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建設部会

平成24年12月の講演・見学会報告

講演会報告

開催日時 平成24年12月17日(月) 16:30〜18:00
講演名 プロジェクト展開への期待
講演者 森地 茂 政策研究大学院大学特別教授、政策研究センター所長、第92代土木学会会長
開催場所 弘済会館 会議室
参加者数 35名
報 告
1.はじめに
社会資本整備に関わるプロジェクトについて、“公共投資予算”、“プロジェクト開発力”、“維持保全”“国土形成計画”など多方面の視点から、課題や対応策について幾つかの事例をまじえながら「プロジェクト展開への期待」と題した講演が行われた。

2.講演内容
・公共投資予算縮減の原因に“[1]財政制約”、“[2]社会資本整備に対する国民の認識”がある。対応策として、財政制約に関しては民間資金の活用(日本のPPP制度の確立)、国民の認識に関しては、必要なプロジェクトの明示化が考えられる。
・そこには、現状からの脱却の痛み、構造的改革の実行が必要である。予算の範囲でのプロジェクトではなくプロジェクトがあっての予算、住民が必要性を認識できるプロジェクトづくりと説得だけでなく、プロジェクト化できなかった理由と解決策の提示を行う。
・プロジェクト開発力の低下は、住民[地域改善への意欲低下]、国[New Public Management,公共事業批判への対応、インフラ輸出]、自治体[財政制約期間の長期化]、建設業界[入札制度改革]、商社[資源分野への展開]などの原因があり、それらを改善していく必要がある。

【笹子トンネル事故の教訓から】
・維持保全の課題は、“老朽化問題に対する理解が進むか?”、“アメリカの教訓を生かせるか?”とともに、予算、技術力、検査・補修体制などがある。
・具体的には、アメリカからの教訓[インフラに対する社会認識、技術者の改革]、[1]老朽施設の増加と改修の長期化[早期の対応など]、[2]多様な部材検査の難しさ[技術開発、発注制度]、[3]技術力の維持の難しさ[維持管理分野の参入、海外市場、技術者モラル]、[4]自治体の技術力[国・都道府県・自治体の業務分担]、[5]災害被害と老朽化[既存不適格施設、情報公開]などがある。
・“改修、補修、維持管理の位置づけ”や“「建設から維持補修の時代へ」の受け止め方”について考えるとき、例えば、改修、補修、維持管理は新設整備に対する従的位置づけか?河川事業、鉄道事業、都市整備事業の多くは改修、改築が中心ではなかったか?などの視点が必要であろう。

・わが国の社会資本の5つの緊急課題
 [1]圏域構造の改変[国際競争力:広域ブロック圏、人口減少社会:広域生活圏]、[2]民間投資や活動が誘発される社会資本整備、PFI、PPP、[3]各種防災投資、[4]社会資本の高齢化、[5]地球環境

【東日本大震災の課題から】
・[1]直線的意志決定の誤り、[2]復興会議の時間管理、[3]教条的地方分権の誤り、[4]臨海産業地区の早期復旧、[5]インセンティブ型集落再編、[6]PPPの法改正、[7]広域地域振興政策

【国土形成計画の課題から】
・「国土形成計画 計画部会報告(はじめに)」からの引用
[1]人口減少が衰退を意味しない国土、[2]東アジアにおける各地域の個性と競争力の発現、[3]新たな「公」を横軸とする地域力の結集、[4]多様な自立広域圏からなる状況対応力ある国土
・圏域構造の改革について
 国際競争力は県単位ではなく広域地方圏で、人口減少化での生活サービス維持・向上は市町村単位ではなく広域生活圏で進める。
・経済のグローバル化と生産施設の海外流出に伴い、国家間所得格差の縮小と国家内地域格差の拡大が生じた。地域格差の縮小策として、従来のアジアの繁栄を地域内に取り込むことから、各地域のアジアの中での個性発現や国際競争力のための広域対策が考えられる。
・新たな地域発展モデルの要点として、地域活性化に不足しているものは、[1]居住人口、[2]雇用、[3]交流である。

【都市・地域の課題関連事例から】
・社会・経済的寿命から機能・空間の改善の視点への変更、物理的寿命から施設の維持と改築の視点への変更を行う。それは、物理的改築を機会とする機能・空間の改善と機能・空間の改善を機会とする構造物の更新である。
・事例紹介
[1]鉄道駅部、線路上の横断構造物
 ・震災対策の重要性、複数主体の存在で対応できずに放置
 ・新宿駅プロジェクト、渋谷駅プロジェクト
[2]消えゆく砂浜と土砂マネジメント
 ・ダムの堆砂と後退する海浜:あと30年で消える砂浜など
[3]交通安全
 ・交通事故死者数は減少(5000人以下達成)だが死傷者数は増加(約100万人)
[4]都心再生
 ・成都(中国)、上海(新天地)
[5]道路空間改変
 ・ソウル、日本橋プロジェクト
[6]観光地の再生
 ・温泉街の荒廃:温泉地の宿泊施設、土産物店の廃屋、河川両岸の土地利用の誤り
 ・水辺環境の喪失、親水空間の欠如:用地不足、水質汚濁、防災優先などが一因
 ・湖畔、海岸、都市観光、農村景観

【まとめ】
・地域のおかれた状況を把握し、地域の責任として明快な戦略と行動が必要。
・専門家に求められる機能は、「地域戦略づくり」+「プロジェクトづくり」+「計画」+「設計・施工」である。

3.おわりに
 渋谷駅再開発など実際の地域戦略づくりやプロジェクトづくりに携わっておられるため、構想の立案や進め方の事例紹介があるなど、これからの社会資本整備や維持保全およびプロジェクト展開について分かりやすく説明していただいた有意義な講演会であった。

講演会担当: 河北、武曽、宮下、松本(記)

講演会当日会場(拡大画像へのリンク)

講演会当日会場

(画像クリックで拡大 14KB)

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