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建設部会

平成23年7月の講演・見学会報告

平成23年 7月 講演会報告

開催日時    平成23年7月27日 (水) 18時00分〜19時30分
講演名  アジアとヨーロッパを結ぶトルコ・ボスポラス海峡海底トンネルの計画、設計、施工等について
講演者    小川 文男氏  プロジェクトマネージャー現大成建設(株)調達本部第二調達部長
開催場所    弘済会館
参加者    43名
報告
 トルコ共和国イスタンブールのボスポラス海峡において、アジアとヨーロッパを結ぶ海峡横断鉄道の建設工事が、トルコ政府による国際入札により発注され、大成建設とトルコの2会社によるJVが受注し、現在、完成間近かとなっている。この事業は、東京と同等の人口を抱えながら、2本の海峡横断道路橋、フェリー等の交通手段では、歴史的にはヨーロッパの終着駅で、シルクロードの起点・終点でもあり、今後も益々発展すると考えられるイスタンブールの慢性的交通渋滞と大気汚染の抑制を主目的としている。トンネル延長は、鉄道の縦断勾配の制約、人が地下駅から異常時退避する時間の法的制限等により、海峡海底より最小土かぶりを確保する構造としたことによって総延長13.6kmとなっている。このうち海峡中心部1.4kmは沈埋工法、海峡端部及び陸上部は、シールド工法と一部NATM工法を採用するとともに、海峡の両岸の2地下駅を含む4駅も同時に施工された。

 今回の講演は、このうち、世界に類の無い函底水深60m・上下逆海流の国際海峡等に対し沈埋をどの様に計画し、独自の技術開発を行い、どの様に創意工夫し問題なく工事を完成させたか、技術的な説明が行われた。その主なものを列記すれば次の様になる。

1:海峡の横断面の流速分布を常時観測している現地気象デ−タ(水位、流速、風向風速、気圧)と気象予報を基にして、今後の流況変化を数分で予測するシステムを開発し、リアルデータを関係者が共有し、曳航、沈設等がスムーズに行えるようにした。

2:沈埋部両端部に立坑を設置することは、頻繁な海峡交通・大深度等に対し大きなマイナス条件となるため止め、先行沈設した函端部にシールドをドッキングさせる工法とした。この場合、先行沈設した函内に人等が出入しなければならないため、アジア側函体端部に高さ34mのアクセスシャフトを設置した。このアクセスシャフトには、船舶が衝突しても函体に影響を与えない構造とし、万が一の場合、函内の人の安全が確保できる予備シャフトも設置し避難路を確保した。これらの一連の仮設装置は、コストダウンと航路の安全に大きく貢献する結果となった。

3:函体(H8.6m×B15.3m×L1,367mを11函体・RC構造)を工期とドックヤ−ドの関係で下部半分を仮設ドックで施工、進水浮上させ、残りを浮上施工というRC構造の函体施工では初めての工法を採用し、ドックのコストダウン、函体製作工期短縮に結びつけた。

4:大深度(−60m)に高精度(±30cm)での基礎マウンドの施工のため、水中均しロボットと捨石均しシステムを開発し、人による潜水工事等に頼ることなく安全にして精度±20cmに収まるマウンドが構築出来た。

5:沈設作業のコントロールのため、沈設作業船上にGPSで定めた位置より旋回式マルチビ−ムを発信、超音波計測装置等により沈設過程を認識,解析しつつ作業を行うシステムを開発し、模型実験等により確認実験を経て、大深度、複雑海流に的確に対応することが出来た。

 当工事は、厳しい国際入札により受注、コスト、工期、安全、品質、環境等どの面においても厳しい条件下ということであったとのことであるが、現在、遺跡調査で遅れた部分を除き完成近くになっているとのことである。

 講演後、活発な質疑応答がなされた。そのなかで、主なものは、『設計基準・施工仕様等は、日本ものに準じた』『安全確率等は、ヨーロッパのものを採用した』『海峡は、国際航路であり、何かあれば国際問題になりかねないので関係者とのコミニュケーションには細心の注意を払った』『100年保証のトンネルである』『沈埋は断面に比してジョイントを剛接した細長い一体構造体であり地震時の長周期振動にも耐えられるのではないか』『小泉総理大臣が現場視察』等々であった。

 

 世界に冠たる日本の沈埋技術、シ−ルド技術等を更に進化・駆使して工事を行い、世界的にエポックメイキングな構造物をどのようにして建造したかが良く理解でき、かつ大いに勉強・啓発された講演会であった。 以上

 建設部会担当幹事 榎本浩・宮下紀代則・吉田圭佑(司会・文責)

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