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建設部会

平成27年9月 講演会報告

日 時 :平成27年9月9日(水) 18時15分〜19時45分
講演名 :見上げる宇宙から利用する宇宙へ−地球観測衛星データの利用について−
講演者 :冨井 直弥氏 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター 東京事務所
講演場所:日本工営株式会社 本社3階 A会議室
参加者 :28名(会員27名、非会員1名)

1. はじめに
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の主な事業としては、ロケットの研究開発、衛星の研究開発と利用促進、国際宇宙ステーション計画、宇宙科学・探査、航空科学技術の研究開発等がありますが、今回は「衛星の研究開発と利用促進」をテーマとして、衛星利用運用センター東京事務所の冨井直弥氏に、プロジェクトを推進する責任者の立場からご講演いただきました。

2. 講演概要
(1)人工衛星の種類(目的別)
人工衛星の種類には、通信衛星・放送衛星・気象衛星・地球観測衛星・航行測位衛星・惑星探査衛星・天文観測衛星等があるが、地球観測衛星の目的は、災害監視・環境監視・資源探査等である。
(2)人工衛星の軌道
・静止軌道:地上からいつも同じ場所に見える。高度36,000km、通信・放送、気象衛星など
・極軌道:地上のあらゆる上空を通る。高度400〜900km、宇宙ステーション、地球観測衛星など
・太陽同期準回帰軌道:極軌道の一種、地球観測衛星の多くがこの軌道、準回帰⇒定期的に同じ場所を観測、太陽同期⇒一年中同じ太陽角で観測
(3)JAXA利用衛星計画
現在地球観測衛星として運用している衛星には、災害監視を目的とした合成開口レーダを用いる「だいち2号」、及び降雨水循環観測を目的としたマイクロ波放射計を用いる「しずく」がある。
(4)「だいち2号」(ALOS-2)の概要
・打上げ:2014年5月24日 H-2Aロケット@種子島宇宙センター
・質量:約2トン ・高度:628km ・寿命:5年(目標7年)
・搭載センサ:Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)
・観測性能:高分解能モード;分解能3m、観測幅50km
      広域観測モード;分解能60〜100m、観測幅350km〜490km
(5)「だいち2号」の特徴
 ・人工衛星共通の特徴:広い範囲を観測できる、繰り返し観測できる、地上の災害の影響を受けない。
 ・レーダの特徴:夜でも観測できる、雨や雲を通して地表を観測できる、地面の動きを観測できる。
(6)防災分野での衛星利用
 ・大規模災害の被害状況をとらえる。 ・津波による被害をとらえる。
 ・洪水を予測・警報する。 ・土砂崩れによる被害をとらえる。
 ・火山噴火の様子をとらえる。 ・海底火山の活動を監視する。
(7)合成開口レーダの主な波長帯
・Xバンド・Cバンド・Lバンドなど:2cm〜30cm
・波長が短い場合(Xバンド):雲・雨で減衰、葉で反射
・波長が中間の場合(Cバンド):Xバンドと比較し、雲・雨の透過性が高く、葉・枝で反射
・波長が長い場合(Lバンド):CやXバンドと比較し、雲・雨・葉・枝の透過性が高く、幹・物体・地表面で反射
(8)変動現象を捉える−位相差から変動距離を知る−
・SAR(合成開口レーダ)で測定しているのは位相(距離)
・SAR干渉画像の縞模様は位相差⇒距離の変化を表している。
(9)SAR干渉解析の利用分野
・地下メカニズムの解明、断層の評価⇒地表面の隆起、沈降
・構造物、地盤の変位計測⇒沈下、隆起など変位
・地滑り危険度の評価⇒地表面の滑り

3. おわりに
防災分野での衛星利用として災害監視などについて分かり易く説明がなされ、地球観測衛星の観測性能の高さに感心するとともに、宇宙利用の現実に大いなる驚きと感銘を受けた講演会でありました。将来はより観測性能が高い先進光学衛星の研究が始まるなど、技術分野では常に創意工夫が必要であり、我々技術士も不断の自己研鑽が求められることを改めて感じました。
今回講演会の講師をお引き受けいただいた冨井直弥氏に深く感謝致します。

講演担当:竹中、武曽、金子(文責)

写真:講演会の様子(拡大画像へのリンク)

写真1 講演会の様子

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写真:講演会の様子2(拡大画像へのリンク)

写真2 講演会の様子

(画像クリックで拡大 24KB)

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