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建設部会

平成23年8月の講演・見学会報告

平成23年 8月 講演会報告

開催日時  平成23年 8月 24日(水)18時00分〜19時30分
講演名  南極の自然環境と設営の過去・現在・未来
講演者  飛島建設株式会社東京支店 橋本斉(第48,50次日本南極地域観測隊)
開催場所  日本工営会議室
参加者  28名
報告

1.はじめに

 講演者の橋本様は、建設業に従事されながら二度の南極地域観測隊に参加、南極での道路工事、施設設営等に尽力された貴重な体験と知識を持たれている。このたびは、当講習会において南極観測の概要・観測データ・苦労話など日ごろ聞くことのできないお話を聞かせていただいた。

【講演者プロフィール】

氏名:橋本 斉(はしもと ひとし)
所属:飛島建設(株) 東京支店 営業G
南極経験:JARE48(2006〜2008)夏隊
       JARE50(2008〜2010)夏隊
生年月日:1963年3月28日 48歳
出身地:北海道函館市生まれ
現住所:千葉県袖ケ浦市
出身校:国立函館工業高等専門学校 昭和58年土木工学科卒
職歴:昭和58年東京ガス(株)入社→平成2年飛島建設(株)入社

2.土木技術者派遣の背景

 飛島建設(株)(社長:伊藤寛治)は、平成6年より毎年、日本南極地域観測隊の設営部門(建築・土木)へ技術者を派遣し(建築技術者延べ15名、土木技術者延べ3名)昭和基地ほか日本の基地の設営と南極における設営・輸送などに関する提言を行っている。基地の設営では、昭和基地の建物建設・解体・保守・道路建設・ヘリポート整備などの任務を受け持つと共に、基地における建設機械能力、輸送能力、専門職の人数など様々な制約条件のもと、設営作業を計画する上での専門的な見地での提言やサポートを実施している。平成6年の派遣開始以来、基地において主に建物建設・維持管理・インフラ整備に従事し、現在ある昭和基地建物の半数以上に建築技術者が関わっている。平成18年(48次隊)から道路やヘリポートなどの大型土木作業が開始されたため、それまでの建築技術者に加え、初めて土木技術者を派遣した。土木技術者の派遣は平成20年(50次隊)までの3年間で、その後も引き続き建築技術者を派遣し、今年が53次隊となっている。

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3.講演内容

 南極の観測は、

 *南極地域の平和利用
 *科学的調査の自由と国際協力の促進
 *領土権主張の凍結*条約遵守監視制
 *環境保護議定書、生物資源保存勧告

を目的とした南極条約に基づく国際協同体制下で進められており、日本は、南極条約原署名国12か国の一員で、国際的な南極観測体制の重要な役割を果たしている。
 これまでの観測では、オゾンホールの発見、温室効果ガスの変動、隕石の多量発見、それにともなう宇宙物質科学の進展、氷床コア掘削採取による南極の成り立ちの知見、氷河の現状、気象、海洋環境他多種多岐に渡る学術的事象、知識が得られている。
 南極での建設が本格化したのは、橋本講師が観測隊に参加された平成18年頃からで、当初大型トラック等が走行できる道路さえない状況からのスタートだったということである。道路、ヘリポート、生コンプラント、荷揚げ場、その他多種の設備建設が行われ、第48次隊では27工種に及ぶ建設が行われた。プレハブ建築は南極から始まったなど興味深い話が満載であった。
 また、ブリザードが吹き荒れる過酷な環境、生命が危険に晒される厳しさがあるかと思えば、美しいオーロラの出現、かわいいペンギンたちの出迎えなど楽しさもあり、極寒の地での非日常的な日常生活の様子を興味深く拝聴した。
 講演は、新観測船時代の南極観測ビジョン、南極設営の将来像と進み、地球規模の気候・環境に大きな変化をもたらすこの南極の重要な役割を考え、環境問題と地球の未来、そして私達のできることの中で南極観測と南極の存在そのものの重要性に言及し幕を閉じた。

4.終わりに

 興味深い講演内容に、聴講者からは活発な質問があり、また、お持ちいただいた南極の氷が解ける時に発生する2〜3万年前の空気がはじける音を聞かせてもらったり、充実した時間を過ごさせていただいた。

 お忙しい中、時間を割いて貴重な講演をいただいた、橋本様に心からお礼申し上げたい。
(建設部会 千々岩三夫 記)

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