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建設部会

2019年4月 建設部会講演会(報告)

日 時 :平成31年4月17日(水)18:00〜19:30
講演名 :トンネルインバートの問題と対策
講演者 :特定非営利活動法人トンネル工学研究会
       理事長 朝倉 俊弘(京都大学名誉教授)
講演場所:機械振興会館 6階 6−66会議室
参加者 :61名(会員51名、非会員10名)

講演内容
1.はじめに(背景)
・大きな地圧が作用する地山のトンネルでは、底盤部に十分な耐力を有するインバートを設置することとなっている。しかし、中には十分でない構造/施工のものも多く見られる。本講演では、参加者に問題を投げかけて一緒に考える機会となった。
・トンネル供用中に発生したインバートの変状としては、[1]鉄道トンネルでは側方からの塑性圧による破壊や下方からの盤膨れ、[2]列車通過時の繰り返し荷重により地盤材料が徐々に排出されることによる沈下、などがある。
・インバートへの過大な応力負担が施工・供用中に変状を生じさせ、僅かな変位でも供用中に問題となるケースがある。都市部での近接施工や小土被り、膨張性地山での施工や近年の偏平大断面、超高速鉄道への供用のためには、高品質で耐久性のあるトンネル建設が求められる。

2.インバートの基本
・インバートは、構造部材として[1]軸圧縮抵抗、[2]せん断抵抗、[3]曲げ抵抗といった力学的な機能を発揮する。
・インバートは、支保的インバートと覆工的インバートの二つに大別される。支保的インバートは、施工時の安定性向上、水平変位抑制、沈下抑制などに加えて、地山劣化や土粒子流出の防止などの目的で設置される。覆工的インバートは、長期的な耐久性向上や変形性能保持および将来の付加外力支持や不確定要素に対する余力保持を目的として設置される。
・盤膨れの発生原因としては、横方向からの荷重による最終内空変位量が最終天端沈下量の2倍以上となった場合や、含水比が施工中15%、変状後20%以上、あるいは単位体積重量が軽いといった条件で生じる傾向がある。
・日本でのインバートは標準設計によるものが多いが、海外ではフレキシブルな発想による設計がみられる。

3.インバートの設計
・インバート設置判断の目安としては、まず水路トンネルではその機能性からも全ケースで設置することとし、道路・鉄道では岩盤分類基準から判断される。また、地形的に偏圧条件にある、市街地などでの近接施工対策、地下水位の低下を避けたい、といった区間でも設置することとなる。
・インバート設計方法の選択としては、まず標準設計の適用を検討し、特殊な条件下にあると判断される場合には類似設計の転用を検討する。類似性および妥当性の認められる事例がない場合には解析により設計する。
・インバートの設計基準は、最初の昭和37年時点では地山の地質が軟弱な場合とだけ規定されていた。その後、長期的な安定性の判断などが追加された。新幹線のトンネルでは基本的に全区間での設置が規定されている。
・高速道路トンネルでは原則として、インバート中央部に設置される排水工の基準では、原則としてインバート上部に路盤排水工を設けることとしている。新幹線トンネルを都市部で建設する場合では、インバート下面に無孔排水管を設置する等の配慮がなされる。

4.底盤部の維持管理
・底盤、路面に発生する現象としては、インバートのせん断破壊や不等沈下などによる輪切りひび割れなどの底盤破壊や滞水、噴泥、氷盤などの排水不良によるものがある。
・盤ぶくれの変状には、曲げ破壊によるものと周方向からの荷重による圧縮破壊がある。

5.トンネル完成後のインバート隆起問題
・インバートの隆起問題について、複数の事例が紹介された。
・インバートの設置は問題箇所だけでなく、マージンとしてその箇所を少し余分にカバーする範囲に設置するのが賢い方法といえる。
・施工中に必要に応じてインバートを厚くすることが求められるが、現時点では現場で使用できる手引きのようなものはない。

6.李博士(台湾UGI)の研究
・台湾の研究者が日本やスイスを含む世界50か所のインバート事例を収集、分析している。海底トンネルなど一部の分析例が紹介された。

 講師の特定非営利活動法人トンネル工学研究会理事長(京都大学名誉教授)朝倉俊弘先生には、インバートの基本から隆起問題について多くの事例をまじえて分かりやすくご説明頂きました。ご講演に心から感謝申し上げます。

以  上

   講演会担当:武曽、村山、竹中、山下(記)

写真ー1:講師・朝倉俊弘氏

写真ー1:講師・朝倉 俊弘氏

写真ー2講演会場の受講者(拡大画像へのリンク)

写真ー2 講演会場の受講者

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