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建設部会

 建設部会 平成26年9月講演会報告

日 時:平成26年9月17日 (水)18時00分〜19時30分
場 所:葦手第二ビル 5階(港区虎ノ門:日本技術士会 会議室)
題 目:リニアコライダー計画について
講演者:東北大学大学院 理学研究科 准教授 佐貫 智行
参加者:本部35名(うち非会員1名)
WEB会議参加数:56名 ※( )内は非会員数です。
   ・北海道:7名(1)・東北:8名(0)・北陸:5名(0)・近畿:15名(0)
   ・中国:8名(0)・四国:5名(1)・九州:8(0)

1.はじめに
今回は、日本の研究者が昨年8月に国際リニアコライダー(International Linear Collider)(以後ILCと記載)における開発研究建設候補地を北上サイトとしたことから、東北大学大学院理学研究科 佐貫准教授よりILC計画について講演していただきました。

2.概要
(1)ILCの意義、目的
ILCとは、電子と、その反粒子である陽電子をほぼ光の速さまで加速して正面衝突させて非常に高いエネルギー状態を作り出す研究施設です。これは、宇宙開闢の瞬間(ビックバン)を再現することであり、宇宙の初期状態を作り、宇宙がなぜ今の姿になったのか詳細な研究を行うことが出来きます。また、一昨年夏に発見されたヒッグス粒子の詳細研究や未だ発見されていない暗黒粒子の発見にも挑み、予想もしていないような大発見も期待されています。
(2)世界中の中で日本に誘致する意味
リニアコライダーは1960年代に発案され、2004年8月に、基本的な設計方針を定め、設計を進める国際チームを作りました。そして、日本の研究者も昨年8月に北上サイトを研究施設候補地として公表しました。
ILCは国際プロジェクトで、日本に建設されれば、日本国内初の国際組織になります。世界が協力して日本に最先端の研究施設を建設することは、国際社会の中で日本の価値を高めることに繋がり、経済効果も大きいことから様々な面で効果を得ることが出来ます。
(3)ILCの施設
ILCでは、全長約30kmの直線状の加速器を作り、加速器の一端から電子を、他端から陽電子を超伝導加速空洞の中へ入射し、強力な高周波で加速させ、加速器の中央付近で電子と陽電子を正面衝突させます。その施設は、幅約11m、高さ約6m全長約30kmの直線地下トンネルやその他アクセストンネル6本及び地上研究施設等になります。
通常のプロジェクトでは、概念設計書、技術設計書、工学設計書の順で進めますが、現在ILCでは、工学設計書を作成する段階にきています。ILC実現へのステップとして今後必要な技術は、「電子を瞬く間に加速させる技術」及び「ビームを細く絞り込んで正面衝突させる技術」です。
また、北上サイトは、地質が北上花崗岩で比較的安定していて、東日本大震災でも地中に関しては安定していることが分かっています。また、新幹線及び大型商業施設が隣接する幹線道路での利便性に富むことからILC候補地として選出しています。
(4)ILCの成果が及ぼす社会への影響、地域産業への波及効果
世界最大の加速器を有するヨーロッパのCERN研究所はWWW(World Wide Web(ワールド ワイド ウェブの略名))[*]発祥の地であり、米国のSLAC研究所は、シリコンバレーの発展と密接な関係にあります。この様に日本でも、世界最先端の研究所が出来ることによって何かが必要であるとか何かに応用できるなど「空気」と「嗅覚」に動かされイノベーションが起こる可能性があります。
また、科学や技術に興味を持つ子供たちの育成や国際的な人材が増える可能性があり、知ろう・学ぼうという動機付けや自分や自国を見直すチャンスにもなります。
今後人口が減少していく日本において、自立可能な社会を作るきっかけとなり、次世代の人材作りに貢献していくと考えます。
[*]1989年にCERN研究所のティム・バーナード・リー氏が考案したインターネット上で使用される情報検索システム

3.おわりに
今回は、素粒子物理学、ILC計画そして社会への影響など国際組織が日本に出来ることにより、研究成果のみにならず、社会への影響や教育への効果などいろいろな分野への関わりを講演して頂き、ILC誘致への熱い期待を感じました。成果が出るまではまだまだ研究と時間がかかるようですが、今後の研究成果が待ち遠しく感じました。

担当幹事 野村 宮下 山室(文責)

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