ナビゲーションを飛ばしてコンテンツへ
  • 建設部会のホーム
  • 地域本部・県支部・部会・委員会
  • 公益社団法人日本技術士会
  • RSSについて
建設部会

2019年1月 建設部会講演会(報告)

開催日時:平成31年1月16日(水) 18:00〜19:30
講演名 :建設コンサルタントの動向と今後の目指すべき方向
講演者 :村田 和夫氏(一般社団法人建設コンサルタンツ協会 会長)
参加者 :59名(会員55名、非会員4名)

1.はじめに
 本講演は、我が国の建設コンサルタント業界を代表する組織である、一般社団法人建設コンサルタンツ協会の村田和夫会長を講師として迎え開催したものである。
 講演では、1) 建設コンサルタントの概要、2) 建設コンサルタントの動向、3) 建設コンサルタントの目指すべき方向、4) 技術士と建設コンサルタント、5) 建設コンサルタントの課題の5主題について、客観的なデータに基づいた業界の動向、社会的動向を見据えた今後の目指すべき方向や課題など、氏の長年のご経験を交えてお話いただいた。

2.講演内容
1) 建設コンサルタントの概要
 建設コンサルタントの時代背景を踏まえた沿革、協会活動の変遷について説明をいただいたのち、建設コンサルタントの理念や遵守すべき倫理、協会会員企業の経営状況等(売上高、生産性、職員数と年齢構成の推移等)について客観的データに基づき説明がなされ、業界の歴史と現状を紹介された。

2) 建設コンサルタントの動向
 動向として、(1)建設コンサルタントの役割の拡大、(2) 就業環境の改善、(3)災害支援活動、(4)社会貢献活動の4テーマについて説明がなされた。

(1)建設コンサルタントの役割の拡大
 社会資本整備において、発注者のみならず国民、施工者、海外事業者等との対応の中で、多様な役割を担うことを志向していく。現在は、補助者から発注者のパートナーとして、発注者を支援する業務領域へ拡大している。さらに、社会資本整備のコア業務から、周辺領域・上流領域へ拡大し、自ら政策提言する集団へ転換していく必要がある。

(2) 就業環境の改善
 建設コンサルタントでは長時間労働が最大の課題である。離職者の傾向は近年大きく変わらず、改善は見られない。国土交通省では、3月末の納期の件数を50%とすることを目標にしているものの、変更契約後は65%を超えており、協会として平準化を要望している。
 また、就業環境改善として、ノー残業デー、3月納期の平準化、1月〜3月のプロポーザル作成時期の調整、ウィークリースタンスの実施依頼やワークライフ・バランス(WLB)の推進に取り組んでいる。

(3)災害支援活動
 協会各支部では、国や地方公共団体との災害協定を締結し、様々な活動を行っている。

(4)社会貢献活動
 協会各支部では、社会貢献として、一般市民向けセミナーの開催、小・中学生、高校生などを対象とした郊外学習を支援する活動を行っている。

3) 建設コンサルタントの目指すべき方向
 目指すべき方向として、(1)建設コンサルタントビジョン2014、(2)担い手の育成・確保、(3) 品質の確保・向上、(4) i-Constructionの取り組みの4テーマについて説明がなされた。

(1)「建設コンサルタントビジョン2014」
 建設コンサルタントのビジョンとして、「ATI構想」(平成元年)、「改革宣言」(平成15年)、「建設コンサルタントビジョン2014」(平成26年)がある。ATI構想では、建設コンサルタントの将来像(魅力に満ち技術を競う独立した知的産業)、改革宣言では、21世紀の建設コンサルタントのあるべき姿、建設コンサルタントビジョン2014では自律した建設コンサルタントへの転換を示している。

(2)担い手の育成・確保
 生産力の強化として、各企業は若手技術者の確保に尽力するとともに、女性技術者やシニア技術者の積極的活用に取り組む必要がある。また、官民連携による安定した事業量の確保や継続的な技術者単価の引き上げ等により、企業の安定経営をベースに処遇改善に取り組むとともに、働き方改革、ダイバーシティの推進(多様な人材の積極的な活用)を行う必要がある。

(3)品質の確保・向上
品質の確保・向上は、プロセス管理、マニュアル整備、PE(第三者照査)などの予防措置対
策が挙げられるが、最も効果があるのは、技術者一人一人の責任感の醸成と技術力の向上である。
改正品確法では、基本理念の一つとして、「公共工事に関する調査(点検及び診断含む)及び設計の品質が重要であることに鑑み、必要な知識・技術の能力を資格等によって適切に評価し、十分に活用すること。」と示されており、これは建設コンサルタント業務に関わる重要な条文である。
また、発注者の責務、受注者の責務が示されており、発注者においては、品質確保の担い手の中長期的な育成・確保の促進、適正な利潤の確保、適切な工期の設定と変更契約などが示されている。

(4) i-Constructionの取り組み
 建設生産・管理システムの効率化を推進するためには、コンカレントエンジニアリング・フロントローディングなどの実行がある。我々としては、上流工程の重要性を理解し、設計段階でモデルを構築して、関係者と共に、必要な属性情報を取り込み、3次元可視化シミュレーションや検証を行うといったフロントローディングを推進する必要がある。
 協会においては、CIMリクワイヤメント・タスクフォースチーム、実証設計業務に対する検討チームを立ち上げ、国交省をはじめとする関係団体との調整協議、BIM/CIM実証業務を通じての知見や課題等の整理など実施し、会員企業への情報提供や技術教育を強化している。

4)技術士と建設コンサルタント
 技術士は建設コンサルタント業務の中枢の資格であるが、建築士の独占資格と違い、非独占資格(名称独占)であること、改正品確法により民間団体等が運営する一定水準の技術力等を有する資格について、国や地方公共団体の業務に活用できるよう、国土交通省が「国土交通省登録資格」として登録する制度を平成26年度に導入し、RCCMをはじめとする民間資格が認定されているなどの説明がなされた。また、技術士資格の課題として、現在検討中と聞いているが更新制度がないこと、一般社会の認知度が低いことなどが示された。建設コンサルタントの地位向上に向けては、平成19年10月から議論がスタートし、平成26年9月以降、協会では「資格制度・法制化検討特別WG」で基本方針を検討し、その後、会長を本部長とする「資格制度・法制化検討推進本部」を設置した。平成27年3月には、登録制度に関する国土交通省建設市場整備課との協議を行ったが、現在は進んでいない状況であるとの説明がなされた。

5)建設コンサルタントの課題
 課題として、長時間労働の解消、契約約款上の課題、建設コンサルタント(技術者)の認知度の向上を挙げられた。長時間労働の解消では、生産性(生産力・生産効率)、品質の向上に一体的に取り組む働き方の改革として、業務分析でムリ・ムダ・ムラをなくすこと、Work-Sharing、ICTの活用、職員の教育や処遇改善などの企業の成長に向けた投資、建設コンサルタント業務の高付加価値化(報酬積算の時間単価/歩掛りからの脱却)、担い手の確保が示された。
契約約款上の課題では、再委託、著作権(著作者人格権の帰属の問題など)、瑕疵担保の問題(賠償責任限度額の規定なしなど)について示され、建設コンサルタント(技術者)の認知度の向上においては、人口減少・地方衰退・SDGsへの取組みなど、新たな事業への展開が必要であり、それに伴い建設コンサルタントも多様な関係者と連携し、新たな役割を担わなければならないことを示された。

3.おわりに
 少子高齢化に伴う労働力不足、価値観や働き方が多様化する今の時代において、建設コンサルタント業界においても、生産性の向上、人材育成、労働環境の改善は喫緊の課題である。一方、Society5.0、第4次産業革命、SDGsなど、新しいニーズが生まれる時代において、新たな事業が展開し、それに伴い建設コンサルタントの役割も拡大していく。まさに、時代の転換期を迎えている状況で、建設コンサルタントをはじめ、社会インフラ整備に携わる我々関係者は、村田会長が示唆されるように、同じプラットフォームのもとで課題を共有し議論を進め、今後の方向性を見極めていかなければならないと痛感するものである。村田会長からは貴重なお話をいただき、心から感謝いたします。

講演担当:榎本、江守、大久保、柴野(文責)

以 上

このページのお問い合わせ:建設部会

ページトップへ