建設部会のホーム行事案内2023年5月 建設部会講演会(報告)
■日 時:2023年5月17日(水) 18:00〜19:30
■講演名:水管理・国土保全分野のDX
■講演者:国土交通省水管理・国土保全局治水課企画専門官 早川潤氏
■講演場所:機械振興開会 6-66会議室
■参加者:会場参加者29名+WEB参加者190名
1.はじめに
国土交通省水管理・国土保全分野におけるDXの取り組みとして、「インフラ分野のDX」、「ビジネス・インテリジェンス(BI)」、「DXを目指すにあたって現場で発生している問題」、「国土交通省におけるデジタルマップ活用の流れ」、「荒川下流河川事務所におけるデジタルマップ活用事例」についてご講演いただいた。
2.インフラ分野のDX
社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの理解を促進すると共に、安全・安心で豊かな生活を実現すべく、省横断的に取り組みを推進している。
3.ビジネス・インテリジェンス(BI)
ビジネスとは、「興味・関心」のことであり、ビジネス・インテリジェンスとは、「興味・関心があることがひと目でわかり、ネクストアクションがあること」である。
ネクストアクションを起こすには、通常業務により自然と溜まるデータを基に、[1]〜[6]に示すようなBIのループの構築が肝要である。
[1] 日常業務で自動的にデータが溜まる
[2] 溜まったデータを可視化する
[3] 業務を知っている人がそれを見て現状を把握する
[4] 目標に向かって何が不足しているかを考える
[5] 改善業務ができたら、試して見る
[6] 日常業務に改善策を適用して、溜まったデータがどう変化したかを検証する。
ビジネス・インテリジェンスを導入した河川の巡視・点検の高度化として、ICT技術を活用したRiMaDIS(River Management Date Intelligent Systemの略称、河川巡視・点検・対策等の維持管理業務を支援する全国統一版のデータベースシステム)を導入し、安全・安心を持続的に確保及び業務効率化を図っている。
また、流域治水への転換を推進していくうえで、流域治水データプラットフォーム(仮称)の構築に取り組んでいる。アプリケーション層では、三次元河川管内図、ドローン巡視・AI画像診断、除草の自動化などがある。
4.DXを目指すにあたって現場で発生している問題
業務のDXに向けた現状の問題点は、そもそもデジタルデータが無いことなど、理想(DX)と現実のギャップを埋めることが重要である。
河川上空のドローン飛行の実現するためには、現実は河川占用図が内部情報であること、CADで作成されているがデータに位置情報が付与されていないこと、などがあり、河川空間に関する機械判読可能データを整備する必要がある。
DXの3つの避けられないステップがある。
Step1;デジタイゼーション(Digitization)
アナログ・物理データのデジタルデータ化 → デジタルデータフォーマットの標準化
Step2;デジタライゼーション(Digitalization)
個別業務・製造プロセスのデジタル化 → 業務や工事プロセスのデジタル化
Step3;デジタル・トランスフォーメーション(DX)
組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革 → 社会の変革
その他の問題として、位置情報が含まれていない2次元CADデータ、構造化データとしての標準化、座標系や属性が定義されたデータフォーマットの標準化がある。合わせてデータ準備に全工数の80〜90%を使用している現状から、その手間をいかに減らすかを意識することが必要である。
5.国土交通省におけるデジタルマップ活用の流れ
国土交通省データプラットフォーム(DPF)には、[1]カタログ機能、[2]提供機能、[3]可視化機能の3つの機能がある。
国交省DPFをハブとした可視化機能の強化として、線的・面的・立体的な各種データをデジタル地図として整備し、インフラ計画、災害リスク、土地利用規制などの各種デジタル地図を重ね合わせて一覧表示を進めている。
令和5年度のPLATEAUは、「実証から実装へ」をプロジェクトのコンセプトに掲げ、まちづくりDXのデジタル・インフラである3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化のエコシステムの社会実装を目指す。
6.荒川下流河川事務所におけるデジタルマップ活用事例
荒川下流河川事務所では、河川管理業務の効率化・高度化を目的に、3次元データを活用した河川管理の取り組みを進めており、全国に先駆けて、荒川下流域のデジタルツイン構築の運用方針を策定し、「荒川3Dデジタル河川管内図」を公開した。インターネットにより「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」利用が可能な形で公開し、働き方改革や行政サービス向上に寄与している。
今後は、3D河川管内図プラットフォームによるデジタルツインの実現を目指している。
7.おわりに
講師の国土交通省水管理・国土保全局治水課企画専門官 早川 潤様には、国土交通省の水管理・国土保全分野のDXの取り組みと、荒川河川事務所で構築された3D河川管内図について、視覚的に画像や映像を踏まえながらわかりやすくご説明いただきました。限られた時間の中でしたが活発な質疑応答も行われました。今回の講演会の講師をお引き受けいただいた早川 潤様に心より感謝申し上げます。
以 上
講演会担当:片岡、河北、影山、片山(記)
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