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建設部会

平成30年2月 建設部会講演会(報告)

日 時 :平成30年2月14日(水) 18:00〜19:30
講演名 :道路施設の老朽化対策事業の推進
講演者 :井波丈明 氏 (株式会社 長大 執行役員)
講演場所:機械振興会館6階67号室
参加者 :33名(会員31名、非会員2名)

1.はじめに
 社会問題の一つとなっている道路施設の老朽化対策について、「老朽化対策に関する今までの経緯」、「道路施設に係る基準・マニュアルの改訂」、「維持管理・更新に係る情報の共有化、見える化」、「新技術の開発・導入」、「自治体における維持管理体制の構築」、「最新の点検技術」の6つのテーマに沿ってご講演いただいた。

2.老朽化対策に関する今までの経緯
 道路施設の老朽化対策に関する国の取り組みは、過去(平成15年頃)から検討されていた。その後、平成24年12月の笹子トンネル天井板落下事故をうけ、平成25年9月に道路法が改正され、道路施設の維持・点検・措置を講ずることが新たに規定された。この改正道路法に基づき、関連する法令、施策・行動計画、基準・マニュアル等の整備が迅速に進められ現在に至る。

1)法令の改正(主な内容)
[1]「改築・修繕に関する国交省の代行発注・改良/修繕の促進」に関する規定
[2]「災害時の迅速な対応」に関する規定
[3]「地域メンテナンス協議会」に関する規定
[4]「点検時に予防保全を実施すべき箇所の明確化」
[5]「過積載車両の取締り」に関する規定
[6]「国交省による維持・修繕の実施状況調査による点検・対策の明確化」に関する規定

2)施策・行動計画
 国の総合政策として、平成25年11月に「インフラ長寿命化基本計画」が取りまとめられた。この基本計画に基づき、国および自治体レベルでそれぞれ行動計画が策定されている。
 国交省は、同省が所管する全ての施設に関して、平成26年5月に策定したインフラ長寿命化計画(平成26年〜平成32年の行動計画)に基づいて老朽化対策を進めている。地方自治体は「公共施設等総合管理計画」を策定して対策を進めている。

3)提言等
 平成26年4月「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」では、各道路管理者の責任で行うべきメンテナンスサイクルに関して、以下の事項が示されている。また、メンテナンスサイクルを持続的に回す仕組みの構築に関しても、予算、体制、技術、国民の理解・協働に関する事項が示されている。

[1]点検
橋梁(約70万橋)・トンネル(約1万本)等は、1回/5年の近接目視による全数監視の実施。
[2]診断
統一的な尺度で健全度判定区分を設定、診断の実施。
[3]措置
利用状況等を踏まえた橋梁等の集約化・撤去。
[4]記録
点検・診断・措置の結果を評価、公表(見える化)。

3.道路施設に係る基準・マニュアルの改訂
 平成26年6月から道路施設種別ごとに点検および健全性診断に関する要領の策定が進められ、策定はほぼ完了している。上記要領は、国の管理のための点検要領と、自治体向けの点検要領(国の技術的助言)に分けて作成されている。
 国管理用の点検要領と自治体向けの点検要領は、点検頻度(1回/5年)および健全性診断(4段階評価)を行う部分は変わらないが、自治体向けの要領は、写真による損傷や着目点の記録を多用することで、点検項目・記録様式が簡略化されている。

4.維持管理・更新に係る情報の共有化、見える化
 既存のシステムとして、「道路管理データベースシステム」(以下、「道管DB」という)が昭和63年から運用されていた。しかし、道管DBは、道路施設の諸元情報が継続的に更新される仕組みがないこと、点検調書の様式が統一されていないこと、点検項目や判断基準が自治体ごとでバラバラであったこと、整備された情報が容易に参照できないこと、これら情報を利用したメンテナンスサイクルが十分機能していないこと等の課題があった。
 そのため、道路橋に関しては道管DBの課題を解決するため、「全国道路橋DBシステム」が開発され、現在運用されている。同システムは、国交省道路局に置かれたシステムサーバーでデータを一元管理し、地方整備局および地方自治体はインターネットを介して、データを登録、更新、参照しながらメンテナンスサイクルを回すことができる(ただし、地方自治体のデータ登録、更新は地方整備局を介してしか行えない)。
 また、見える化に関しては、「社会資本情報プラットホーム(試行版)」が構築され、平成29年4月からWeb上で誰でもデータの閲覧が可能となっている。また、平成27年より、点検の実施状況や結果は、「道路メンテナンス年報」として公開されている。

5.新技術の開発・導入
 平成26年にSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)が創設され、総合科学技術・イノベーション会議が府省・分野の枠を超えて自ら予算配分して基礎研究から出口(実用化・事業化)までを見据え、規制・制度改革を含めた取り組みを推進している。老朽化対策に関しては、「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術の開発」を議題として、予防保全による維持管理技術の向上・効率化を低コストで実現することを目標にしている。SIP新技術の開発・導入については、以下の項目について研究開発が進められている。
[1]点検・モニタリング・診断技術の研究開発
[2]構造材料・劣化機構・補修・補強技術の研究開発
[3]情報・通信技術の研究開発
[4]ロボット技術の研究開発
[5]アセットマネジメント技術の研究開発

6.自治体における維持管理体制の構築
 国は、地方自治体への支援として、「道路メンテナンス技術集団の派遣」、「道路メンテナンス会議の開催」を行っている。
 自治体自らは、技術職員OBの再任用やNPO法人の活用などにより維持管理体制の構築をすすめている。また、ICT技術を活用し、道路利用者からの通報を活用した道路施設の早期異常の発見に取り組んでいる自治体もある。

7.最新の点検技術
 以下に示す5つの技術が紹介された。

・BumpRecorder(バンプレコーダー(株))
舗装を対象とした点検技術である。
車内に設置したスマートフォンで簡単・手軽に路面を計測できる。
・VESPINAE(長崎大学、(株)長大、協和機電工業(株))
斜張橋のケーブル点検を対象とした技術である。
プロペラ推進力によるスムーズな走行でケーブルを約20m/分で点検できる。
・三菱インフラモニタリングシステム2(三菱電機(株))
道路・鉄道等のあらゆる構造物の点検を対象とした技術である。
高精度レーザーと高精細カメラを用いて0.3mmのひび割れを走行しながら自動検出できる。
・ドローン運用統合管理サービス((株)日立システムズ)
土木・建築物等のあらゆる構造物の点検を対象とした技術である。
自動劣化診断と3D画像へのロケーションマッピングを可能とする。
・道路附属物点検支援システム(古河電気工業(株))
道路附属物を対象とした点検技術である。
マーカレスAR技術による対象物特定と点検調書作成・管理のトータルシステムである。

8.おわりに
 講師の株式会社長大 井波丈明執行役員様には、道路施設の老朽化対策に関して、法令・基準に関する改訂経緯から、現在進められている最新の施策動向、最新の技術まで広範囲の内容について、わかりやすくご説明頂きました。限られた時間の中でしたが、最後には受講者と活発な質疑応答も行われました。井波様には心より感謝申し上げます。

 以  上
 講演会担当:浅岡、河内、阿山(記)

写真ー1講師・井波丈明氏(拡大画像へのリンク)

写真ー1 講師・井波丈明氏

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写真ー2講演会場の受講者(拡大画像へのリンク)

写真ー2 講演会場の受講者

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