ナビゲーションを飛ばしてコンテンツへ
  • 建設部会のホーム
  • 地域本部・県支部・部会・委員会
  • 公益社団法人日本技術士会
  • RSSについて
建設部会

2022年7月 建設部会・講演会(報告)

日 時:令和4年7月20日(水)18:00〜19:30
講演名:「新幹線橋梁の計画と設計」
講演者:(独立行政法人)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 設計部長 玉井真一氏
講演場所:会場/オンライン併用ハイブリッド形式
参加者:35名(会員:27名、非会員:8名)WEB参加者131名

1.はじめに
 玉井氏は、1987年に東急建設会社に入社後、2002年に現在の鉄道建設・運輸施設整備運輸機構の前進である日本鉄道建設公団に入社され、2015年に現職に就かれている。2004年に東北新幹線山内丸山架道橋の設計・施工に携われ、2011年より補強盛土一体橋梁の研究など多方面で活躍されている。
 本講演会では、新幹線橋梁の計画と設計について講演いただいた。

2.講演内容
−鉄道・運輸機構の紹介−
・旧日本鉄道建設公団、船舶整備公団等が母体なり平成15年10月に独立行政法人として設立された。
・「新幹線鉄道等の鉄道施設の建設、貸付け」、「内航船舶の建造、共有」「鉄道施設整備等への助成」、「地域交通への出資、資金の貸付け」、「JR二島貨物会社の経営自立支援」、「旧国鉄の資産処分・年金支払い」等の役割を担っている。
・その他都市鉄道建設事業、災害復旧支援として三陸鉄道の復旧事業、南阿蘇鉄道の復旧支援も行っている。

(1)新幹線建設のしくみ
・幹線鉄道建設主体の歴史背景として、1872年新橋・横浜間の開業、1906年鉄道国有法による国有化、1949年日本国有鉄道の発足、1964年日本鉄道建設公団の設立、1987年国鉄分割民営化と「旅客鉄道会社が建設主体とされている新幹線鉄道建設に関する事業の日本鉄道公団への引き継ぎに関する法律」の制定、2003年鉄道建設・運輸施設整備支援機構の独立行政法人化が行われ今日に至っている。
・鉄道建設・運輸施設整備支援機構で建設されてきた新幹線として、北陸新幹線(〜長野)、東北新幹線(〜青森)、九州新幹線,北陸新幹線(〜金沢)、北海道新幹線(〜新函館北斗)、建設中の新幹線として九州新幹線(西九州ルート)(2022.9.23開業予定)、北陸新幹線(金沢・敦賀間)(2023年度末開業予定)、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)(2030年度末開業目標)があり、これらは全て整備新幹線と位置付けられている。また新幹線とは時速200km以上で走行できる幹線鉄道と定義されている。
・整備新幹線の建設・運営は、上下分離方式で行われており、建設主体(建設・保有)を鉄道・運輸機構,営業主体(営業・維持管理)を鉄道事業者(JR各社)が行っている。
・整備新幹線の財源は、国、地方公共団体からの出資と貸付料等で割り当てている。

(2)新幹線の構造物と橋梁の計画
・新幹線の構造物は、土構造、高架橋、橋梁、トンネンルに区分され、比率として東海道新幹線等新幹線建設初期の頃は半数以上が盛り土、その後の山陽新幹線、上越新幹線等山岳部のルートが増えるにつれトンネル構造が増えてきた。また盛り土は地盤沈下の影響で路盤が安定するのに多くの時間を要することなどから構造物の比率が高くなってきている。またトンネンル構造での経済効果(用地買収費,基礎杭等不要による建設費の削減)の他、雪害対策(除雪・消雪)、列車の走行性(橋梁構造物のたわみ)の点で有利であることも踏まえて、トンネル構造の比率が高くなってきている。
・橋梁の構造計画(橋梁形式の選定)について、材料の区分(PC橋・鋼橋)、形状の区分(主桁の形状)、構造の区分(桁橋、ラーメン橋、アーチ橋、トラス橋、斜張橋、エクストラドーズド橋等)がある。また道路等の交差部で桁下クリアランスの確保のために下路桁を採用し急勾配を避けることもある。新幹線橋梁の場合、一般的に低コスト・低騒音のPC橋を標準としているが、特殊事情(幹線道路、鉄道との交差)がある場合等では架設が早い鋼橋を採用することが多い。なお鋼橋採用にあたってはコンクリート床版の採用、制振材等を用いて騒音振動対策を図っている。
・橋梁の構造計画(架設方法の選定)について、PC橋の場合、クレーン架設、架設桁架設、押出し架設、張出架設、プレキャストセグメント工法、移動型枠工法等がある。鋼橋の場合、クレーン架設、送り出し架設、大型搬送車による架設、トラベラクレーン架設、フローティングクレーン架設、ケーブルエレクション工法がある。
・橋梁の構造計画(橋梁のスパン)について、問題となるのはスパン長であり、鉄道橋でスパン長が100mを超える橋梁は建設中を含めても、道路橋を比べ少なく、大半が新幹線橋梁である。道路橋と比べスパン長が100mを超える橋梁が少ないのは技術的な問題でなく、桁のたわみによる走行安全性の観点で採用を控えている。
・鉄道橋梁の長大化(長スパン化)について、コンクリート橋では多くが新幹線橋梁である。鋼橋では新幹線橋梁では合成桁にすることが増えている。
 また近年やむを得ず長スパン化とする理由として、新幹線ルートには、既に道水路が建設されていることや線形(最小曲線半径)の制約から道水路を避けられないことで角度の小さい斜角で交差することが多いためである。
・長大化に対応した構造形式として、桁の連続化、地震時水平力分散構造、吊形式橋梁等がある。新幹線橋橋梁における吊形式橋梁の採用にあたっては、たわみの抑制から斜張橋に比べケーブル長が短く主桁の剛性の高いエクストラドーズド橋の採用が多い。

(3)新幹線橋梁の設計
・設計法の変遷として、国鉄時代は許容応力度法、平成4年から限界状態設計法の採用、平成16年から性能照査型設計法が導入され現在に至っている。
・性能照査型設計法による新幹線橋梁の設計法の考えは、要求性能は乗客のための要求性能(走行安全性,乗り心地等)と、それらを満足させるための車両への要求性能、軌道への要求性能、橋梁への要求性能があるということが鉄道橋の性能設計の考え方である。
・建設の手順は、「設計」、「照査」、「施工」、「検測」の手順で行われ,特殊な橋梁においては「照査」段階で走行シミュレーションを行う。また建設後に試運転による「検測」を行い、車上(電気軌道総合検測車による輪重と横圧の比、変位、加速度等)または地上(ピアノ線方式または画像処理方式によるたわみ測定)で要求性能の確認を行う。
 さらに軌道工事の段階で、列車通過時に軌道面が平坦となるよう、桁たわみ分だけ持ち上げておくための軌道補正(打上作業)を行う。
・要求性能(走行安全性,乗り心地)を満足させるためのたわみの限界値、角折れの限界値が定められている。
・軌道の種類としてバラスト軌道、スラブ軌道があるが、維持管理性の向上によるLCCの縮減から一般的にはスラブ軌道が採用されている。なおスラブ軌道の場合軌道補正時の打上可能量に限界(30mm)があるので、橋梁設計段階から綿密な検討が必要である。
・橋梁の変位(たわみ)には、列車通過時の短期変位と、主として温度変化による長期変位があり、変位対策の事例として、北陸新幹線浅生架道橋(スパン割の工夫で橋梁前後の乗り心地を改善)、東北新幹線山内丸山架道橋(すべり支承の使用、斜材の断熱で温度変化の影響を軽減)がある。
・インテグラ化への挑戦として、ジョイントレスによる桁のたわみ軽減と乗り心地の向上を期待して、補強盛土一体橋梁の開発に取り組んでおり、事例として、北海道新幹線中学校線架道橋(橋長12m,RCスラブ桁)、三陸鉄道ハイペ沢橋梁(橋長60m、SRC下路桁)、西九州新幹線原種架道橋(橋長30m、PCT形桁)がある。

3.おわりに
 新幹線橋梁の計画と設計についてお話しをいただいた。
 計画・設計においては走行安全性と乗り心地に力点を置いていること、性能の照査は、設計・照査・検測の3段階で行われ、特に変位を小さくするため各段階で綿密な種取り組みがなされていることを理解した。
 普段当たり前のように利用している新幹線、鉄道について非常に綿密な計画・設計がなされていることではじめて快適で安全な交通手段として利用させていただいていることを改めて痛感した。非常にわかりやすく講演いただいた鉄道建設・運輸施設整備支援機構 玉井真一氏に感謝申し上げます。

以上

(写真ー1)講演者;玉井真一氏(拡大画像へのリンク)

(写真ー1)講演者;玉井真一氏

(画像クリックで拡大 21KB)

(写真ー2)講演会の開催状況(拡大画像へのリンク)

(写真ー2)講演会の開催状況

(画像クリックで拡大 44KB)

このページのお問い合わせ:建設部会

ページトップへ