用雑貨等とは異なったアプローチで検討していく必要がある。
・1990年代に入って,シビックデザイン等の考え方が出現し、2003年に美しい国づくり政策大綱が発表された。シビックデザインとは、「地域の歴史・文化と生態系に配慮した使いやすく美しい公共土木施設の計画・設計」と定義されている。
・世の中は景観に対する意識が高まってきたが、特定の場所以外ではインフラ公共空間の質が高まっていない。財源不足や人材不足等から,取り組みに限界があると思われている。これを解決する総合的な取り組みとして「デザイン」があると考える。デザインは,現状をより好ましい状態に変える取り組みである。
・土木学会では毎年デザイン賞を発表している。今年のデザイン賞として,私も関わった「石巻市街地における旧北上川の復興かわまちづくり」が受賞した。堤防のないところに堤防を構築するたいへんな事業であった.もともと護岸の鋼矢板の見え方等を景観と考えられていたが、そうではなく「堤防を地形の一部として捉える」等まず全体のコンセプトを決めて取り組んだ。通常の堤防は上って下りる必要があるが、堤内側の土地利用と一体化して堤防高と背後地を同じ高さとし、市民が散歩したり水辺に親しんだりする空間ができた。
・「土木デザインーひと・まち・自然をつなぐ仕事」の本のなかには、橋の事例として子供を連れたお母さんがふっと川を見るときに子供も景色を見通しやすいデザイン等が紹介されている.広島の太田川の護岸の景観計画も紹介されている。河川管理用通路をカフェ等が占有可能で太田川に触れることができるデザインとなっている。太田川でこのような水辺の活用ができるのは流量の多くを流せる太田川放水路が別途整備されているためである。これも大切なことであり、異なるプロジェクト間をつなげたり全体的に計画することもデザインである。
・土木デザインを進めていくためにはダイバーシティが重要で、いろいろな人が関わっていく必要がある。デザインとは色を決めることだ、D&Iは女性を入れることだという誤解がまだ多いがそうではない。
・土木学会のD&Iは、2004年にジェンダー問題から取り組みが始まり、2019年からのD&I委員会につながっている。いまD&I 2.0に向けて取り組んでいる。その一つとして,リーフレットも作成している。また、ダイバーシティを身近に感じてもらうことを目的として「D&Iカフェトーク」の取り組みをおこなっており、トークの中からいろいろなキーワードが出てきた。
・土木の仕事というのは、多様なユーザー・多様な地域のための利他的な仕事だということを強く認識した。デザインもD&Iも、一人ひとりのなりたい姿とそれをとりまく環境のことなのだととらえ、それに深く向き合い、その都度固有の答えを模索することであり、土木学会はそれを実現するためのインフラになればいいなと考えている。
3.おわりに
土木のデザインは、公共空間を対象とすることから多様な考えをできるだけ取り入れていくのがよく、それはD&Iの考え方ととても相性がよいと感じた。
土木とデザインに関する話題を短時間でわかりやすく講演いただき、質問にも気さくに応じていただいた佐々木葉氏に感謝申し上げます。
以上
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