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建設部会

平成29年7月 建設部会現場研修会(報告)

日 時:平成29年7月21日(金)14:00〜16:00
研修名:「自動車用各種エネルギーステーション〜ガソリンから水素まで〜」
講演者:与安 光晴氏(日立オートモティブシステムズメジャメント(株))
見学施設:水素情報館 東京スイソミル(東京都江東区潮見1-3-2)
参加者:22名(会員22名、非会員0名)

1.はじめに
 自動車の歴史を振り返ると、1870〜80年代にガソリン式自動車が発明され、今日に至っている。それ以来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関として発展してきた。
 その後、1997年、ハイブリッドエンジンによるハイブリッド車の量産を、世界で初めて国産メーカーが相次いで開始した。そして、2000年代に入り、中国や新興国の成長と相まってか、石油資源の消費や大気汚染、地球温暖化等の問題により、排ガス規制が、世界各国で大幅に強化されている。
 こうした歴史的背景の中、排出CO2=ゼロ・無公害と言われるFCV(燃料電池自動車)と水素エネルギーの現状について、「自動車用各種エネルギーステーション〜ガソリンから水素まで〜」の講演と「水素情報館 東京スイソミル」の施設見学の実施について報告します。

2.施設見学に先立ち、水素情報館「スイソミル」の2階講義室において、自動車用各種エネルギーステーション〜ガソリンから水素まで〜」を与安氏より講演いただいた。講演では、車を動かすエネルギーについて、まず、その多様なエネルギーの種類の製造方法と保管や運搬について説明があった。
 そして、車へのエネルギー充填するインフラとして、一般的ではあるが、最近、減少傾向にある給油所(ガソリンスタンド)の概要や環境等への問題や規制について説明があった。
 特にガソリンベーパー(ガソリンが給油時等で蒸発して気体となった蒸気(Vapor)のこと)について、社会問題化しているPM2.5(微小粒子状物質)や光化学オキシダントの原因物質のひとつである揮発性有機化合物(VOC)の発生メカニズムや、大気汚染防止法(平成18年改正)によるVOCの低下後も、国内では年間約100t強(180億円/年相当)が大気に放出されている現状がある問題点の指摘があった。このガソリンベーパーは、主にタンクローリーから給油所への荷卸し時と車への給油時に、大気に放出されている。

3.燃料電池自動車(FCV)と水素ステーションについて、まず、水素の安全・危険性について、通常のガソリンやLPG等とは基本的に同程度と考えることができる。また、水素の販売価格は、一般的には、1Kg当り1,000円で、概ね1車両満タンで、5Kg(5,000円)である。
 また、水素とFCVのメリットとして、エネルギー効率においては、燃料の原料採取〜走行で、ガソリン車15%程度、FCV30%程度とされている。
 また、水素ステーション内で水素を直接製造することが可能であり、その場合運搬や大規模なプラントが不必要となる。その水素ステーションの本格的普及促進整備のためにも、取扱う水素(高圧(90〜100MPa)で低温(-40℃))を安全に自動車に充填する装置として、充填量を計測する水素ディスペンサー(ガソリンスタンドでの給油計量器)の今後の技術開発によるコスト削減も求められる。
 一方、そのデメリットとして、水素の供給インフラ(水素ステーション)が整なっていないこと。また、燃料電池の触媒に白金等の使用することから、製造コストが非常に高いことが上げられる。
 今後の普及としてエネルギー庁策定(2016.03改定)のロードマップでは、FCV(燃料電池自動車)は、2020年までに4万台程度、2025年までに20万台程度、2030年までに80万台程度を普及目標としている。また、水素ステーションでは、2020年までに160箇所程度、2025年までに320箇所程度を普及目標としている。

4.水素情報館「東京スイソミル」の見学
 水素情報館「東京スイソミル」は、東京都が目指す水素社会のショーケースとして、目に見えない水素のことや将来像について、見て触って体験しながら学べる総合的な学習施設で、入場は無料である。
 1階は、「私たちとエネルギー」「水素エネルギーの可能性」「水素社会のしくみ」「水素社会のいま」「水素社会と私たちの未来」「水素社会への希望」の6ゾーンで構成されている。また、複数の子供連れの家族が訪れて、直接触れるなどの体験を通じ「水素」というものの学習を楽しんでいるようであった。また、外にはトヨタ「ミライ」の実車が展示され、ボンネットを開け実物の燃料電池等を見ることもできた。
 2階は、水素ステーションの運営に関わる事業者への講習会や国内外の視察などに対応する「講義室」「オープンライブラリー」などに分かれており、「H2サイクリング」という、自ら水素を作る実験コーナ等も設置されていた。

5.おわりに
 2015年に実用車の販売の燃料電池自動車(FCV)が始まった。そして、水素製造コストの低価格化や自動車への水素充填を行うインフラ整備として、水素ステーションの普及も必要となる。
 これら、始まったばかりの燃料電池自動車(FCV)の普及には、さらなる技術開発が必要不可欠であり、是非、日本がその主導的立場で技術開発されることが望まれる。
 今回、ご講演いただいた、日立オートモティブシステムズメジャメント(株)、与安様、水素情報館見学でご説明いただいた「スイソミル」職員の皆様、心より感謝申し上げます。
                                   以 上
現現場研修会担当:大久保、垣本、武曽(記)

写真ー1講演会風景(拡大画像へのリンク)

写真ー1 講演会風景

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写真ー2展示説明風景(拡大画像へのリンク)

写真ー2 展示説明風景

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