建設部会のホーム行事案内平成29年11月 建設部会講演会(報告)
日 時 :平成29年11月15日(水)18:00〜19:30
講演名 :「CIMのガイドラインについて」
講演者 :日本建設情報総合センター(JACIC)影山 輝彰 主任研究員
講演場所:パシフィックコンサルタンツ(株) 16階会議室
参加者 :42名(会員33名、非会員9名)
1. はじめに
国土交通省では、少子高齢化、労働力不足が顕在化する状況にあって、「建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組」として、「測量・設計から、施工、さらに管理にいたる全プロセスにおいて、ICTを活用したi-Construction」の積極的導入が図られている。
本報告は、「i-Construction」を推進する中心的役割を担う、「CIM(Construction Information Modeling/Management)」に関する情報収集を目的にJACIC影山主任研究員の講演について概要を報告するものである。
2. 講演内容
(1)i-constructionとは
国土交通省が推進するICTを活用し、建設現場の生産性を向上するための施策のひとつである。「建設現場を最先端の工場へ」、「建設現場へ最先端のサプライチェーンマネジメント導入」、「建設現場の2つの「キセイ」と継続的な「カイゼン」」の3つの視点に着目し、調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおける抜本的な生産性の向上に取り組むためのトップランナー施策である。
具体的には、「[1]ICT土工」、「[2]コンクリート工の規格の標準化」「[3]施工時期の平準化」に注力し、MC(Machine Control)やMG(Machine Guidance)等を用いた「ICT土工」と橋梁、トンネル、樋門・樋管やダム等の構造物を対象に3次元モデルを活用したCIM」のふたつを軸に取組みを進めている。
その結果、建設分野に携わる人々に「[1]給料が良く」「[2]休暇も取れる」「[3](将来への)希望が持てる」新3Kを実感できる環境を実現することを目標に掲げている。そして、多くの国民に対して、建設分野が魅力にあふれ、誇りある産業であるとともに、広く国民に対して日々の生活を支える重要な役割を担っていることを広める。
◇ICT;情報処理・情報通信分野の関連技術の総称「Information and Communication Technology」の略
(2)ICT土工
無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)による測量データの活用、ICT建機、ロボット等の導入等による、施工生産性の向上を図る。ICT建機による現場の動画により、従来型の丁張設置から解放される現場の様子を確認した。
(3)CIM
CIMは2012年に国交省によって提言された建設業務の効率化を目的とした取り組みである。調査、設計段階から3次元モデルを導入し、施工、維持管理の各段階で3次元モデルを連携・発展させることにより、設計段階での様々な検討を可能とすると共に、一連の建設生産システムの効率化を図るものである。
CIMは、2012年の11モデル事業の試行から始まり、2018年には試行業務90件、試行工事数196件を数えるに至っており、指定型に対し希望型が圧倒的に多い。CIM活用の効果として、3次元化による関係者間の「合意形成の迅速化」が挙げられ意思伝達ツールとしての有効性が確認されている。一方、課題として、手順・手法に関する「基準、ルールの未整備」が挙げられており、国土交通省ではこれらの課題に対応するため、関連する要領・基準類の改善を積極的に進めている。
(4)CIM導入のガイドライン(案)
『CIM導入ガイドライン(案)』は、公共事業に携わる関係者(発注者、受注者等)がCIMを円滑に導入できることを目的に、以下の位置づけで作成したものである。
・これまでのCIM試行事業で得られた知見やソフトウェアの機能水準等を踏まえ、現時点でCIMの活用が可能な項目を中心に、CIMモデルの詳細度、受発注者の役割、基本的な作業手順や留意点とともに、CIMモデルの作成指針(目安)、活用方法(事例)を参考として記載したものである。
・CIMモデルの作成指針や活用方策は、記載されたもの全てに準拠することを求めるものではない。本ガイドラインを参考に、適用する事業の特性や状況に応じて発注者・受注者で判断の上、CIMモデルの作成や活用を行うものである。
・公共事業においてCIMを実践し得られた課題への対応とともに、ソフトウェアの機能向上、関連する基準類の整備に応じて、本ガイドラインを継続的に改善、拡充していくものである。
なお、『CIMのガイドライン(案)』については、www.mlit.go.jp/tec/it/pdf/guide01.pdfを参照されたい。
(5)CIM事業における成果品作成の手引き(案)
『CIM事業における成果品作成の手引き(案)』は、CIM事業を対象に、提出する成果品の作成方法やその確認方法を定めたものであり、着手前に必要とする協議事項やCIMモデルの授受と成果品のフォルダ構成等を示している。
【手引き(案)の主な記載項目】
・事前協議:効果検証項目、成果品の作成範囲
・納品ファイル形式:オリジナルファイルにて納品(国際標準を念頭に置く)
・CIMモデルの納品形態:電子媒体(CD-R、DVD-R、BD-R)
なお、『CIM事業における成果品作成の手引き(案)』の詳細については、www.mlit.go.jp/tec/it/pdf/seikahinsakusei.pdfを参照されたい。
(6)CIMの段階的拡大方針
国土交通省では、2020年度をひとつの区切りとして、CIMの拡大と普及を進めており、次のスッテプが公開されている。
Step1:CIMの活用効果が見込まれる業務・工事からCIMを導入(H29〜開始)
Step2:CIMの活用の充実に向けた検討を実施(H29〜H32までを目標)
Step3:CIMの活用の充実により、CIMモデルを用いた維持管理を拡大(〜H37までを目途)
また、CIMの普及・推進にあたり、発注者の教育・訓練に加え、公共建築の整備事業において、設計段階から設計協力事業者(工事施工予定者)が設計に関与し、施工性を検討して設計に反映することにより、工事費に係るリスクの抑制や工事期間の短縮などを図るECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式での活用なども検討されている。
(7)JACICの取り組み
人材の育成・教育の第一歩として小林一郎熊本大学院教授とともに、CIM活用のメリットなどを紹介した冊子「CIMを学ぶ」シリーズを作成し、公開している。初刊の内容は、景観に配慮しながら関係者の合意形成を図りつつ、迅速に進める必要があった国土交通省九州地方整備局が実施した河川激特事業「曽木の滝分水路」(鹿児島県伊佐市)での産官学協働によるCIM活用記録を整理したものである。
なお、詳細についてはwww.cals.jacic.or.jp/CIM/jinzai/pdf/studyingCIM_H29.pdfを参照のこと。
3. おわりに
我が国の労働力不足が加速化する状況にあって国土交通省の施策である「CIMの導入」は“待ったなし”であることを痛感した講演であった。提供された資料のキーワードは情報に関する用語が多いことからも、i-constructionに向けた周辺環境を示している。
20年後には“当たり前の技術・手法”として汎用化していることを述べられたJACICの影山主任研究員にわかりやすくご説明して頂き感謝申し上げます。
以 上
講演会担当:新海、森田、河瀬(記)
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