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建設部会

2023年9月 建設部会講演会(報告)

■日 時:令和5年9月20日(水)18:00〜19:30
■講演名:「ICT・BIM/CIMによるデジタル土木施工」
■講演者:清水建設株式会社土木技術本部イノベーション推進部部長 小島英郷氏
■講演場所:会場/オンライン併用ハイブリッド形式
■参加者:271名(会場37名、web234名)

1.はじめに
 小島氏は,1994年に清水建設株式会社に入社後,地下岩盤空洞施設の設計・施工、遠隔・無人施工技術の開発等に携わられた後,2016年から土木デジタル・DXの技術開発,スマートシティ,次世代通信基盤による建設生産システム開発等の先端分野で活躍されている.
 本講演会ではICT・BIM/CIMによるデジタル土木施工について講演をいただいた.

2.講演内容
(1)実施した「情報化施工」(水封式地下岩盤貯槽工事)
・水封式地下岩盤貯槽は、地下水圧により常温のLPガスを閉じ込める貯槽方式である.LPガスの内圧より高い地下水圧となる深度に貯槽を設け,地下水圧によってLPガスを封じ込めるこの貯槽の情報化施工を2003年〜2013年に実施していた.
・現場では,何度も調査を行い,地質データ,空洞安定データ,水理データを分析し,施工方法を見直す作業を繰り替えした.
・工法の検討では,3次元の図面を作成し発注者と協議を行った.
・このように経験した情報化施工は、現在のICT,DXによる施工と類似しているように感じている.

(2)より高度な「ICT・BIM/CIM」建設生産システムを目指す(デジタイゼーション)
・デジタル化は多様な業種で取り組まれているが,当社では,自社の生業をどのようにデジタルで共有し,顧客にどのようにデジタルサービスとして提供するか,又,ものづくりを支えるデジタル基盤をどのように作るのかを追求してきている.
・何らかの技術を導入すれば劇的に生産性が向上するということではない.建設施工管理の業務は多様で,デジタル化を受け入れられる人,受け入れられない人,様々な人が働いており一気に全部を変えることはできない.全体の効率化を目標に共有しつつ,負荷の大きい作業効率から少しずつ取り組むことが重要である.
・最近のDXツールとしては,BIM/CIMモデリング,天球画像管理システム「OPENSPACE」,VRシステム,XRシステム,LiDAR付iPhone,360°カメラ等がある.
・BIM/CIMのMはモデリングではなくマネジメントであると今よく言われている.製造業では何十年にわたりデジタル化やロボット化が進められてきた。一方,建設業では,これからの状況であり,単品生産で量産化はしない業態においてどのように導入するか,現場職員や職人が行っている作業をパターン化していかに効率を上げるか,に取り組んでいる.

(3)自動化・ロボット化,安全支援システム,次世代通信基盤
・わざわざ計測してデータを取るのではなく,自動でデータが上がってくる仕組みが建設生産システムでも必要になってきている.
・山岳トンネルでは毎日1mの掘削を何回も繰り返すルーティンを行っているため,自動でデータをとる自動ロボット化の取り組みが進んでいる.
・造成工事もICT建機等を使うようになっているが,ブルドーザーや振動ローラーは暴走の防止が障害になり無人化が難しい.無線がつながっていない時には停止させなければならない.機械の安全を理解し施工につなげていくことが重要である.
・山岳トンネルの施工では,発破掘削・自動穿孔,遠隔吹付,ロックボルト自動打設,覆工自動施工等が進んでいるが,コストが高く発注者側からの評価が得られていないのが状況である。自動化することでベテランの現場職員5人編成で回していたが,地元の人でもできるようになってきた.危険な現場であり,これまでは作業員どうしのコミュニケーションにより安全を確保してきたが,機械が人を認知してオペレーターを支援するシステムを開発している.
・ローカル5Gを活用して8Kで全体映像を撮影し,見たい場所をタップすると2Kの映像がスマートフォンに飛んでくるシステムを開発した.
・建設現場で一番のネックは通信である.大型建機が動くと遮蔽物になったり,トンネルの中で電波が不安定になったりして遠隔施工が難しくなっている.

(4)建設DX戦略の展開と課題
・建設DXの推進には人材が足りない.他の工学と連携して取り組む必要がある.
・通信が課題である.
・情報を手にしたらそれを皆で共有するためのプラットフォームを作らなければ生産性は上がらない.

3.おわりに
 情報化施工からデジタル土木施工に至る変遷と,土木業界における自動化・ロボット化やデータプラットフォーム,BIM/CIM等の最新動向についてお話をいただいた.
 デジタル化による生産性向上に近道はなく,目標に向かって1つずつ取り組んでいかなければならないこと,通信と人材育成,業界を超えた連携が重要であるとのお話が印象的であった.
 デジタル土木施工において,生データの確認,安全確保が重要である点は,私達がデジタル化に取り組む際にも,肝に銘じる必要があると感じた.
 多岐にわたる話題を短時間でわかりやすく講演いただき,質問にも気さくに応じていただいた小島英郷氏に感謝申し上げます。

以 上
講演会担当:浅岡、長久保、大場,山岡(記)

写真ー1講演者(拡大画像へのリンク)

写真ー1 講演者

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写真ー2会場の様子(拡大画像へのリンク)

写真ー2 会場の様子

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