ナビゲーションを飛ばしてコンテンツへ
  • 建設部会のホーム
  • 地域本部・県支部・部会・委員会
  • 公益社団法人日本技術士会
  • RSSについて
建設部会

2023年2月 建設部会講演会(報告)

■開催日時:令和5年2月15日(水) 18時〜19時30分
■講演名:極端な気象現象による被害をどのようにして軽減させるのか?
     気象業界からのアプローチ 〜予測とその利用について〜
■講演者:一般財団法人 WNI 気象文化創造センター 事務局長 三枝 茂 氏
■講演場所:機械振興会館 6-66会議室 (東京都港区芝公園3−5−8)
■参加者:会場 19名(内 非会員1名)、WEB 109名

1.はじめに
 本日は、気象予測の最前線でご活躍されている講師をお招きし、その豊富な知識と貴重なご経験等を拝聴する講演会を企画致しました。この講演会が技術士の更なる知識・技術向上に繋がることを期待します。

2.講演内容
(1) 極端な気象現象を引き起こす原因→気候変動の仕組みを探る
 a.極端な気象現象(極端現象)とは
 ・高温  日最高気温が35℃以上
 ・低温  平年以下の気温が長期間続くこと
 ・強い雨 1時間降水量が50ミリメートル以上
 ・増え続ける極端な気象現象 平均的には右肩上がりで増加
 b.気候変動が原因とされる災害
 ・地球温暖化、高温、山火事、干ばつ、水不足、農作物不作、大雨、洪水
 c.気候変動のしくみ
 ・宇宙からもたらされる影響:太陽活動の変動や隕石の衝突など
 ・地球本来の動きによる影響:自転軸や公転周期変化によるもの、火山噴火による日照低下
 ・人為的な影響:温室効果ガスの排出
 d.気候変動の歴史(150万年前〜現在)
 ・これまでの変化を見る限りでは、現在は温暖期のピークに相当しており、さらに上昇する可能性がある。
 e.気候変動の将来予測
 ・温暖化対策をしない場合:2.6〜4.8℃上昇 厳しい温暖化対策実施の場合:0.3〜1.7℃上昇
 ・現状 世界の平均気温は1891年の統計開始以降約0.95℃上昇→産業革命以降に1℃近く上昇、3℃以上上昇すると生物危機が顕在化する
 f.まとめ
 ・気候変動には様々な要因が複雑に関係する
 ・過去の気候変動では氷期と間氷期を繰り返していて、現在は間氷期に相当
 ・現在は温室効果ガスの排出量増加に伴い、世界的に平均気温が上昇傾向にある
 ・極端な気象現象の頻度も増加している

(2) 気候変動を考慮した防災対策の在るべき姿
 a.気候変動を考慮した防災対策の考え方(緩和と適応)
 ・気候変動による影響を回避するためには温室効果ガスの排出削減(緩和)が重要
 ・緩和を最大限実施しても避けられない影響に対しては被害の軽減(適応)が重要
 b.気候変動を考慮した防災対策の考え方(ロス&ダメージ)
 ・全体:ロス&ダメージに対して基金を設置
 ・日本:「気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージ」を公表
 c.気候変動を考慮した防災対策の考え方(気象業界としてのアプローチ)
 ア)適応策:極端な気象現象への警戒(短期対策)
 ・「アジア太平洋地域における官民連携による早期警戒システム導入促進イニシアティブ」の立ち上げ
 ・リスク分析 災害対策判断支援サービス
 ・データ収集・分析
 ・予測(短期予測の例) 地上気圧・降水量予測 水蒸気量予測 ポテンシャル雨量予測
 ・短期予測の範囲とその限界 通常の予測モデルでは概ね1週間、長くて1ヵ月が限界
 ・警戒情報を伝える 予測データの演算→情報の判定と発信→顧客への早期警戒情報発信
 ・評価 情報を評価し予測及び対策にフィードバック
 イ)緩和策:10〜100年単位の変化への備え(中長期対策)
 ・関連データ収集→リスク想定や基準値の分析→BCP(事業継続計画)やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への反映
 ウ)緩和・適応策:次の氷期の想定(千〜万年単位)(超長期対策)
 ・ドームふじ基地で得られたアイスコアによる72万年間の気候変動の復元
  →地球の公転軌道や自転軸の傾動による寒冷期の到来(3万年くらい先?)
  →リテラシーアップも重要

(3) どのようにして気象情報を利用し、自らの武器にしていくべきか?
 a.短期:気象予測を活用し、来たる極端気象リスクに備える。ただし、気象予測は常に変化するためこまめにチェックが必要
 b.中期〜長期:観測データや被害データを活用し、対象となるエリアや構造物などの弱点(どの程度の雨や風で被害が生じるのかなど)を知っておくことが必要。これを元に閾値を設定しておく
 c.長期〜超長期:地球の歴史にも理解を示し、過去の変化を見ながら将来への心構えを持ち、未来へ継承していく必要がある。

3.おわりに
 本日は極端な気象現象の原因、気候変動を考慮した防災対策、及び気象情報の利用の仕方等についてご説明をいただき技術士としての更なる知識・技術の向上を図ることが出来ました。
お忙しい中にも快く講演会の講師をお引き受けいただいた三枝茂氏に心より感謝申し上げます。

講演担当:石川、山岡、宮下、金子(文責)

写真ー1講師近影(拡大画像へのリンク)

写真ー1 講師近影

(画像クリックで拡大 26KB)

写真ー2講演会風景(拡大画像へのリンク)

写真ー2 講演会風景

(画像クリックで拡大 44KB)

このページのお問い合わせ:建設部会

ページトップへ