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建設部会

2023年4月 建設部会講演会(報告)

■開催日時:2023(令和5)年4月19日(水) 18時〜19時30分
■講 演 名:土木技術と鉄道
■講 演 者:公益財団法人鉄道総合技術研究所 フェロー垂水尚志氏
■講演場所:機械振興会館6階 6D-4会議室(東京都港区芝公園3丁目5番8号)
■講演方法:対面+WEB会議方式
■参 加 者:会場参加 31名+WEB参加140名

1.はじめに
 鉄道が国の近代化の主要な牽引役であったことから、鉄道土木は近代土木技術の礎づくりに貢献してきた。特に東海道新幹線は、建設技術とメンテナンス技術の発展に大きく貢献している。今回、その鉄道土木が土木の発展に寄与していることを再認識するため、垂水氏にご講演いただくことを企画した。
 この講演会が建設部門技術士の知識・技術向上につながることを期待する。

2.講演の概要
 「土木技術と鉄道」と題して、近代土木技術の発展の歴史と、その中で土木学会や鉄道土木が果たしてきた役割について配布資料をもとに講演された。以下にその概要を記載する。

(1)土木学会と鉄道
 土木技術発展への鉄道土木の貢献に関する個人的見解は、以下の5点に要約される。
 [1]近代土木技術の礎づくりに貢献した
 [2]東海道新幹線建設で土木技術は飛躍的に進展した
 [3]構造物の耐震設計の発展に貢献した
 [4]構造物のメンテナンス技術の向上に貢献した
 [5]標準、指針類の整備に貢献した
 土木学会は1914年(大正3年)に設立された。古市初代会長講演(1915年)では、各種学会の設立状況、土木学会設立が遅れた理由、技術者の心構え等について述べている。土木学会設立が遅れた理由として、1898年帝国鉄道協会が設立され、土木の一部分がここに収容されたことを挙げている。
 また技術者の心構えとして、自身のフランス留学の経験を述べ、土木学会会員は将や指揮者としての素養を身につけなければならないと主張している。
 土木学会の設立後は、土木学会のリーダーシップのもとで日本の土木技術は大きく進展した。

(2)新幹線の誕生と技術開発
 1957年(昭和32年)5月のヤマハホールにおける「東京―大阪間3時間への可能性」の講演以後、高速鉄道実現へ向けて新型の試験機器類が急速に製作され、各分野の基礎研究が急展開で実施された。また、工事の開始後は新工法の適用やそれに伴う現場測定が精力的に実施され、多くの実験や現場測定の結果はその後の土木技術の発展に寄与したと考える。
 1967年3月に作成された「高速鉄道の研究―主として東海道新幹線について」(日本国有鉄道 鉄道技術研究所監修)には、線路分野として地質調査、土質調査、路盤および土工、軟弱地盤、橋りょう、トンネル、地盤振動、建物が取り上げられている。また、軌道分野として、構造、レールの断面、レールの材質、レールの溶接、レールの締結装置、コンクリート枕木、木マクラギ、道床、軌道試験車、レール探傷車、軌道整備限度が取り上げられている。
 東海道新幹線の構造物は、営業開始後の初期故障的なトラブル対応、それに続くメンテナンスにより次第に強化された。この過程で耐震補強を含む土木分野のメンテナンス技術は向上した。大規模地震を考慮した耐震工法の一つとして盛土の鋼矢板締め切り工法が考案され施工された。国鉄本社の技術課題の成果であり、1970年代半ば頃に鉄道技術研究所に新設された大型盛土振動台が活用された。委員会の意見をもとに鉄道技術研究所が実験、解析を担当した。

(3)スマート国家
 高齢化、労働人口の減少等の人口問題、社会保障費の増大等の財政課題、エネルギー問題、グローバル時代における国際競争力の課題、地震、降雨等による自然災害の多発等は日本の持続性を考えるうえで重要な課題である。国はこれらの課題に対応する施策を検討し実施しているが、解決すべき課題は山積している。
 こうした状況下で、土木陣営は何をすべきであろうか。最適な国土利用計画を追求し、これを具体化していくことである。2016年1月に発表された科学技術基本計画における超スマート社会やスマート国家の実現が持続可能な国づくりであり目標となろう。国鉄の民営分割化後30年以上が経過し、JR、民鉄等の経営主体の経営理念は高まり、また、安全性、環境適合性、快適性、利便性等の関連技術力は向上している。個別の技術力をさらに深めることが基本であるが、スマート国家の実現を目指すことが総合力を有する土木に相応しい施策である。国や関連の学協会のリーダーシップの発揮、全産業の参画が前提であるが、移動手段はもとより幅広い技術分野を包含している鉄道土木陣営が果たすべき役割は大きい。難しく時間を要する課題であり、特に若い人達には新たな国造りという視点でこれまで以上に幅広い視点から業務に取り組んで欲しい。
 スマート化とは、ICT等の最新技術を駆使して、安全性、利便性、快適性、経済性、効率性、経営の健全性等の観点から最適なシステムを構築することであり、スマート国家は、スマート交通、スマートグリッド等からなるスマートシティやコンパクトシティの集合体であるといえる。

3.おわりに
 最適な国土利用を考えた場合に超スマート社会が目指すべき方向であり、超スマート社会を構築したからといって最適な国土利用ができるわけではない。順番が逆にならないよう注意しなければならないという言葉がとても印象に残りました。最後に大変貴重なご講演をいただいた垂水氏に心から感謝申し上げます。

講演担当:加古、太田、河瀬、久多羅木、喜多(文責)

写真ー1講師(垂水尚志氏)(拡大画像へのリンク)

写真ー1 講師(垂水 尚志氏)

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写真ー2講演会会場(拡大画像へのリンク)

写真ー2 講演会会場

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