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建設部会

平成30年7月 建設部会講演会(報告)

日 時:平成30年7月18日(水) 18:00〜19:30
講演名:「インフラ施設の維持管理(トンネル編)
      〜山岳トンネルの維持管理に必要な地形・地質の素養〜」
講演者:国際航業(株)技術サービス本部 最高技術顧問 大島 洋志氏
会 場:機械振興会館 6階 6-67会議室
参加者:45名(会員:39名、非会員:6名)

1.はじめに
 大島氏は1965(昭和40)年に当時の日本国有鉄道(以下、「国鉄」)に入社以来、一貫して山岳トンネルとともに歩まれてきた。そうした中、雑誌「トンネルと地下」の編集に1973(昭和48)年から関わり、委員長時代の2010(平成22)年に通称「語り部シリーズ」を発足させ、2018(平成30)年5月号にて、101回を数える好評な企画となった。本企画発足の目的は、「トンネル一筋に仕事をされてきた先輩方のトンネルに対する思いの丈を語ってもらうことで、後に続く若い方々へ現場技術の継承を図ること」であり、その契機となったのが、塩野七生氏の「ローマ人の物語」であった。
 本講演会では、大島氏が歴史と経験に学び、現場に根ざした経験智を得た経験について、事例を交えながら講演いただいた。

2.講演内容
【歴史に学ぶ】
・大島氏が若い頃、多くの文献を読み、多くの先輩から伺ったお話から自然に身につけた主な6つの知見について、事例を交えてお話しをいただいた。
・キーワードは[1]見えども見えず、[2]地相は人相山の性状、[3]トンネルセンターを歩こう、[4]まず実行、理論は後からついてくる、[5]トンネル工学は輸送工学だ、[6]注入は最後の手段、やるなら徹底して。

【経験に学ぶ】
・大島氏は、国鉄時代に多くの現場経験や鉄道技術研究所(以下、「鉄研」)での経験で得た知見について、事例を交えてお話しをいただいた。
・山陽新幹線建設現場では、「福岡トンネルにおける大量の湧水対策」と「炭鉱鉱害地における構造物対策」についてお話いただいた。
・国鉄本社/鉄研での経験では、「水文地質調査法の体系化」、「トンネルの路盤噴泥対策」、「しらす地帯の路線選定とトンネル路盤噴泥対策」、「筑紫トンネルの路線選定」についてお話いただいた。

【両者に学ぶ】
・上記の学びを経て、大島氏の永年の経験の中から得た種々の経験智について、以下のようなお話をいただいた。
・まずは、社会人として、[1]歴史と経験に学ぶ努力、[2]記録・発表・交流の努力、[3]夢と気概を失わない努力が必要。
・地質工学者としての経験智は、[1]地質工学者の育成が必要、[2]山岳トンネルの難易度は湧水と地圧及び路線選定で決まる、[3]地質調査は路線選定段階に行う、[4]トンネル路線選定段階で考慮すべき地形・地質条件がある、[5]地相を観る目を磨く、[6]弾性波・電気探査を併用すること。
・[4]トンネル路線選定段階で考慮すべき地形・地質条件としては、「急がば回れ」、「断層地形は避ける」、「極力山の芯、土被りは小さからず大きからず」、「地質構造の走向には極力直交」、「砂質地山は極力小さな水頭で」、「坑口位置は災害や偏圧に注意」、「盆地や沢の直下を併行するのは避け、地下河川にも注意」、「坑内の勾配変化点は行政界に」、「付かず離れず下流側上位に」、「施工性も考える」。
・トンネル技術者としての経験智は、湧水と地圧現象を中心にお話しいただいた。
・トンネル湧水についての経験智は以下のとおり。
 −先進導坑には重要な役割があった。
 −大口径超長尺高速先進ボーリング技術を開発しよう。
 −水抜き効果を定量的に評価する。
 −渇水から活水へ(トンネルは地下に掘った横井戸である)。
 −帯水した砂泥互層地山では、「流れ盤」は天国、「受け盤」は地獄となる。
 −静・動水圧現象を理解する。
 −限界流速・限界動水勾配の理解から水抜き効果を考える。
 −ボーリングの難易や湧水量・水温も地質情報。
 −砂質地山にはウェルポイント、帯水砂質地山のトンネル施工では、切羽自立性の確保のためにディープウェルポイントによる水位低下工法がよく用いられる。
 −地下水流動への影響を及ぼす場合の有効手段の一つは地下水流動保全工。
・地圧現象についての経験智は以下のとおり。
 −アーチ構造は強い。
 −トンネルは地震に強い。
 −トンネル上部切取は要注意。
 −堆積岩系C地山はインバートに。
 −層状に挟まれた軟弱層は要注意。
 −地下水は地圧の原因にもなる。
 −膨張性地山か?と思わせる地質情報がある。
 −凍結融解の力は無視できない。
 −微気圧変動も無視できない。
 −陥没はサイロ状に発生。

3.おわりに
 これまで歴史に学び、経験に学び、両者から学んだ経験智とともに、最後には、教育の4大ポイント(望まれる能力/語り部が置くべき力点)として、[1]考える力、[2]問題を発見する感性、疑問を持つ心、[3]問題を解決する能力(問題解決に周囲を総動員できる統率力)、[4]異文化を理解する教養、をご紹介いただいた。
 我々技術者にとっても、後進への技術継承、人材育成の重要性を再認識させていただいた講演であったと思う。
 講演会参加者全員に配布いただいた「増補 私の地質工学随想〜国鉄・隧道とともに〜 -古希を記念して- 2012(平成24)年3月 大島 洋志著」の中からもいくつかの事例を交えわかりやすく講演いただいた国際航業(株)技術サービス本部最高技術顧問大島洋志氏に感謝申し上げます。

以上

講演会担当:武曽、浅岡、山口、森田(記)

写真−1:講師・大島氏(拡大画像へのリンク)

写真−1:講師・大島氏

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写真ー2:講演会の様子(拡大画像へのリンク)

写真ー2:講演会の様子

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