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建設部会

平成25年12月講演会報告

平成25年12月 講演会報告
【開催日時】 平成25年12月13日(金)17:30〜18:30
【講演名】 東日本大震災からの復興の枠組みと今後の津波防災のあり方
【講演者】 磯部 雅彦氏 高知工科大学 副学長(次期土木学会 会長)
【開催場所】 弘済会館
【参加者】 57名

1.はじめに
平成25年12月の講演会は、高知工科大学副学長の磯部雅彦教授をお招きしまして「東日本大震災からの復興の枠組みと今後の津波防災のあり方」と題して講演いただきました。なお、講演に先立って、建設部会長の高木茂知氏から建設部会の組織・体制や今年度の講演会・現場研修会等の活動について報告がありました。

2.講演内容
(1)東北地方太平洋沖地震津波の波高分布について
平成23年に発生した地震は、太平洋プレートが北米プレートの下にもぐり込む(移動量:5〜10cm/年)ことによって北米プレートに溜まったひずみが跳ね上がる、いわゆるプレート境界で起きたものであった。この跳ね上がったプレートによって、直上部の海水が盛り上がって津波が起こる。この時、震源における水深が深いと津波の波高が高くなるとされるが、東北地方太平洋沖地震の場合はさらにプレートの先端で地すべりが起こったため、海水の盛り上がりが増幅され巨大な津波となって東北地方の沿岸を襲い、「明治・昭和三陸地震津波」を超える津波の溯上高として30m以上が計測されている。また、このことは太平洋沖合に設置されているGPS波浪計でも計測(6〜7m)されていたとのことであった。
(2)今後の防災対策の方向性について(防災・減災システム)
津波によって被災した海岸・港湾施設の破壊に至るまでの状況を分析し、原因を究明することによって各種の施設(構造物)の整備を行うことが重要である。
しかし、溯上高30mを超える津波を受けたにも拘わらず、越波しなかった津波防潮堤、多重に設置された防波堤によって背後の浸水高が軽減された事例、防潮水門によって被害を受けなかった集落の事例等から海岸、港湾や漁港施設が発揮した防災・減災効果も確認されている。このように、防災・減災効果があった構造物の被災過程のメカニズムを知ることによって、その施設(構造物)が持つ粘り強さをさらに向上させる補強方法等の手段を見つけることができるとしている。
また、中央防災会議「東北地方太平洋沖地震津波を教訓とした地震・津波対策に関する津波専門調査会」(以下、「津波専門調査会」という)では、比較的発生頻度の高い津波(L1)と最大クラスの津波(L2)に分類し、L1に対応する海岸堤防、津波避難ビル(暫定)、L2に対応する津波避難ビル・タワーを整備するとともに、ハザードマップの整備・工夫、避難訓練や防災教育又は「大津波警報」が出たら必ず避難する等、ハードとソフトを連携させた津波防災・減災システムを構築しようとしている。
(3)南海トラフ地震津波に対する防災・減災
南海トラフ地震は、静岡県沖から四国・九州沖に伸びる海溝(トラフ)を震源とする「東海」「東南海」「南海」の3連動地震のことで、冬の深夜に発生した場合の死者は32万人と試算されている巨大地震である。
津波専門調査会の第7回資料によれば、「避難のきっかけ」はとの問いに意外と多かったのが「家族または近所の人が避難しようと言ったから」、「近所の人が避難していたから」と回答した人で全体の48%に達している。また、「消防団の人が血相を変えて逃げていた」というのが避難のきっかけとして最も効果があったとの逸話もあったとのことだった。
津波避難態勢の向上を図るには、津波第1波到達時間までに避難できるかが重要なターニングポイントになることから、「逃げる場所を確保する(建物耐震化)」「早く逃げる(津波避難意識向上)」等を徹底し、津波避難に対する意識を高めることが減災効果大である。
(4)津波対策の現状と課題
南海トラフ地震の被害が予想される高知県の津波対策として、海岸堤防の粘り強い構造化(仁ノ海岸)、須崎港の湾口防波堤整備、木材の流出防護柵設置等が整備されている。また、津波避難態勢については、H25年度末を目標に「避難路・避難場所の整備(76%)」、「津波避難タワーの整備(77%)」を行う他、「津波避難シェルターの整備(室戸市)」の現状について説明があった。因みに、高知県の津波避難タワーはL2対応となっているとのことであった。
港湾の津波避難対策は、設計津波に対する防護施設の建設、避難態勢の確立(ハザードマップ、避難訓練)、リスク管理・事前復興(交通・通信確保、BCPの準備)等、ハード対策、ソフト対策を連携させて進めることが最も重要であるとのことであった。

3.おわりに
 平成23年3月に発生した東日本大震災からもうすぐ3年が経過しようとしています。完全復興にはまだ紆余曲折が予想されますが、近い将来必ず来るであろう巨大地震による災害への備えも十分とは言えない状況であります。
このような現状を踏まえ、これから為すべき津波対策について事例を交えながら分かり易く説明をしていただきました磯部教授には、改めて心から感謝申し上げる次第であります。また、本講演が技術士にとって、更なる知識・技術の向上につながるものと確信しております。
以上

   講演会担当:松本、榎本、中川、宮下(記)

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