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建設部会

平成25年11月 現場研修会報告

日 時 平成25年11月27日(水) 14時〜16時
現場研修会 港湾空港技術研究所の四施設見学と港湾施設の維持管理についての講演会
参加者 14名

1.四施設見学
(1)長期暴露試験施設
 この施設は、干満帯および海中部を模擬した海水循環層、飛沫帯を模擬した海水シャワー暴露試験所、および海上大気暴露試験所の3つの暴露場で構成されている。長期暴露試験の結果、各種建設材料の劣化特性および耐用年数の評価が可能となり、設計時の材料選択、劣化予測に活用されているとのことである。この施設では、30年以上試験を実施している試験体もあるとのことである。
(2)環境インテリジェント水槽
 この施設では、多方向に進む波や潮流などの実際の海域でみられる力学的な環境(波、流れ場)を再現し、それが港湾構造物に与える影響を研究している。この水槽には、幅60cmの造波板を持つ94台の造波機が配置されているとのことである。
(3)大規模波動地盤総合水路
 この施設は、高さ3.5mの風波に加えて、高さ2.5mの津波も起こすことができる大型水路である。小さい模型実験では困難であった地盤の動きや構造物の破壊過程を含めた防波堤や護岸の被災メカニズムを実寸に近い大型の模型を用いて検証することが可能となったとのことである。この水路は、長さ184m、幅3.5m、深さ12メートルあり、世界最大規模の実験施設である。
(4)干潟実験施設
 この施設では、失われた干潟を再生する技術の確立を目指すための研究に取り組んでいる。実験は1995年に生物が全くいない状態からスタートしたとのことである。現在も久里浜湾から海水の取り入れと、潮汐・波・流れ等の環境状態を止めることなく継続しているとのことである。トウネンをはじめとした多くの干潟生物が水槽内で生長し、現在も生態系は発達し続けていた。

2.講演会
内容 港湾施設のLCM技術に関する最近の知見と動向
講師 構造研究チーム 加藤 絵万氏

(1)港湾施設の維持管理告示
 国土交通省は平成25年3月21日に「社会資本の維持管理・更新に関し当面構ずべき措置」を発表した。この内容は、各々の施設の特徴を踏まえた適切な点検による現状確認と、その結果に基づく的確な修繕の実施が不可欠であるとし、このような取り組みの実施を戦略的・計画的に進めるための長寿命化計画の策定・充実の推進が重要であるとしている。このため、インフラが的確に維持されるよう、本年を「社会資本メンテナンス元年」として、今後3ヵ年わたる当面構ずべき措置をとりまとめ、様々な施設の老朽化対策に総合的かつ重点的に取り組んでいく内容となっている。
 港湾施設の維持管理は、維持管理が容易に行える環境ではない多くの構造要素からなり、劣化・変状の進展が複雑であるという特徴を有している。このため、港湾施設に要求される維持管理する上で重要なことは、供用期間中に劣化・変状を生じさせいない構造とすること、および維持管理が容易な構造とすること等である。
港湾施設の維持管理については、港湾の施設の技術上の基準を定める省令に定められているが、技術基準対象施設の維持に関し必要な事項を定める告示が新たに制定された。その概要は以下のとおりである。
[1]維持管理計画等に基づき、適切に維持
[2]維持管理計画等は、当該施設の設置者が定めることを標準
[3]維持管理計画等に定める事項、その他の基本事項を規定
[4]専門的知識及び技術または技能を有する者の関与の下で計画・実施
[5]設計施工及び維持を適切に行えるよう、必要な処置を講ずる
[6]施工管理では測定結果等の記録を維持管理計画等に反映することを標準
[7]建設時の許可申請・届出に当たって、維持管理の方法を明示

(2)維持管理に配慮した桟橋RC上部工の設計
 桟橋上部工の劣化としては、塩害による鋼材の腐食が主な原因である。鋼材腐食により施設の性能は低下し、補修が大変な場合が多くLCCが増加することになる。このため、設計ではこれまでの仕様規定から性能照査型へ移行しつつある。例として「予定供用期間中(t年)鋼材腐食が発生しないことを確認する」がある。これを満足させるためにセメントの種類、水セメント比、海面から上部工下端までの距離を任意に設定できるようにすることである。
 維持管理に対する考え方は、高い水準の損傷劣化対策を行うことにより、設計供用期間中に要求性能が満たされなくなる状態に至らない範囲に損傷劣化を留めるという維持管理レベル1(事前対策型)である。維持管理レベル1の事例として材料の高耐久化がある。高耐久化を目指した材料として超高強度繊維補強モルタル、埋設型枠(超高強度繊維補強モルタル製)、エポキシ樹脂塗装鉄筋の採用などがある。

(3)維持管理に配慮した消波ブロック被覆ケーソン壁の設計
 ケーソン壁においては、消波ブロックによる押抜きせん断破壊による局部的なコンクリートの圧壊が発生する。港外側を耐衝撃性に優れた前壁にするために、「耐衝撃性に優れる防波堤ケーソンの設計マニュアル(案)」を作成した。
 押抜きせん断破壊に対する検討は、消波ブロックの1回当たりの衝撃エネルギーとRC版の耐え得る衝突回数の関係から照査し安全性を確保することとしている。RC版の耐え得る衝突回数は被災履歴のある施設の照査結果から決定している。なお、局部的な圧壊については、今後の課題である。
(4)社会資本の維持管理・更新に関し当面構ずべき措置
[1] 現場管理上の対策
 ・総点検の実施と修繕
 ・基準・マニュアル等の策定・見直し
 ・維持管理・更新に係わる情報の整備
 ・新技術の開発導入
[2] 現場を支え制度的な対策
 ・地方公共団体の支援
 ・維持管理の担い手の援
 ・国の一元的なマネジメント体制や法令等の整備
[3] 長寿命化計画の推進

3.おわりに
 今回は、港湾や空港の沿岸や海洋の防災、環境および利用に関する研究を進めている研究施設で、将来の沿岸防災のあり方を踏まえた長期的な研究を取り組んでいるということで貴重な現場研修会でした。
 施設説明ならびに講演会に携わっていただいた港湾空港技術研究所の方々に感謝いたします。

【写真−1】港湾空港技術研究所の概要説明(拡大画像へのリンク)

【写真−1】港湾空港技術研究所の概要説明

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【写真−2】環境インテリジェント水槽の見学(拡大画像へのリンク)

【写真−2】環境インテリジェント水槽の見学

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