建設部会のホーム行事案内2020年11月 建設部会講演会(報告)
開催日時:令和2年11月18日(水) 18時〜19時30分
講演名 :公共工事の積算に係る動き
講演者 :大野 真希 氏 一般財団法人 日本建設情報総合センター積算システムセンター 参事
講演場所:機械振興会館 6階 6-67会議室(東京都港区芝公園3-5-8)
参加者 :20名(会員20名+Web配信:中国本部、鳥取県支部、岡山県支部、山口県支部、北陸本部、中部本部、四国本部、計7本部・支部)
1.はじめに
本日は、公共積算の最前線でご活躍されている講師をお招きし、その豊富な知識と貴重なご経験等を拝聴する講演会を企画致しました。この講演会が技術士の更なる知識・技術向上に繋がるものと確信しております。
2.講演内容
・日本における積算方式の変遷について
・積上型積算方式について
・ユニットプライス型積算方式について
・施工パッケージ型積算方式について
・担い手三法改正後の積算方式について
・今後の公共工事積算について
3.日本における積算方式の変遷について
日本の公共工事に係る積算方式は大きく分けて[1]積上型積算方式、[2]ユニットプライス型積算方式、[3]施工パッケージ型積算方式の3種類がある。
4.積上型積算方式について
メリットは、作業毎の単位あたり単価の内訳が分かりやすく現場の技術者が納得しやすい。また、定期的に公表される機械費(損料・賃料)、労務費、材料費などを更新することにより、建設市場の動向に追随した単価で工事価格を算出できる。
デメリットは、必要に応じて歩掛を改定するための施工合理化調査が各工種約5年周期で実施されるが、調査に膨大な費用と手間が掛かっている。また、屋外現地一品生産の土木工事においては、工種や現場の地域特性などにより、現場の実態を単価に反映できない歩掛が多い。
5.ユニットプライス型積算方式について
メリットは、[1]性能規定発注のため、受注者の工夫によって利益UPが可能になる。[2]工種毎にプライスが設定されているので、面倒な積上をする必要がなく、積算業務が効率化される。[3]合意単価から次期プライスを決定するため施工合理化調査が不要になる。
デメリットは、[1]単価表がないので応札者は作業内容が分かりづらく、予定価格を算出しづらい。[2]「新プライスが旧プライスを基本的に上回ることがない」というデフレスパイラルのプライス更新方法。[3]積上積算方式との積算体系の同時運用により、一物二価が発生。
6.施工パッケージ型積算方式について
メリットは、[1]作業条件毎に標準単価が公表されているため、応札者は積算単価の算出が容易である。[2]歩掛に比べて条件が括られているので、積算業務が効率化される。[3]合意単価と応札単価から次期プライスを決定するため歩掛の維持(施工合理化調査等の手間)が不要になる。
デメリットは、[1]単価表はあるが各機労材の標準単価に対する割合(価格ベース)が記載されているだけなので、詳細の使用数量等は分からない。[2]括ったはずの条件が積算の小規模対応などもあり、再び細分化されている。[3]標準単価更新に施工合理化調査結果が必要になったため、不要になったはずの歩掛の維持手間が復活した。
7.担い手三法改正後の積算方式について
品確法制定(施行)以降の公共工事積算の変化としては、積算方式の変遷では、基本的に“積算の簡素化”“積算業務の効率化”を目的としてきたが、品確法改正により“適切な予定価格の算出”が謳われてからは矛盾が生じている。
○以前は手計算や表計算ソフトで積算可能であったが、もはや積算システムがないと不可能な時代に!
○端数処理のルールが曖昧な部分があるため、端数処理の考え方の違いで工事価格が変化して問題になることも!
○工事が完了しないと補正係数が決まらない補正もあるため、スライドで出来高分、残工事分の金額を算出することができない!(工事完了まで正しい契約単価が決まらない)
8.今後の公共工事積算について
まとめとして、i-Constructionに順応した今後の公共工事積算を具現化していくには、受発注者が連携して制度改定や技術開発・活用を促進し、『建設生産システムの合理化による生産性向上の実現』という一つの目標に向かって邁進していくことが重要である。
9.おわりに
日本における積算方式の変遷について各積算方式のメリット、デメリットを含めて詳しくご説明をいただくとともに、現状における問題点及び今後の目指す方向性についてもご説明をいただき技術士としての更なる知識・技術の向上を図れました。
今回このコロナ禍で講演会の開催も難しくなっている折、快く講演会の講師をお引き受けいただいた大野真希氏に感謝申し上げます。
講演担当:河内、村山、太田、金子(文責)
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