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建設部会

平成24年5月の講演・見学会報告

講演会報告

開催日時  平成24年5月25日(金) 18時00分〜19時30分
講演名  土木技術者の実践と自律的規範の醸成 ―社会的問題の発見・解決の視点を考える―
講演者  木村定雄 金沢工業大学環境・建築学部環境土木工学科教授
開催場所  弘済会館
報 告
1.はじめに

 講演者の木村定雄教授は、トンネル工学を専門とされ、また、道路のリスクマネジメントやトンネルの維持管理といった建設マネジメントの研究にも多く携わられている。本講演会では、技術者のあるべき姿を「省察」という概念を根幹に、広義の技術者倫理として土木技術者の規範についてお話しいただいた。

2.講演者プロフィール

氏名: 木村定雄(きむらさだお)
所属:金沢工業大学環境・建築学部環境土木工学科教授
学歴:1984年3月 東洋大学大学院 博士前期課程修了
職歴:1984年4月 佐藤工業(株)中央技術研究所・技術部
   1999年〜2000年 東洋大学工学部 非常勤講師兼務
   2001年8月 金沢工業大学工学部土木工学科 助教授
   2007年4月 金沢工業大学環境・建築学部環境土木工学科教授
   2008年   金沢工業大学地域防災環境科学研究所研究員兼務
   2012年   現在に至る

資格: 博士(工学) (2001年・早稲田大学)
     技術士(建設・トンネル) (1997年・日本技術士会)
    コンクリート主任技師 (1991年・日本コンクリート工学協会)
     一級土木施工管理技士 (1989年・建設省)
    上級教育士(工学・技術) (2012年)     

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3.講演概要

 講演では、「倫理」について、法令順守などの狭義の定義ではなく、個人の持つ意思決定、ものの見方、考え方が筋の通ったものでなくてはならないという広義の技術者倫理として、科学、技術、工学の持つ意味に立ち返り、技術者のあるべき姿を解説いただいた。
難しい哲学的な内容を、ギリシャ神話から読み取れる技術の本質を探るなど、平易な説明に配慮された講演であった。その中から、印象に残った言葉を紹介する。「技術は人を悲惨から救う知の福音」(人にとって技術は有益である)「技術は必然(自然の力や秩序、法則)よりも弱い」(技術が進歩しても、自然が持つ力や法則を変更する企ては、必ずや深刻な報復を招く)「先の見えない希望」(過信してしまうと、先を見通すことのできない闇雲な希望を与えることになる)これらの、古代の思想は、そのまま現在の地球環境の変化の状況を言いえているようで、技術者として反省すべきところを強く意識させられた。また、講演では「省察」という言葉が使われ、単なる考察ではなく、過去を振り返って将来に向かう姿勢が技術者の規範として重要であることが唱えられた。とはいっても、過去の知見のみが真理ではなく、科学技術は自然界の法則を人が理解するために言語や式で説明できるようにしているものに過ぎないことも説明された。特に、「技術は人の歴史とともに古いが、自然は人の歴史よりも古い」という言葉からは、科学が万能ではなく、自然を侮ってはいけないということを再認識させられたそして、政治的問題や制度的制約とは切り離れた自律的な技術者規範を醸成することが、技術者としての社会に対する責務であり、完全合意が不可能な事柄を議論し続けることが必要とされた。さらに、省察のために技術者として備えるべき資質と技術、そして、実践の手法と評価の基準などについての解説があり、最後に、実践とその振り返りを繰り返す省察が自律的な技術者規範を形成するものであると同時に、規範のあり方そのものも確定されたものではなく、将来にわたり議論を重ね精緻し続けることが必要であるとして締めくくられた。講演後、説明責任における技術者のあり方などの参加者からの質問に対して、「安全」「安心」のとらえ方や「国家」と「個人」の関係などを含む丁寧な説明があり、技術者にとって極めて有意義な講演会は終了した。

4.おわりに

 今回の報告は本講演の一面的な部分であって、聴講によって得られた知見や聴講者の思うところは様々であろう。本講演の本質は極めて深いところにあり、一回の聴講では完璧に理解するのが難しいと思われる。したがって、より理解を深め、技術者のあるべき姿をより強く意識するために、是非とも技術士会HPのWEB聴講をご利用いただきたい。

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