ナビゲーションを飛ばしてコンテンツへ
  • 建設部会のホーム
  • 地域本部・県支部・部会・委員会
  • 公益社団法人日本技術士会
  • RSSについて
建設部会

2021年2月 建設部会講演会(報告)

日  時:令和3年2月17日(木)18:00〜19:30
講 演 名:「技術者倫理の基礎」
講 演 者:日本技術士会登録技術者倫理研究会 榎本 浩 氏
講演場所:機械振興会館 6階 6D−4会議室、(港区芝公園3-5-8)
参 加 者:251名(会員221名、非会員30名)−会場(地域本部含む)27名+WEB配信224名
コロナ対策:定員63名の会場で参加者は30名以内として、椅子の間隔を広めに配置、受付で検温、手指消毒、マスク着用を実施した。

1.はじめに
 技術者倫理は技術者がその業務を行うにあたり基礎的な素養である。その基礎的な内容を理解するため、日本技術士会登録技術者倫理研究会所属の榎本氏に講演をお願いした。

2.講演内容
 まず技術者倫理の骨格として「技術者倫理のなりたち」について話があり、組織の中で活動する技術者を念頭に「組織の中で」「コンプライアンス(積極的倫理と消極的倫理」「内部通報」について話があった。次に技術者倫理の話題として「問題解決の方法」「環境倫理」について話があった。

(1)技術者倫理の成り立ち
・技術者倫理はモラルをベースにする。モラルとは対人関係において、して良いことと悪いことを区別して行動しようという意識のことで、これが成熟すると倫理規範になる。倫理の順守には自分が守れば、他人も守るだろうという期待がある
・法は社会がそこいる人々に遵守するように強制する規範であり、法と倫理は補完の関係にある。技術者倫理はモラルの延長線上にあると考えるべきである。
・倫理が遵守されるために倫理規定があるが、規定の条目には、[1]対人関係、[2]モラルの価値基準、の2つがある。倫理規定は日常の業務において意思決定を導く原則として使うことが望ましい。
・価値観は必ずしも同じではないためモラルの不一致が起こる。この解決のためには事実に基づき適切なモラルの要素や理由を比べ、慎重な議論の中で行為の代替手段を講じることにより根拠ある判断にたどり着く。技術者倫理を学ぶとは、こうした場面で役に立つ技量を養うことにある。
・技術者は科学技術がもたらす危害を抑止し、公衆かを危機から救い、公衆の福利を推進するために働くが、その意思決定の基本に倫理がある。

(2)組織の中で
・技術者の多くは組織に所属して働いている。組織の中では組織員として、技術者としての立場があり、事態によってはその立場が対立することになる。その時、何を優先するかが組織の中で働く技術者として問題になる。
・組織の中の人間は、個人自らの利益を守る立場と会社の利益を守る立場があり、この立場が相反するとき、利益相反の問題が起こる。このとき技術者は真実を組織内で語り、倫理的な最優先課題へ組織が向かうようになったとき利益相反問題は良い方向へ行くのではないか。
・また、技術者は科学技術を公衆に説明するときには、ベネフィットだけで無くリスクについての説明も必要である。いわゆるリスクコミュニケーションが必要である。

(3)コンプライアンス〜積極的倫理と消極的倫理〜組織の中で
・コンプライアンスを「法令順守」と表記されることが多いが、ここでは「正直に、真実に即して法令を守り、信頼されるように行動すること」である。しかし組織風土によりとらえ方が異なるのも事実である。
・コンプライアンスと聞くと、〜してはいけないという「消極的倫理」が思い浮かぶ。しかし、「出来るだけ良いものを作ろう」という「良い仕事」へと行動を促す「積極的倫理」も必要ではないか。

(4)内部通報とは
・内部通報には、公衆の安全などを最優先する技術者としての責務と従業員として秘密を守らなければならない責務など相反する利益相反がある。しかし通報が公益に資する場合は、内部通報は正当化される。
・しかし、通報が正当化されるためには、やり方が重要である。通報すれば良いというものでは無い。技術者としての生活には、公益、個人の利益、コミュニティの利益がある。通報後おきる報復や組織全体がどうなるかも想定し、事前に周囲と対処法など検討し、孤立しない、させないことが重要である。

(5)問題の解決方法
・モラル問題の解決の基本は、対話によって共通の理解を見出すことである。最善でなくても次善がある。倫理はそのような解決がありえることを信じる生き方である。
・問題解決には自分の考え方が善悪の間のどの位置にいるかと言う線引き問題と、相反する課題が立ちはだかった相反問題がある。
・これらの解決方法として、セブンスッテップガイドというものがある。
・技術者倫理は道徳的な価値観を説くことではない。技術面で生じるモラルの争に直面する技術者などの解決能力を高めるための手段である。よって倫理的に思考する姿勢を身に着け、多数の意見を認めつつ、共通の意見をまとめることが重要。

(6)環境倫理(持続的成長、世代間倫理)
・近年環境問題が顕著になり、科学技術者は、新しい技術開発によって「持続可能性のある社会」を創り出すことが求められている。一方、新たな技術開発には未知のリスクが潜んでいる。そのリスクを許容レベルに抑え、社会に危害を与えないことが同時に求められる。
・世代間倫理は、現在を生きている人類が、環境問題の解決に当たって、先延ばしにせずに責任をもって行動するための根拠となる考え方である。これまでは、前世代の負の遺産も、次世代で修復可能であったが、最近の急速な科学技術の進展は、後の世に修復不可能なほどの大きな影響を与える。
・世代間倫理は、現在を生きている人類が、環境問題の解決に当たって、先延ばしにせずに責任をもって行動するための根拠となる考え方である。

(7)まとめ
・技術者倫理は、代表的な思想家の考えを学ぶものではなく、技術的な行為によって生じるモラルの争点に直面する技術者や管理者、公衆の能力を高める手段である。
・倫理的な課題に遭遇した時は、「適切な価値判断」を行い、「問題を解決するための行動を設計」し、「その行動を実践する意志力」が求められる。その姿勢を身に着けるため、行動の選択では常にモラルの争点の分析と技術者倫理が提案する解決法を実践できるよう、考える習慣づけが大切である。

3.おわりに
 講演は、技術者倫理の基本部分であり、技術士の資質の向上に役立つものであった。
 1時間30分にわたって、貴重な講演をしていただいた榎本氏に感謝申し上げます。                                     (以 上)

−講演会担当:太田、加古(記)
−WEB配信担当:大久保、越後、反町

このページのお問い合わせ:建設部会

ページトップへ