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建設部会

2022年5月 建設部会講演会(報告)

開催日時:2022年5月18日(水) 18時〜19時30分
講演名 :日本と世界におけるソーラーシェアリング技術の現状と今後
講演者 :環境エネルギー政策研究所 理事・特任研究員 田島誠氏
講演場所:機械振興会館6階 6D-1,2会議室(東京都港区芝公園3丁目5番8号)
講演方法:対面+WEB会議方式
参加者 :会場参加 21名(会員18名、非会員3名)+WEB参加 110名(会員のみ)

1.はじめに
 農業を続けながら太陽光発電事業を同時に行うソーラーシェアリングが注目を集めている。
 福島第一原発事故の教訓から、自然エネルギーの普及をライフワークと捉えて様々な事業に参画されている環境エネルギー政策研究所の理事・特任研究員である田島誠氏よりご講演をいただいた。

2.講演の概要
(1)ソーラーシェアリングとは何か?
 ソーラーシェアリングは、農水省では営農型太陽光発電、海外では一般的にagrivoltaicsと呼ばれ、簡単に言ってしまえば「同一の土地で太陽光発電と農業を同時に行う土地利用形態」のことである。1981年Fraunhofer ISEを設立したアドルフ・ゴッツバーガー(Adolf Goetzberger)が世界で初めてその概念を提唱し、2003年長島彬がsolar sharingと命名し実用化に導いた。現在、欧米や韓国では盛んに研究が行われ、ドイツ・フランス・中国では大規模商用施設ができている。日本が世界に先駆けているのは設置件数(3000件)と栽培作物の品目数(120品目)である。

(2)日本のソーラーシェアリング
 日本は設置件数で世界のトップである。富山県を除く46都道府県で設置実績があり、特にソーラーシェアリング発祥地である千葉県や、抹茶ソーラーシェアリングが盛んな静岡県が多い。しかし諸外国に比べ農地規模は狭く、0.3ha以下が90%を占める。
 また栽培作物の品目数でも世界のトップである。作付品目別の遮光率は、ほとんどの作物が35〜43%に分布している。しかし、遮光率73%の「きのこ類」、遮光率66%の「サカキ」、遮光率60%の「みょうが」、遮光率50%の「茶」など、遮光率の高い特殊品目が好まれる傾向にあり、農業の健全性という意味で課題が残る。

(3)世界のソーラーシェアリング
 現在ソーラーシェアリングが実際に行われている国は18カ国である。近年ソーラーシェアリングが伸びているのは太陽光発電自体が伸びているためである。太陽光発電のうち、水上ソーラーはその可能性の大きさが知られており、淡水の人工貯水池の表面積1%を水上ソーラーにした場合の発電量は、現在の世界の太陽光発電設備容量の半分を超えるほど大きいものになる。農業以外の産業では養殖ソーラーシェアリングや牧畜ソーラーシェアリングなどが伸びてきている。

(4)課題を解決してくれるソーラーシェアリング
 太陽光発電や農業にまつわる問題をソーラーシェアリングが提供するサービスが解決できるので、近年ソーラーシェアリングが注目を集めている。
[1]土地利用コンフリクト
 太陽光発電と農業は適地が同じであり、平地の日当たりの良い土地がなくなってきている。ソーラーシェアリングによって、土地利用効率が向上する。
[2]生物多様性
 太陽光発電によって、生物多様性や生息域が失われている。ソーラーシェアリングによって、生物多様性が保全される。
[3]地球温暖化の悪影響
 地球温暖化によって、作物の収穫量と品質が低下する。ソーラーシェアリングによって、作物と農家を守ることができる。
[4]農業人口の減少
 農業の低収益性により、農業離れが加速している。ソーラーシェアリングによって、作物の付加価値を高め、経営が安定し、農業人口の減少を防ぐ。

(5)技術・研究・開発
・日本のソーラーシェアリング
・次々に開発される新技術(海外)
・新システム細型パネル(リネットちば)
・架台を生かした合理的な営農法の開発(東広島、掛川)
・温室ソーラーシェアリング
・ソーラーシェアリング国際会議(Agrivoltaics2022)

(6)法と制度
 第6次エネルギー基本計画における2030年PVエネルギーミックス目標は現在の設備容量のおよそ2倍である。生産性の高い土地を含むより多くの地域を開放すべきである。

(7)SDGsとの関連
 ソーラーシェアリングは、SDGsにある17の目標全てと関連があり、SDGs達成に貢献する。

(8)日本の課題
[1]売電主体で経済的なインセンティブが先行している。
[2]諸外国に比べ研究開発が弱い。
[3]資機材を海外に依存しすぎている。
[4]太陽光発電市場が崩壊している。

3.おわりに
 近年注目を集めているソーラーシェアリングについて、大変わかりやすいご講演を頂いた。また講義終了後には、質問に対してひとつひとつ丁寧にご回答を頂いた。大変貴重なご講演を頂いた田島様に心より御礼申し上げます。

講演担当:村山、太田、喜多(文責)

写真ー1:講師近影(拡大画像へのリンク)

写真ー1:講師近影

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写真ー2:講演会風景(拡大画像へのリンク)

写真ー2:講演会風景

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