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建設部会

平成30年8月 建設部会講演会(報告)

日 時:平成30年8月24日(金)17:00〜18:30
講演名:気象庁の地震津波火山に関する情報について
講演者:東京管区気象台 気象防災部 地震津波火山防災情報調整官
     藤原 健治氏
講演場所:八千代エンジニヤリング株式会社 本社17階会議室
参加者:48名(会員41名 非会員7名)

1.はじめに
 気象庁の地震津波火山に関する情報について、「首都直下地震」、「南海トラフの巨大地震」、「気象庁の地震・津波情報」、「長周期地震動に関する観測情報」、「ゆっくりすべり(スロースリップ)」、「火山に関する情報」の6つのテーマについてご講演いただいた。

2.首都直下地震
 南関東では、数百年間隔で発生する関東大震災クラスの地震の間に、マグニチュード7クラスの直下型地震が数回発生する。大都市直下で発生した場合、多大な被害が生じる。
 首都直下のマグニチュード7クラスの地震は、30年間に70%の確率で発生するといわれており、防災対策の主眼が置かれている。地震の揺れによる被害は、全壊家屋が約175,000棟、建物倒壊による死者は最大約11,000人と想定されている。市街地火災の多発と延焼による被害は、焼失が最大約412,000棟、死者は最大約16,000人と想定されている。

3.南海トラフの巨大地震
南海トラフの巨大地震は三連動地震と言われており、駿河湾から四国沖にかけての海底を震源域として、東海・東南海・南海地震が連動して起きた場合に想定される巨大地震である。
 東海地震の想定震源域では概ね100〜150年の間隔で大規模な地震が発生しているが、東南海地震(1944年)でひずみが解放されず、安政東海地震(1854年)から158年間大地震が発生していないため、相当なひずみが蓄積されていることから、いつ大地震が発生してもおかしくないと言われている。
 東南海・南海地震は、概ね100〜150年の間隔で発生しており、今世紀前半での発生が懸念されている。

4.気象庁の地震・津波情報
 気象庁が発表する地震・津波情報の流れは、地震発生後、緊急地震速報→震度速報→震源に関する情報→震源・震度に関する情報→各地の震度に関する情報となる。
 津波による被害のおそれがある場合は、津波警報・津波注意報→津波到達予想時刻、予想される津波の高さ→各地点の満潮時刻、津波の到達予想時刻→津波到達に関する情報→沖合の津波観測に関する情報となる。
 緊急地震速報に利用している地震観測点は全国に約800箇所あり、地震観測点が多いほど地震を早くとらえることができる。
 また、震度観測点は東京都内に132地点、津波観測点は全国で約400地点ある。
 地震の揺れから身を守るためには、緊急地震速報を見聞きしたら、地震の揺れを感じたら、あわてず身の安全の確保が大切となる。日頃からの備えとして、住宅・建造物の耐震化、家具などの転倒・移動防止も大切となる。
 津波から身を守るためには、沿岸部や川沿いにいる人は、強い揺れを感じた時、弱い揺れでも長い時間ゆっくりとした揺れを感じた時、揺れを感じなくても大津波警報・津波情報が発表されたときは、直ちに高台や津波避難ビルなどの安全な場所に避難すること、津波は川を遡上するので川からはなれ安全な場所に避難することが大切となる。

5.長周期地震動に関する観測情報
 南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じる。このような地震動のことを長周期地震動という。
 高層ビルの固有周期は長周期の波と共振しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れる。長周期地震動により高層ビルが大きく長く揺れることで、室内の家具や什器が転倒・移動したり、エレベーターが故障することがある。
【長周期地震動による事例】
 〇平成23年東北地方太平洋沖地震(M9.0)
  ・東京の高層ビルでゆっくり長く続いた揺れ【震源から400km】
  ・大阪市の高層ビルでエレベーターケーブル損傷【震源から800km】
 〇平成16年新潟県中越地震(M6.8)
  ・六本木ヒルズのエレベーターケーブル損傷【震源から200km】
 〇平成15年十勝沖地震(M8.0)
  ・苫小牧での石油タンク火災(スロッシング)【震源から250km】
 南海トラフにおける巨大地震では、東京・名古屋・大阪等に立地している長大構造物に大きな揺れが生じる懸念がある。都内の長周期地震動の揺れは10分間以上の可能性があると言われている。

6.ゆっくりすべり(スロースリップ)
 スロースリップ現象とは、プレート境界がゆっくりすべる現象で、ひずみ計・傾斜計・GNSS観測などによって地殻変動として検出される。このスロースリップ自体では、人が感じるような揺れを発生することはない。ただし、スロースリップには地震計で捉えら
れる種々の地震挙動を伴う場合がある。
 東海地方から四国、日向灘の南海トラフ領域にかけては、低周波地震(微動)活動を伴うことが知られています。この低周波地震(微動)のマグニチュード(M)は1程度より小さく周期も長いという特徴があり、人が揺れを感じることはありません。
 一方、房総半島沖では低周波地震ではなく通常の地震が発生します。過去の活動では最大M5クラスの地震が発生し、最大震度5弱の揺れが観測されたことがある。
 ゆっくりすべりには水の関与が指摘されており、その様な水の多寡や摩擦状態の違いによって発生する地震現象に違いがあらわれるものと考えられている。

7.火山に関する情報
 気象庁で提供する火山の各種情報には、噴火警報及び予報として、噴火警報(居住地域)又は噴火警報、噴火警報(火口周辺)又は火口周辺警報、噴火警報(周辺海域)、噴火予報がある。
 その他の情報等として、火山の状況に関する解説情報、噴火速報、火山活動解説資料、週間火山概況、月間火山概況、噴火に関する火山観測報、降灰予報(定時・速報・詳細)、火山ガス予報、航空路火山灰情報等があり、いずれの情報も「気象庁のホームページ」に掲載されている。
 噴火警報は、警戒が必要な範囲を明示して発表され、その対象としている火山現象は大きな噴石・火砕流・融雪型火山泥流等が対象とされている。
 噴火警戒レベルは、火山が噴火した時、どこまで危険なのか避難等が必要な範囲を示す物差しであり、警戒が必要な範囲ととるべき防災対策を予め決めてレベル1からレベル5まで区分して発表される。噴火警戒レベルが運用されている火山は全国に47火山ある。(平成28年6月現在)

8.おわりに
 講師の東京管区気象台気象防災部地震津波火山防災情報調整官 藤原健治様には、気象庁の地震津波火山に関する情報について、現在進められている様々な情報について、わかりやすくご説明いただきました。
 限られた時間の中でしたが活発な質疑応答も行われました。
 今回の講演会の講師をお引き受けいただいた藤原健治様に心より感謝申し上げ
ます。

以 上

写真−1:講師・藤原健治氏(拡大画像へのリンク)

写真−1:講師・藤原健治氏

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写真ー2:講演会の様子(拡大画像へのリンク)

写真ー2:講演会の様子

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