建設部会のホーム行事案内2022年8月 建設部会講演会(報告)
日 時 :2022年8月24日(水)14:45〜15:50
講演名 :茨城県の土木行政について
講演者 :茨城県 土木部長 田村 央 氏
講演場所:茨城県県南生涯学習センター 中講座室1(5階) 茨城県土浦市大和町9番1号 ウララビル
参加者 :会場参加者19名(会員19名)WEB参加者36名(会員のみ)
1.はじめに
「茨城県の特徴」、「茨城県内の主な事業」、「建設業界における働き方改革や生産性向上に向けて」の3つのテーマについてご講演いただいた。
2.茨城県の特徴
茨城県は自然に恵まれており、可住地面積が多いという特徴を有している。
茨城県の県民所得は今や全国6位となっている。県の開発プロジェクトや様々なインフラ建設、都市開発により大きく発展してきている。
茨城県の産業は第3次産業が約6割、第2次産業が約4割である。全国屈指の農業県であることが売りである。東京中央卸売市場の青果物取扱高は全国1位である一方、1戸あたりの生産農業所得は全国10位である。そのため、「儲かる農業」への取組を進めている。
過去10年間の県外企業立地件数が全国第1位である。圏央道が開通して以降、工業団地の価格が下がり、優遇措置による企業の引き合いが増加しているためである。通年では立地面積が2位で、県外企業の立地件数は全国で1位となっている。
人口減少が進んでいる。令和3年の1年間で17,234人減少している。特徴としては南北問題と呼んでいる南側の人口増加に対し、県北の大きな都市は人口が減少している点にある。県北は過疎化、人口流出がとまらない問題を抱えている。2つ目は社会増減の男性が増えていて、女性が減っている点にある。女性が大学進学等で県外に出ていくと戻ってこない。女性の社会減を深刻な問題として捉えている。そのため、多様性のある人材が活躍できるような取り組みを進めている。
昨年度の3月に第2次茨城県総合計画「新しい茨城」への挑戦を策定したところである。活力があり、県民が日本一幸せな県を基本理念とし、県民幸福度No.1を目指しながら県として総合行政を進めていく。
3.茨城県内の主な事業
(1)道路
圏央道の県内区間は2車線しか整備できていない。暫定2車線は、正面衝突事故に繋がるといった安全性の問題や、トラブルが起きると通行止めが頻発化し定時性を確保できないといった問題がある。令和8年度までに全路線で4車線化する予定である。
東関東自動車道の潮来と鉾田間の約35kmは令和8年度までに全線開通の見込みである。鹿島港からの輸出・輸入増や常磐道のダブルネットワークができあがること、更には茨城空港のアクセス性が高まると期待している。
直轄国道は6号と50号、51号とあるが、国道6号の4車線化ができていないことが課題である。整備が遅れている理由は、圏央道に借入金だけではなく半分以上を国と県の税金が投入されている点にある。茨城県としては国に強く整備を働きかけている。
(2)空港
茨城空港は総合計画において旅客数85万人を目標に利用促進に取り組んでいる。新型コロナが落ち着いたら国際線の誘致、復活に向けて取り組みを進めていく。
茨城空港は成田空港や羽田空港の第三空港として位置づけられるのではないか。県の総合計画でつくばエクスプレス線の延伸を検討しているが、空港まで直接つながることで、災害時だけでなく多くの旅客を輸送できるようになることに意義を感じる。
(3)河川
平成27年に関東・東北豪雨で鬼怒川が決壊し、かなりの浸水を招いた。国の堤防整備を進めているところが令和3年9月に完了し、支川の田川では水門整備を進めている。
令和元年東日本台風では県央県北で大きな被害が発生。水戸のスマートICあたりが水没した。久慈川で堤防決壊が多数箇所で発生し浸水被害を招いた。ダムも緊急放流を実施した。直轄権限代行により、那珂川や久慈川で緊急治水対策プロジェクトを実施中である。従来の堤防整備、河道掘削だけでなく遊水地整備等により流域全体で治水を進めていこうと取り組んでいる。
(4)港湾
茨城港(日立、常陸那珂、大洗)と鹿島港が県内にある。前者は輸入が3,輸出が1,後者は輸入が1,輸出が2の割合である。日立港は日産自動車、メルセデスベンツの輸出入拠点や東京ガスLNG基地によるエネルギー拠点であることが特徴である。常陸那珂港はコンテナターミナルやコマツ、日立建機及びSUBARUの輸出拠点であることが特徴である。首都圏に何かあった時に機能することが大事である。また、海の玄関口として利活用を図っていくことが県の大事な施策である。
鹿島港は多くの企業が集積している。また、秋田県と千葉県銚子沖に洋上風力発電を整備するための機材の基地港湾として指定された。
CO2排出量の多い事業所が臨海部に立地している。カーボンニュートラルポートに関する取り組みをしっかりと進めていく。この3月にはカーボンニュートラル形成計画を作成した。
(5)公園
公園の利活用を進めている。偕楽園ではPark−PFI制度を活用した迎賓機能を備えたパークレストランを計画し、来年の春オープンする予定である。閣僚会合の会場の1つとできないかと考えている。また、有料化し、トイレの洋式化やバリアフリー、チームラボによるイベント、左近の桜復活に向けた寄付金集めなどに活用している。通年型の公園にしたいというところで日々努力を進めている。
4.建設業界における働き方改革や生産性向上に向けて
様々な取り組みを総合的に進めている。その結果が評価され令和元年度にはi−Construction大賞を受賞した。ボトルネックは3次元データをしっかりと使い込んでいくことにある。県外のレンタル企業等への依存状況から脱却し、地元建設業の中で実施体制を整えることを目指して発注方式としてチャレンジいばらき1型、2型という県独自の方式を導入した。
しかしながらこれもあまり進まないということで、今年の4月からチャレンジいばらき簡単活用型を導入した。従来測量で構わなく3次元設計データ作成は内製化し、ICT施工もしくは出来形管理を3次元で行うという方式である。慣れ親しんでいくということが将来の建設業の生産性向上に繋がるとして、発注者としてもインセンティブを少しでもつけられないかと取組みを進めている。建設現場においても3次元で物事を考えられるよう進めていきたい。
それを一歩進めるとBIM/CIMの原則活用になるが、建築工事で一部活用予定である。
また、生産性向上のためにペーパーレスの推進を実施中である。情報共有システムを令和4年度から原則全ての工事で活用している。更にはコロナ禍で非接触という要請もありあらゆる契約、入札、許認可で電子化を進めていく。中小企業の方々に、いかに慣れ親しんでペーパーレス化を進めていただくのかが大きな課題であり、県も説明会や丁寧なアドバイスをしながら、進めていきたい。
その他遠隔臨場に取り組んでいる。ウェアラブルカメラにより執務室内で建設現場の検査、監督を行うもので今年度500件を目標に進めている。今は専任性としいているが品質確保していくことができれば緩和を図る方向で進めていくため、県としてもしっかりと進めていきたい。
4.おわりに
講師の茨城県土木部長 田村 央様には、「茨城県の土木行政」について、わかりやすくご説明いただきました。限られた時間の中でしたが活発な質疑応答も行われました。今回の講演会の講師をお引き受けいただいた田村 央様に心より感謝申し上げます。
(以上)
講演会担当:片山、宮下、反町(記)
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