建設部会のホーム行事案内平成29年9月 建設部会講演会(報告)
開催日時:平成29年9月20日(水)18時〜19時30分
講演名 :PC橋の点検診断技術の最前線
講演者 :(社)プレストレスト・コンクリート建設業協会 極東興和(株)営業本部補修部 岡田繁之部長
講演場所:公益社団法人 日本技術士会 A,B会議室(東京都港区虎ノ門4-1-21葺手第2ビル5階)
参加者 :会員32名 非会員 4名 合計36名
1.はじめに
社会インフラを整備する一方で、老朽化したインフラの維持管理コストも増大する一方でありコストの削減・平準化が論じられている。インフラ整備時に更新も視野に入れたメンテナンスサイクルの立案が重要である。実状は、橋梁の9割程度が緊急対策の必要ない段階の健全・予防保全段階にあり、この段階での対策をとることで、維持管理コストを抑えて構造物の寿命を延ばすことに繋がる。
今回講演に取り上げた点検診断技術は補修補強対策等の判断の根拠を与える重要なものである。
2.劣化現象と診断技術
PC橋の劣化現象→診断技術→診断技術の現状と課題について順次説明を受けた。
2.1 劣化現象
・初期欠陥 特にPCグラウト充填不良
・劣化 PC鋼棒の腐食・破断等
・構造的変状 施工目地部、セグメント継目の漏水等
・損傷 地震、衝突、火災等
※PC鋼材の腐食劣化後の急激な耐力低下がPC橋の特徴であり管理のポイントである。
2.2 診断技術
コンクリートと残存プレストレス・PC鋼材の健全性調査に関する診断技術として以下の方法の説明を受けた。
−診断技術(1)コンクリートの強度・弾性係数の調査
・小径コア法 φ20ミリメートルコア6本 PC鋼線をできるだけ切断しない
・反発度法 リバウンドハンマ
・超音波法
−診断技術(2)残存プレストレスの調査
・コア切込応力解放法 線状
・スリット応力解放法 面状
・鉄筋切断法 現況回復が難しい
−PC鋼材の健全性
(1)PCグラウトの充填調査 (2)PC鋼材の調査→張力測定→破断調査
2・3 診断技術の現状と課題
PC橋構造物の健全性が1〜4段階に分類され、性能診断により健全性が評価される。
(1)目視点検による性能診断 (2)載荷試験による健全性評価 (3)振動測定による健全性評価
1(健全:不要)→2(予防保全)→3(早期措置:耐久性保持)→4(緊急措置・補強:耐荷性保持)
(2)性能診断と健全性評価方法が実例をもとに説明され、現状課題として「危ない橋を早期の段階で見つける」ことが説明された。
・道路管理者の責任 予防保全により、落橋の危険性のリスクを回避
・PC橋の維持管理の特徴 外観変状だけでは判断が難しい。専門知識が必要
・PC橋の診断技術の現状 外観変状が生じていないPC橋の健全性評価が困難
3.最新技術動向の紹介
(1)X線CT
(2)弾性波トモグラフィ法
(3)AE(アコースティック・エミッション):損傷があっても評価できない場合あり
(4)AEトモグラフィ法
(5)赤外線サーモグラフィ法:測定環境によりパッシブ法の適用が不可となる
(6)磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonamce):マグネット材料等、課題多し
(7)光
(8)孔内画像撮影:孔内に清水を満たす必要がある
(9)蛍光剤含浸による可視化
(10)ディジタル画像によるひずみ測定
(11)モアレ画像によるひずみの可視化
※紹介された技術の中には、確立途上で専門性を要する等の一長一短がある。
4.点検の効率化・省力化
(1)飛行型ロボット
(2)懸架型ロボット
(3)車両型ロボット
(4)ポール型ロボット
(5)その他のロボット
5.おわりに
維持管理に関わる診断技術はまだまだ発展途上であり、最新技術の応用が必要である。個々の構造物にふさわしいライフサイクルをデザインして、要求される性能を明確にすることで、必要とされる点検診断技術の種類および水準が定められ丈夫で美しいコンクリート構造物となる。
今回の講演会の講師をお引き受けいただいた岡田繁之氏に感謝いたします。
講演担当:齋藤、浅岡、藤野(文責)
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