• 部会紹介
• 行事案内
• 部会活動状況
• お知らせ
• 会員専用コーナー
• 資料庫

平成29年10月　建設部会講演会（報告）

日　時　：平成29年10月18日（水）　18：00〜19：30
講演名　：交通ビックデータ等の新技術を活用した都市のコンパクト化に向けた取り組みの考え方
講演者　：新階寛恭　（国土交通省　国土技術政策総合研究所　都市施設研究室長）
講演場所：日本工営　中庭棟4階大会議室
参加者　：63名（会員56名、非会員7名）

講演内容
1．超高齢化社会を踏まえた今後の都市の方向性
1）コンパクト・プラス・ネットワークの推進に向けた取り組み
・都市のコンパクト化は、居住や都市機能の集積による「密度の経済」の発揮を通じて、住民の生活利便性の維持・向上、サービス産業の生産性向上による地域経済の活性化、行政サービスの効率化等による行政コストの削減などの具体的な行政目的を実現するための有効な政策手段である。
・コンパクト・プラス・ネットワークは、単なる一点集中ではなく、コンパクトシティと公共交通ネットワークの再構築による多極ネットワーク型コンパクトシティを指向している。

2）作成・公表された立地適性化計画の概要
・人口約74万人の熊本市での「立地適性化計画」を事例として「人口が減少しても、現在の暮らしやすさを維持し、公共交通でおでかけできるまち」づくりの取り組みが紹介された。

3）分野間連携の先行的取組事例
以下、様々な地方都市における分野間連携の先行的な取組事例が紹介された。
　　都市名 　　　　　　　　　　　　事業名
宮崎県都城市 【中心市街地活性化】大規模商業施設の跡地活用による中心市街地活性化
長野県小諸市 【医療・公共施設再編】都市機能の集約による賑わいの創出
新潟県長岡市 【公共施設再編】多様な主体との協働による中心市街地の賑わい創出
大阪府高槻市 【子育て】地域の特性・ニーズに即した子育て環境の整備
岐阜県岐阜市 【地域公共交通】まちづくりと一体となった公共交通の再編
湖東定住自立圏（彦根市ほか） 【広域連携・公共交通】複数市町連携の予約型乗合タクシーの運行
香川県高松市 【公共交通・中心市街地活性化】拠点づくりと連携した総合的な交通体系の再構築

4）超高齢化社会を踏まえた「まちの姿」の可能性
・ここでは、4つの地方都市にける事例が紹介された。地域の課題に対して、それぞれ[1]多様な「まちの姿・将来像」の整理・把握、[2]拠点における取組みがコンパクト化に及ぼす効果の分析、[3]集約の具体化、[4]生活支援機能の役割や効果の分析、などにより超高齢化社会を踏まえた「まちの姿」の可能性を検討している。

2．生産性向上に向けた交通と土地利用に関する具体的な工夫
1）新たな技術も活用した新しい交通システムの考え方
・モータリゼーションの進展とともに、都市は低密度の市街地として拡散傾向にある。今後、少子超高齢化社会に対応した「コンパクトな」都市構造への再編が重要となる。自動運転等の新たな技術が上手に使われることにより、地域に合った都市構造に誘導することを指向している。そのための様々な将来都市構造およびネットワークの可能性を検討すべく、要素技術やシステム導入効果の評価方法などが研究されており、これらの一部が紹介された。

2）人にやさしく「生産性の高い」土地利用の戦略
・愛媛県松山市の「もぶるテラス・みんなのひろば」を事例として紹介された。ここでは、地域における広場の存在価値を認識し、その配置を歩行者の分布および回遊ルートなどから最適化している。
・土地利用の高度化のためには、人の属性ごとの「行動」等を捉え、利用者の利便性や事業者の事業活動を同時に最適化する施設立地の誘導が必要である。

3）ビッグデータ活用の可能性
・新たな都市計画体系の構築のため、従来の人口密度等の静的なデータだけでなく、スマホGPSや携帯電話基地局データ等によるビッグデータの解析等を通じて人の属性ごとの「行動データ」も把握することによる高度なシステムの構築を図る。ビッグデータは、まちづくりの調査・計画体系を変革するとともに、「生産性向上」に資するまちづくりの高度化を支える屋台骨となる。

　講師の国土交通省国土技術政策総合研究所都市施設研究室長の新階寛恭様には、都市のコンパクト化に向けた交通ビックデータ等新技術の活用などを多くの事例からわかりやすくご説明頂き、これからのビッグデータ活用の可能性を示して頂きました。受講者との質疑応答は活発となりました。心から感謝申し上げます。

　以　　　上

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　講演会担当：阿山、近藤、山下（記）