地球のエネルギー問題を
材料で解決したい。
広田 憲亮さん金属部門機械部門国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 勤務

1.私の仕事

私は、鉄鋼メーカーで14年間を過ごした後、研究機関である国立研究開発法人日本原子力研究開発機構に転職して、4年目になります。主なバックグランドは、ずばり金属材料屋です。簡単に仕事の内容を述べますと、色々な種類の元素を混ぜて、新しい材料を作るというものです。

原子力は、ご存知の福島での原発事故が起きてから、原子力を取りまく環境も一変しました。2011年当時、私は原発事故のニュースを見た時、当時原子力ルネッサンスと言われていた状況がこれほど一変するとは考えていませんでした。そんな中、私自身は刻一刻と変化する世の中の激変を肌で感じるとともに、なぜ止めることばかりを主張し、それを改善するための方策を皆で考えようという風潮が生まれないのかな?と常に思っていました。この国は、これまで多くの課題を技術で解決してきた技術立国じゃないか!と。その時、この問題を解決できるのは多くの技術部門のネットワークを持つ技術士しかいない!と強く感じたことを覚えています。それで、自分がなんとか力になれればと思い、今の職場に就職することを決意しました。

私は、元来地球の地殻には放射性物質が存在するため、もし地殻変動が起これば、表面に放射性物質は現出するかもしれないですし、他国で原発事故が起きると結局汚染の被害を日本も受けるというリスクは、常に抱えていると思っています。この様なことを考えると、やはり原子力の基礎研究は行わなければなりません。私の場合は、材料で何か貢献できることはないか?といつも考えています。特に技術士の皆様には、材料の提供や試作、異なる部門の方からのアイデア等、資格を通じて多くの発見を経験しました。技術士を取得する前は、このような仲間もいませんでしたし、アイデアも生まれてきませんでした。しかし技術士取得後、しばらくしたある日上司や同僚から、「広田はどこからでもアイデアがでてくるし、どんな材料でも技術士のネットワークを通じて、調達してくる。」と言われたことがあります。この出来事から、今の職場では材料といえば、広田という一目おかれる存在になりつつあります。

新たな金属材料を前に議論しています

最近は再生可能エネルギーを推進する動きが加速していますが、原子力発電にもマイナス面だけでなく、プラス面もあります。それは少ない燃料で多くのエネルギーを生み出すことができることと、CO2排出量が少ないこと等です。課題は、皆様ご存じの放射性廃棄物が残ってしまうこと、また一度事故が起きてしまうと、放射性物質による汚染が発生することです。

世の中は、水素社会実現に向けて、色々な取り組みがなされていると思いますが、私の仕事で扱う対象部材の一つには、その水素を大量に生み出す上で、必要となる反応容器の材料開発を研究しています。なぜ原子力が水素?と思われるかもしれませんが、私たちが開発している原子炉は、これまでの軽水炉に比べ950℃の高温の熱を取り出せる高温ガス炉というものです。そこで私たちは、この熱源をうまく利用して、化学反応により、大量の水素を生み出そうとしています。特にこの温度ですから、これまでにない耐熱性に優れた金属材料が必要になりますので、この点について、これまでの材料開発の知識、経験を生かしていきたいと思っています。今まで日本は技術で数々の難題を乗り越えてきました。ですから、私もこの原子力も含めて多くの問題を、技術で乗り越えていければと頑張っています。

原子炉建屋前にて、自分の開発した材料の将来をイメージしています。

最近新型コロナウィルスが社会問題となっていますが、ワクチンを開発しようと頑張っている研究者の方々がいらっしゃると思うと、私の仕事でも避けることなく、技術士として困難に立ち向かわなくてはいけないと改めて考えさせられています。

水素製造プラント前で、この材料の適用箇所について検討しています。

2.技術士資格について

技術士は、金属部門で2014年に取得しました。その後2017年機械部門も技術の幅を広げるため、取得しました。原子力分野はまさにあらゆる技術が総合的に絡み合っていますから、勉強することは多岐に渡ります。その意味で、技術士のネットワークは大変仕事に役立っており、異なる技術士の部門の方々からいろいろな意見を頂きます。このつながりをさらにステップアップすべく、昨年私が先頭に立って、茨城県支部内に若手技術者チームWi-SE(Wakate Ibaraki Shining Engineer)を立ち上げました。現在修習技術者の方、若手技術士の方を対象に、講演会、グループワークを茨城県内で実施してきました。また最近は、Wi-SE集まり隊(ZOOM)を結成し、月1回ペースで、一般の方々を含めて、技術士を知ってもらう活動を行っております。
https://ibarakiwakate.connpass.com/
これら活動を通じて、これから技術士を目指される方々、また技術士を取得された方々に、この資格の素晴らしさを発信していければと思っています。

記念すべき第1回Wi-SE講演会での発表の様子

3.仕事を離れて

週末は子供とプールでリフレッシュタイム!

大学時代を含め、趣味で水泳を何回か行っています。最近は子供とよく行くのですが、プールに行った時の子供は皆笑顔ですね。また驚くほど体力があります。私も負けられませんが、最近は25mのビート板のバタ足で息子に勝てません。。。。。。。

プロフィール
  • 平成26年 技術士(金属部門) 取得
  • 平成28年 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 入社
    熱利用推進Grにて、材料開発及び熱交換器構造設計業務に従事
  • 平成29年 技術士(機械部門) 取得
資格
  • 技術士(金属部門)
  • 技術士(機械部門)
趣味
  • 水泳、読書、電子工作、Free CAE解析
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