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建設部会

平成30年6月 建設部会講演会(報告)

日 時 :平成30年6月20日(水) 18:00〜19:30
講演名 :土砂災害と砂防技術
講演者 :一般財団法人 砂防・地すべり技術センター
      専務理事兼砂防技術研究所長 大野宏之
講演場所:一般財団法人機械振興協会 機械振興会館6階67号室
参加者 :57名(会員51名、非会員6名)

講演内容
1.砂防が目指すもの
・持続的・発展的な社会経済活動の基盤となる国土の保全と、国民の生命・財産の保全を目的とした、土砂の移動に起因する災害や様々な悪影響を防止・軽減するための法制度・技術・システムの体系 (参考:現代砂防学概論)
・水系砂防:主に直轄河川、流域全体を見ての土砂のコントロール
・地先砂防:主に都道府県、保全対象(人家等)を限定した土砂災害の防止
・構成概念:[1]国土保全、[2]地域保全(避難体制や土地利用などのソフト対策を含む)、[3]危機管理
・法律等の編成:行政の施策は予算獲得を含めて様々あるが、法律作成に寄与することが最も重要

2.土砂災害とはどのようなもの
・土砂災害の英語表記は”Land Slide”のみで表現されることが一般的であるが、わが国での分類では土石流、地すべり、がけ崩れに大別される。
・各土砂災害について、動画を用いて現象を説明された。

3.日本で土砂災害が多い理由
・わが国における土砂災害の発生要因は、[1]豪雨(台風・梅雨)、[2]地震、[3]火山活動(111ヶ所の活火山が存在)である。
・時間雨量50mmを超える降雨の発生回数の増加に伴い、土砂災害の増加および激甚化がデータから見てとれる。
・わが国では、1923年の関東大震災(発災時、丹沢山地で崩壊が多発)以降、地震に伴う大規模な土砂災害が発生していなかったが、1995年に兵庫県南部地震が発生。これ以降、地震の活発期に入ったともいわれる。
・2016年の熊本地震では、土砂が長い距離を移動する不思議な現象が発生。
・火山活動に起因する災害は、[1]火砕流、[2]火山泥流(1926年十勝岳災害)、[3]溶岩流、[4]土石流など多様である。

4.土砂災害を防ぐための日本の3つの施策:人命優先
・[1]施設整備:国土保全・人命保全(ハード対策では人命・財産を保全するとともに道路など社会基盤をも保全する)
・[2]土地利用規制:土砂災害防止法 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)・土砂災害警戒区域(イエローゾーン) による危険区域の明示と規制(開発抑制)
・[3]警戒避難:土砂災害防止法 土砂災害警戒情報の発表→市町村長による避難指示等→避難(レーダ雨量計などを用いて流域全体の降雨量を監視することが人命保護の観点から重要)
・立山砂防:事業当時、内務省赤木正雄氏は10日間立山カルデラを踏査して、砂防による対応可能性を調査し、初代所長として赴任した。県知事や内務省技監も踏査に同行している。オーストリアの砂防技術を日本に適した技術に昇華させたといえる。白岩砂防堰堤は大規模で左右岸で設計が異なるハイブリット構造。後年右岸は基礎岩盤を岩盤内トンネルからアンカーで強化する補修を実施。
・ソフト対策:「土砂災害警戒区域」、「土砂災害特別警戒区域」の区域指定は住民の反対等も有り容易ではない。「土砂災害警戒情報」は都道府県砂防部局と気象庁が共同で発表。

5.今後の砂防の展開
1)増加傾向の大規模土砂災害への備え(超過規模現象への危機管理)
・深層崩壊→発生予測の精度向上、早期発生の把握(大規模土砂移動検知システム、現地型センサー等)
・同時多発型土砂災害→土砂災害警戒情報の精度向上、警戒避難体制の整備など
・火山地域での尾根の乗り越え現象(流域争奪)→火山地域の砂防計画の精度向上
・大規模地震→地震によるハザードマップの作成など
・流木対策→流木対策施設の設置(オーストリアやドイツでのネット技術の導入等)など
2)人命を守る対策
・ 危険個所のゾーニングの促進と精度向上→的確な避難勧告の発令など
・土砂災害警戒情報の精度向上
・住民主体の防災体制づくり:タイムラインの活用等
・SNSなどを活用した情報伝達の迅速化と円滑化
・地中情報の把握とその情報を活かした砂防計画、事業実施
・砂防施設の点検と修繕、更新
・総合的な土砂管理
・行政機関の防災力の向上、スキルアップ(特に市町村)とサポート体制の強化

6.防災に関する重要な視点
・「人は忘れる」という大原則がある:個人は3日で飽き、3月で冷め、3年で忘れる。組織は30年で途絶え、崩れる(人の入れ替わり)、地域は60年で忘れる(人の寿命による入れ替わり)、社会は300年で消える(「なかったこと」として扱われる)、文化は1200年で起こったことを知らなくなる。(出展:畑村洋太郎「未曾有と想定外」東日本大震災に学ぶ)

 講師の一般財団法人砂防・地すべり技術センター専務理事兼砂防技術研究所長、大野宏之先生には、土砂災害と砂防技術についての興味深い事例を多彩な映像と写真をまじえて分かりやすくご説明頂き、またこれからの砂防技術の展開を示して頂きました。心から感謝申し上げます。
 以 上

                   講演会担当:河北、藤野、武曽、山下(記)

写真−1:講師・大野宏之氏

写真−1:講師・大野宏之氏

写真ー2講演会場の受講者(拡大画像へのリンク)

写真ー2 講演会場の受講者

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